(1)コミュニティカフェ概要
カフェ名「ぼんとん」
(名前の由来:フランス語ですばらしい時間)
所在地:杉戸高野台徒歩5分 杉戸高野台西
営業時間:平日の10時から12時 13時から16時まで
営業形体:自営業(どこの法人にも属していない。経営者自信はNPOに所属)
古本屋、サロン、塾、地域の集まりを開催
すべてに共通していることは「豊かな暮らしのお手伝い」
(2)コミュニティカフェを開いた経緯
経営者:60代、男性、定年退職するまでは教師をしていた。
場所:景色が良くて、駅に近くて、緑が多くて、高い建物がないなどの景観に対しての
規定がある街を探した。
店にした理由:その道路に面するには、何かしら経営をしなくてはならなかった。
なぜ「ぼんとん」開こうと思ったのか(インタビュー内容)
☆ 「豊かな暮らしのお手伝い」がしたかった。
☆ 本好きが集まると面白いから。自分自身も引っ越してきた身で知り合いがいないので知り合いがほしかった。
☆ 地域に貢献して「豊かな・・・」を実現する
☆ 自分自身がまず、楽しい、おもしろいと思える場所をつくること。
☆ 自分が幼少時代に立ち読みばかりして肩身のせまい思いをしてきたので、
そのつみほろぼしの意味合いをこめて、座って店内の本を読めるように。
☆ (最初は動くおもちゃの博物館をつくりたかった
50~100のおもちゃがあれば人も集まる・・・)
(3)経営・事業内容
◆ただの古本屋ではない
1部屋のコミュニティカフェの中にはびっしりと本棚や雑貨が立ち並んでおり、その裏表紙にはえんぴつで値段が書いてあった。どの本もご自身でしっかりと読んで選んだ本ばかり。タイトルのみを読み購入しておいている本はひとつもないことを話してくれた。その本はご自身が選んだこともあり、きちんと系統が定まっていた。どの本も50代、60代の方が生きていくために、充実させていくために役に立つ本を集めたそうだ。その中身はそのモチーフから健康に関する本、小説、そして自分自身が興味のある研究書も置かれていた。例:コーチング
このように、自分のもつべきものを持って古本屋を経営することでよってくる方も定まるし、必然的に経営者と話が合う人々、またその横のつながりも出来やすい。一つの思いがいくつもの良い連鎖を生んでいるように伺えた。
また、その本棚のいたるところには昔からあるからくりおもちゃが忍ばせてあった。学生である私も心惹かれるものばかりであったが、高齢者にとっては懐かしさを感じさせてくているもの、その大人についてきて入ってきたこどもたちには、宝探しのようにわくわくするものかもしれない。そういった、一つの空間でいくつもの楽しみをくれる、そんな場所であることを感じた。置いてあるインテリアもご自身で作ったものであったり、人や木の温もり、昔の温もりを感じさせるものばかりであった。こういった経営者の配慮が「落ち着く場所」「また来たいと思える場所」であることは自分自身でも感じ取ることができた。「あくまで売ることが目的ではない」その考え方が場所に雰囲気としてでているように感じた。
◆塾:こども論語塾
定員8人程度で、未就学児から小学校低学年を対象に行っている、子どもにその名の通りひとつのテキストを使用して論語を教え、理解してもらい、その上でテキストの論語を覚えていってもらっていた。その塾の形態は、1つのテーブルに輪になって行う形式や、経営者手作りのスクリーンを使っての形式など、こどもの集中力や、好きなものをうまく駆使して行っている内容であった。時間帯も16時から18時まで。つまり一般家庭では夕飯の用意をする時間である。夕飯の支度がスムーズに行くように、というう時間設定の配慮により、子育て支援にも手かけている。月謝も2000円と格安。今は高額な塾がはやっている中、地域の方々のニーズに合わせて、時間帯、価格設定を行っているところがこの「ぼんとん」の良さをまた感じた。
◆大人向けのイベント「おとな論語・たなげの会」
論語塾は子供向けに行っているものはもちろんのこと、おとなむけの塾も開講していた。このおとな向けの論語塾とは違い、興味の引き方などに焦点はおかず、運営者本人も楽しめるような雰囲気づくりが見られた。基準としては、来た利用者が楽しめることも大切な基準であったが、この「ぼんとん」の運営者が楽しめるかどうか、興味があるかどうかの尺度で運営の有無をはかっているからこそ、継続的かつ定期的に出来る内容であると、お話の中から感じ取れた。
たなげの会は、日常生活で自分の身の回りにある楽しい話を持ち寄るという内容であった。日ごろおなじこの「ぼんとん」という場所を共有してはいるけども、面と向かって会話をする機会のないメンバーたちでも、「会」という機会を通すことで、話すタイミングをつかんでいるように思えた。この会に参加したメンバー同士、町であうと声賭けをするようになったなど、「会」を超えてのつながりも感じ取れるとおっしゃっていた。
(4)利用者・運用について
利用者世代としては60~70代の方の利用が多く、運営者との世代が一致していた。
利用した方の印象としては、今までなかった場所ができてうれしいとの声が挙がっているとのことだった。
収支を考えた運営はしておらず、自営業にちかいものが伺えた。収益の一部として、論語塾などの月収などがあるが、その月収が目的で塾を開講しているわけではなく。あくまでの心の満足を目的にしていることが何度も、お話の中から感じ取ることができた。
(5)まとめ
NPO法人ではない、非営利目的の事業体であった。営利目的ではない。ということが重要なのではなく、では、「どこに目的を置くのか」ということが大切であることを感じさせてくれるコミュニティカフェであった。目的意識はしっかり持つが、目標を高く持つわけでもない、ゆったりとした経営者の雰囲気が、カフェの雰囲気としてそのまま出ているように感じた。地域のために、利用者のために、とコミュニティカフェをつくりあげることももちろん大切なことであるが、自分も住民の一人、自分のニーズも大切な意見として取り上げていくことによって、地域住民のニーズとのミスマッチを防げるように感じた。つまり、コミュニティカフェを運営していくには、念頭に「自分は運営者である」ということよりも「自分もこの街の一人であり、利用者と同等である」ということを意識して進めていくことも重要なのかもしれないと思わせてくれた、コミュニティカフェであった。