特殊な形質進化

深海および極域は貧栄養・低⽔温等の生物が生きるには過酷な極限環境です。また砂浜の潮間帯のような普通の場所でも、砂の隙間は1日の間に劇的に状況が変わる特殊な環境です。このような環境において⽣物は独⾃の適応をしている例が散⾒されますが、サンプルを得にくいことから事例報告が多いのみで⽐較研究は少ないのが現状です。極限環境域における形質進化研究に取り組むため私は今まで海洋研究開発機構・国⽴極地研究所に所属し、上記環境においてサンプリングを⾏ってきました。例えば10800 m の超深海から得られた多⽑類について段階的に浅い⽔深からのサンプルを⽐較したところ、同亜科内において上⽪の特殊化・⼤脳の大きさに段階的な違いが⾒られました。

また南極域のサンプルから発見した骨片は多毛類では2例目の例であり、本発見は多毛類におけるバイオミネラリゼーションの進化に迫れる材料です。地質学者と協力し、より広範な地域からのサンプル収集や骨片の組成解析等を行いつつ研究を進めています。上記に関連し令和元年度は白鳳丸の南極航海において岩石ドレッジを用いたサンプリングを行い、そこから得られた新種を報告しました (Jimi et al. 2020)。 今後も南極・北極域や深海域での調査を続けていく予定です。

砂の隙間に生息する特殊な間隙性生物から骨片を発見し、その組成・進化についても研究を継続しています (Jimi et al. 2021)。

Jimi et al. (2017, 2020, 2021)等

昭和基地周辺から記載したフジキブクレハボウキ (Jimi et al. 2017)

南極固有種で多毛類には特異な骨片を持つ

間隙性の小さなオフェリアゴカイ。

骨片をもつ。

水深10,800 mから採れた世界最深のウロコムシのキノコ体

間隙性オフェリアゴカイの骨片の組成解析