本書の内容
本書は社会科学における統計学を実例とともに紹介・説明する本です.本書は,私が2017 年から教えてきた授業,具体的には東京工業大学文系教養科目「統計学A, B, C,文系エッセンス:統計学」や学習院大学法学部政治学科「社会統計学I, II」での内容を一冊にまとめたものです.また,研究上の経験や東工大でおこなった講演の内容も盛り込んでいます.
本書には,社会科学における統計学の理解・実践に必要なベーシックな知識がすべて入っています.また,本書は社会調査士A, B, C, D, E 科目の一部をカバーしています.
本書における説明のスタンスは以下の4 点です.多くの人が興味を持って,実践的・理論的な統計学の知を学べるように工夫しました.
できるだけ実際のデータを用いる
実際の社会現象・社会問題を軸にする
手を動かせるところは,動かして理解する
数学的な側面だけではなく,結果の解釈にも重点を置く
本書が想定する読者
本書は以下のような読者を想定しています.
社会科学における統計学を学びたい方
社会のできごとを題材として統計学を学びたい方
統計学を使って社会を分析したい方
統計学の基礎をきっちり学びたい方
自分が学んだ統計学を見直しながら,ほかに何ができるかを知りたい自然科学系の大学生
社会を見通すために数学がどう生かされるか知りたい高校生
(「はじめに」より抜粋)
第0章 イントロダクション
第I部 コア
第1章 データを集める:社会調査
第2章 データをまとめる:記述統計
第3章 関連を捉える:クロス表と相関係数
第4章 関連を疑う:疑似相関と変数の統制
第5章 データから推測する:推定
第6章 データから確かめる:検定
第II部 理論
第7章 コイントスで社会を見る:離散変数と二項分布
第8章 集まったデータを表現する:連続変数と正規分布
第9章 推定が満たすべき条件:不偏性とバイアス
第III部 手法
第10章 社会の下流化は起こっているか:平均・比率の差の検定
第11章 継承される格差を検討する:移動表とカイ二乗検定
第12章 世界の男性の家事事情:分散分析
第13章 年収と年齢の関係:t分布と相関係数の検定
第14章 ワイン評論家を出し抜く方法:回帰分析
第IV部 終わりに
第15章 統計学の応用とこれから:ビッグデータとベイズ統計学