(1)概要
カフェ名:みぬまハウス大和田
所在地:埼玉県さいたま市見沼区大和田
営業時間:月~金曜日 10:00~16:00
営業主体:NPO法人 みぬまで暮らす会
2006年NPO法人くらしとお金の学校の企画(独立行政法人福祉医療機構の助成事業を受託)で、「さいたま市見沼区介護・福祉マップ」という情報ガイドを作成したことが、そもそものきっかけである。この活動で、多くの高齢者施設・介護保険サービス事業所を調査・訪問し、見沼区にはサービスが少なく、住み慣れた地域で自分らしい暮らし方を最期まで維持するのは難しいということがわかった。その中のメンバー数名で、歳をとっても安心して暮らせる地域をどう築いていくのかと考え、①私たちのまちに、いつでも誰でも安心できる居場所をつくる②近くで暮らす人同士が助け合い、支えあうための仕組みをつくるという目標を定め、月2回のワンコインランチの活動からスタートした。2010年5月現在のみぬまハウス大和田をオープンさせた。
(2)プログラムと参加状況
プログラムとしては、コミュニティカフェやくらぶ活動、生活支援サービス、野菜市、土日教室(英会話、PC、源氏物語)、委託販売、各種講座・催しが挙げられる。くらぶ活動の内容は、テルミー施術、麻雀、終活、歌声喫茶、囲碁、押花、絵手紙、手芸、茶道、ギター、演劇、ウクレレなど様々な分野の幅広い活動を行っている。生活支援サービスとは、できる人ができることで、お互いに助け合う活動のことである。サービスを依頼する人も、提供する人もNPO法人みぬまで暮らす会の会員(年会費3,000円)なので、お互いに顔見知りで信頼関係が築かれている。そのため安心してサービスが受けられるという仕組みになっている。また、介護保険では対象外とされる「通院支援」や「長期外出時の猫のえさやり」というような些細な支援も対象とし、『お互い様』という意識を強く感じられる支援である。
一日のコミュニティカフェ利用者数は10人程度で、週50人程度の人が利用している。 現在は利用者層が偏りがちで、60~80代の方が多く利用している。時々、子育て中の方も訪れるがもっと幅広い世代の方が利用してくれるよう意識していきたいと考えている。
(3)運営の実際と課題
12名のスタッフとボランティアが所属しており、一日スタッフ2名ボランティア2名の計4名で運営している。ボランティアはお茶を出したり、訪れた方々とお話をしたりする役割を担っている。しかし、スタッフの様子を見て忙しそうな時は、お客さんも自らお茶を下げ、協力してくれることも多い。
経済的な面では、委託販売や野菜市の売り上げで、最終的に年間収益はプラスになる。しかし、人件費はすべて未払い積立をしていて、現在はスタッフも完全なるボランティアとして活動している現状である。出資金の返済も完了していないため、事業の継続性は大きな課題として残っており、今後も活動を続けていくことに不安を感じている。市から補助金を受けることも可能ではあったのだが、援助を受けると市からの要請に応えた事業や活動を行わなくてはならなくなってしまうというリスクがある。そうすると自分たちが掲げている目標や主旨とは違うコミュニティカフェになってしまうため、経営は苦しいものになってしまうが、自分たちのやりたいものをやろうという熱意と共に自主運営を決心し、現在に至っている。
運営していくにために、地域の社会資源をフル活用しているという意識を持っている。活動を始めるにあたって、賛同してくれる地域の方々から出資金を募り、設立当初から支えてもらっている。また、商店街や自治会にも協力を得て活動している。くらぶ活動の参加費用として、参加者から一人500円ずつ徴収している。これには場所の提供代としてだけではなく、NPO法人みぬまで暮らす会の活動を“支える一員”という意味合いも込められている。なかなか理解してもらうことは難しいのが現実ではあるが、共助の家として位置付けるためスタッフ同士が理解し合い、参加者へと働きかけている。よってこの参加費も運営を続けていくうえで、とても重要な役割を果たしている。
(4)今後の課題
安心して暮らしていくには施設という選択肢がある。しかし、有料老人ホームに入所するにはお金が足りず、現在の仕組みでは自宅で生活するしかないという方々がたくさんいる。介護保険だけで過ごすこともなかなか困難で、人と人とのつながりを求めていたり、助け合いを必要としたりしている人がたくさんいるのが現状である。その中でも、買い物の足がないと困っているというような外出時の移動手段に困っているというニーズが多い。そのニーズに応えるべく、来年度からは有償移送の事業を始める予定である。
みぬまハウス大和田のモットーでもある、住み慣れた地域で最期まで生活していきたいという方々が、地域で暮らしていくことを諦めてしまったり行き場がなくて孤立してしまったりしないよう、介護保険だけでは埋まらない隙間をお互いが助け合うことで埋めていけるような共助の家として、その支援体制も作っていきたいと考えている。
1つのことで安全を保障できることなんてないだろうと考える。安全対策は1つでは不十分であるから、人と人とがつながるためのきっかけの場所でありたい。また、日常生活では身の回りに支援が必要な人がいることに気づくことは難しいけれど、災害があったわけではなく、穏やかに見える毎日でも地域には困っている人がたくさんいることに気付くきっかけの場としても働けるよう、幅広い世代が自然と集まれる場にもなってほしいと思う。
そして、いつでも誰でも来ることができ、困ったことがあったら相談できる場所を目指して今後も活動を続けていきたい。