(1)概要
名称:特定非営利法人 ワーカーズコレクティブてとて
所在地: 北本市中央4丁目67 生活クラブ生協北本生活館1F
営業時間:午前10:00~午後17:00 (事業ごとに多少異なる)
営業形態:特定非営利法人 ・ ワーカーズコレクティブ ・ 会員制
生活クラブ生活協同組合埼玉の福祉事業「みんなの居場所わ~くわっく北本」を運営。(地域サロン・一時託児・親子のひろば・ランチ喫茶)
自主事業として、地域生活サポート事業、福祉有償運送事業etc…。
(2)経緯
居場所をつくることになったきっかけは、生活クラブ生協北本生活館の組合員が、組合員のためのスペースで物置になって使われていなかった1階部分を、地域のために活用することはできないかと思ったことである。地域福祉に関心のある組会員数名で地域について考える委員会を構成し、定期的に話し合いをした。そして生協との協議の末、生活クラブ生協福祉事業みんなの居場所「わーくわっく北本」の運営と地域生活サポート事業等のサービス提供を行うため「NPO法人ワーカーズコレクティブてとて」を設立した。生協がワーカーズコレクティブを推奨していたためこの形態をとった。しかし、てとてのメンバーはワーカーズコレクティブに関わることは初めてであったため、埼玉ワーカーズコレクティブ連合の先輩方から教えていただきながら準備をして設立に至った。
(3)プログラム・参加者の状況
てとてでは、生活クラブ生協福祉事業「みんなの居場所わーくわっく北本」として地域サロン・一時託児・親子のひろば・ランチ喫茶を行っている。対象はてとて会員と生活クラブ組合員である。わーくわっくでは安心安全な食材でスタッフこだわりのランチを手作りして提供している。地域サロンはおしゃべりをしたり、ランチを食べたり気軽に立ち寄れるみんなの居場所である。ちょっとした福祉相談も受けている。また、てとての手作り品が販売されていたり、書道教室・歌声喫茶などの教室やイベントが開催されたりしている。親子のひろばは親子で楽しく、ほっとでき、安心できる場として利用されている。離乳食学習会などのイベントも行っている。一時託児は平日に利用できるが現在まったく利用がなく課題となっている。
てとての自主事業としては、生活さぽーとという介護保険からは漏れてしまうような家事支援・通院の付き添いなど生活上の困りごとを解決するお手伝いを行う地域生活サポート事業がある。他にも平成24年から福祉有償運送事業も行っている。
わーくわっく全体の利用状況は平均して一日6人程度で教室やイベントを行うときは40名ほど利用する。利用している方の中には営業日は毎日通っているという方もいる。知的障害をもつ方、脳性まひの方、主婦、高齢者など様々な人が来る。わーくわっくの玄関先を掃除することが日課となっている方もいる。やってみて初めてこの地域にも色々な人がいるということを知ったとそうだ。そのようにいろいろな人が来てくれることがうれしいともおっしゃっていた。何回か来てくれた方に対し、お声掛けして話をしていく中でその方のニーズを教えてもらう。利用者のもつ生活課題に対し生活さぽーとのサービスを提案したり、公共サービスにつないだりすることもあるそうだ。
(4)運営の実際・課題
スタッフは23名いて、ワーカーズコレクティブという形態であるため、皆が出資者であり経営者であり労働者である。スタッフはランチを作る食チーム、フロアチーム、生活さぽーとのサポーター、福祉有償運送のドライバーなどそれぞれの役割がある。スタッフの中には上尾市の地域生活支援センターから紹介された精神障害を持った方も働いている。その他にも、俳句・書道教室の先生としてボランティアの方が2名いる。以前は立正大学のボランティアセンターから多くの学生がボランティアとして活動していたが震災を機になくなってしまい、現在は上記の2名のみである。スタッフの中の数名はてとて設立に関わった委員会のメンバーで、その他はチラシによる募集で集まった人、「てとて」を居場所として利用いしていた人、人からの紹介など様々である。新しく入ったスタッフにワーカーズの働き方を理解してもらうことが難しいといった課題もある。
協力機関については、設立にあたって協力していた生活クラブ生活協同組合や埼玉ワーカーズコレクティブ連合はもちろんであるが、民生委員・地域包括支援センター・地域活動支援センター・社会福祉協議会・市役所の福祉課・協働推進課ときには医師などとも協力して運営を行っている。また、市内や周辺地域のNPOとつながりもある。協力してくれる方としては、利用者の方々もあげられる。「てとて」の収益につながればということでバザーを開催するときにいろいろな品を持ってきてくれるそうだ。
運営にあたって苦労していることは、経営面で、スタッフの賃金が最低賃金以下になってしまうことだ。ランチ喫茶での収入が少なく、地域生活サポート事業の収入でどうにか全体としてやっていけている状況である。スタッフの賃金が低いことは生活をしていくための働く場にはできないということであり、スタッフの多くが定年をむかえて時間やお金に余裕がある年代だけになってしまう。ワーカーズコレクティブという働き方を進めていくためにも今後の課題である。また、運営についての様々な決定は会議でおこなわれるが、ワーカーズコレクティブでは皆が経営者であるため運営会議はスタッフ全員でおこなわれ最終決定がなされる。そうなると、会議の内容が煩雑としたり時間がとてもかかってしまったり大変な面もある。しかし、会議で決定したことは皆の合意のもとで進められるため、進みだしたら順調にいき、気が付いたら「私たちでこんなことができている!」と感じるようなこともある。会議は最終的な意思決定の場である全員参加の運営会議だけでなく、チーフ会議や役割ごとのチーム会議など小さな単位でも行われている。これらとは別に、ワーカーズコレクティブで、生活クラブ生活協同組合で、組合員でなど様々な会議があるという。会議が多かったり長かったりといった大変さもあるが、とても大切なことであるとうかがった。
(5)今後の方針
代表者の方は、この仕事をしていると働きながらいろいろな人と話ができて、いろいろなことを教えてもらえるとおっしゃっていた。また、てとてが自身の居場所になっているそうだ。スタッフの間で、これから就労世帯に対して夜の時間帯に居場所を使えるようにしたり、定年をむかえた教員の方に学習支援の活動をいてもらったり、塾に通う子供たちのために弁当をつくるのはどうかというような案が出ている。地域の方からは配食サービスを始めてほしいと言った要望もあるそうだ。この先、てとてを何かあったらココ!と思ってもらえるような場所に、もっと多くの人に利用してもらえる場所にしていくことをめざしている。