パズル

北野、合田編、「トポロジー問題集」の原稿より

参考文献等はそちらをご覧下さい。

但し、9.1の(2),(3)に関しては、元同僚の 松井泰子さんが、旦那さんが反例を見附けた、 と言うので、問題をよく見たら、元の問題に不備があったので、手直ししました。

9.1. (正方形の四等分問題 どこがトポロジーなんだろう ^_^;)

(1) 正方形を合同な四つの部分に分け、正方形の中心がそのいずれかの内点に なるように出来るか?(もしくは、出来ないことを証明せよ。)

(2) n が4でない場合、正n角形を合同な n 個の部分に分ける分け方で、 「対称性」のより少ないものを求めよ。

(3) 正n角形を合同な m 個の部分に分けることが出来るとする。 (n,m) を求めよ。

1.1. (結び目の自己距離)

端点の間の距離が1の空間(平面)曲線で、曲線上の任意の点から見て 逆行がないようなものの族を考える。 この族に属する曲線の長さの上限が有界であることを示し、その値を 求めよ。

註:平面曲線の場合は、 2pi/3 で、端点を二辺とする正三角形の二辺をそれぞれ半径1の円弧の 6分の1で置き換えたもので実現されると予想される。

背景:空間内に埋め込まれた結び目に対して、幾何学的な量である自己距離を 定義することが出来る。

(同じ結び目型でも、ぐちゃぐちゃした曲線の自己距離は小さくなる。)

この族に属する曲線の長さの上限が有界であれば、自己距離の逆数は、 結び目の「エネルギー汎関数」になる。

1.2. (Knot Space のトポロジー)

各結び目型に属する埋め込み写像全体のなす空間の位相 に関する情報(ホモトピー型等)を求めよ。

註:S^3 の中の自明な結び目全体のなす空間は「可縮」になる。(Hatcher)

この問題の有限次元版として、次の問題が考えられます。

n 本の(長さの等しい)辺を持つ折れ線の結び目のなす空間の連結成分 の個数などについての研究があったそうです。 (例えば、n が小さい場合は、trefoil に属するものの連結成分は 一つではないそうです。)

1.3. (結び目の幾何学的な量)

結び目の埋め込み写像から幾何学的に定義できる量で、「極値」で 結び目型の位相的な情報を持つようなもの、或いは、 「極値」がある種の代数的な条件を満すようなもの を作れ。

註:(1)全曲率では、結び目型の中で下限をとると結び目の bridge index になる。

(2)全二乗曲率汎関数の臨界値となるようなはめ込み写像で、平面内にないものは ある種のトーラス結び目のみで、不安定な臨界点である。

(3)R^3 のエネルギーに関しては、素な結び目型には最小値を与える 埋め込み写像の存在が証明されているが、そうでない場合には、(数値実験より) 最小値を与える埋め込み写像は存在しないと予想されている。

1.4. (1)S^1 から S^3 又は R^3 へのはめ込み写像全体の集合上に、 各結び目型に属する埋め込み写像全体の集合の測度が正となるような測度を 定義せよ。

(2)上の問題で作った量を(1)の測度で積分(もしくは振動積分)して 結び目不変量を作れ。

? (結び目のエネルギーの拡張)

(工学部系の人から指摘されたのですが)沢山の区間の非交和から 三次元空間への埋め込み写像(要するに、スパゲッティみたいなもの) の「複雑さ」を測るような量を定義せよ。

(例えば、平均交点数といったようなもの、、、ゆで時間とか ^_^;)

1.5. (2 Component Link)

2成分絡み目で、各成分が自明な結び目となるものを分類せよ。 また、この2成分をアイソトピーで交換出来る為の条件は何か?

Tea Times Puzzles

1. (Open Problem for the moment?)

(1)正方形を等分して、2n*2n=4n^2コの小正方形に分け、元の正方形を n^2コの小正方形よりなる合同な4つの部分に分ける時、元の正方形の 中心が、そのいずれかに入るように出来るか?

(2) 正方形を等分して、(2n+1)*(2n+1)=(4n^2+4n+1)コの小正方形に分け、 その内の一つを取り除き、残りの (4n^2+4n) コの小正方形達を (n^2+n)コの小正方形よりなる合同な4つの部分に分けることが出来た とする。この時、n>1 ならば、最初に取り除いた小正方形は真中のものか?

上の Open Problems 9.1参照。

2. 甲が m 枚、乙が n 枚メダルを持っているとする。 一回のコイン投げで、負けた方が、勝った方にメダルを 一枚わたし、最後にメダルがなくなった方が負け、 というゲームを考える。但し、各々のコイン投げで 勝つ確率は甲乙各々 1/2 とする。

(1) 最終的に甲の勝つ確率はいくらか。

(2) 決着が付くまでに必要なコイン投げの回数の 期待値は何か。

正解者:名倉真紀様(97/4/22)

3. A、B 二つのビーカーに0度の水と100度の水(湯)が 同量ずつ入っているとする。

(1) 元々 A 内に入っていた水の一部を別の幾つかのビーカー A_i に分割すること、もしくはその逆の混合。

(2) 元々 B 内に入っていた水の一部を別の幾つかのビーカー B_j に分割すること、もしくはその逆の混合。

(3) A_i と B_j の接触。(同じ温度になるとする。)

上の三つの操作のみを有限回用いることが許されているとする。 最後に、元々 A(または B)に入っていた水を再び A (または B)のビーカーにまとめるとする。 最後に A に入っている水の温度を出来るだけ上げたいが、 何度まで上げることが出来るか?

但し、熱の損失はないものとする。

例えば、B を n 等分して、順番に A と接触させれば、 A の温度は50度を越えるように出来る。

(出典:世戸 憲治「浴槽の物理学~熱エネルギーはどこまで交換できるか」(数理科学 172 (1977 10月号)、73-79ページ)

4. (どっかの教員採用試験の問題だそうです。)

点Oから出る二つの半直線OAとOBその二つの半直線にはさまれた領域の中の 点Cが与えられているとしましょう。 そのとき、OAとOBに接し、点Cを通る円を作図せよ、というのが問題です。

小林正典さんがエレガントな解法を思い付きました。 (私はエレファントな解法しか思い付かなかったけど、、、) アポロニウスの円の作図問題の解答

5. (ドロール.バル-ナタンの「哀れな虫クンの コンフィギュレーション スペース」)

ドロール.バル-ナタンはイスラエルのトポロジストです。 彼は、講演を始めるとき、「私の講演に退屈したときのために」 と言って気の効いたパズルを出すことがあります。 ここに挙げるのもそういったものの一つです。 最後に「パズルが分かった人はいるか?」と訊ねるのですが、 ぱっと答えた人がいたのには驚かされました。

問題:小さな虫クンが不運にも捕まって、 6本の脚の先を固定されてしまいました。 更に不幸なことには、その上下をガラス板で挟まれてしまい、 平面的にしか動けなくなってしまいました。 それぞれの脚には関節が一つずつあり、それはどちらの方向にも 曲がるものと仮定します。 (実際にそのような芸当の出来る虫がいるのかどうか、私は知りません。) このとき、この哀れな虫クンの状態全体のなす集合は、 ある空間と同相になるのですが、その空間は何でしょうか。

もしも、その虫クンが本当に惨めで、全ての脚がいっぱいいっぱいに伸び切る ように固定されているとすると、虫クンは動けませんから、状態もひとつしかなく、 答えは「1点」となります。 でも、それでは、あんまりですから、最初は全ての脚が曲がるように固定 されている、としましょう。 また、簡単のために、虫クンの胴体は点で、 脚の長さは6本全て同じ1.08cmで、ちょうど真ん中に関節があり、 それが、半径1cmの円の円周を6等分する点に固定されている、と仮定します。 そうすると、同時に3本以上の脚が伸び切ることはありません。 また、もしも2本の脚が伸び切ったとすると、それは隣り合った2本の脚になります。 更に、二本の脚が交差することもありません。

これの答はここ。英語でよければ、(このパズルの一般化の答が) ここ。(Dec 2002)

6. ついでに、もう一つバル-ナタンのパズル。(ちなみに、私も正解を 知りません。)

講演の最初に、OHPに正方形の紙をのせ、それを何回か折ります。 すると、出来た形がスクリーン上写し出される訳ですが、

「この形の周の長さは、元々の周の長さよりも短いことを示せ」

というのが問題です。出来る形は、必ずしも凸とは限らないので、 三角不等式を用いて帰納法で示す訳にはいかない所がミソです。

7.(Open Problem for the moment?) n_1, ... n_k を自然数とするとき、これら全てを使って、四則演算と指数を 用いて表すことのできる自然数の集合を、{n_1, ... n_k} の子孫集合と 呼び、 o(n_1, ... n_k) と書くことにします。

n を自然数とします。いくつかの自然数の組 {n_1, ... n_k} で、その和が n となるようなもの全体を考え、対応する o(n_1, ... n_k) の和集合を n の遺産集合と呼び、H(n) と表すことにします。すなわち、

H(n)= U        U         o(n_1, ... n_k) .

      k  n=n_1+ ... +n_k

たとえば、H(2)={1,2}, H(3)={1,2,3},H(4)={1,2,3,4},H(5)={1,2,3,4,5,6,8,9}

このとき、max H(n) と #H(n) の n->∞ での挙動は何でしょうか。

8. 三角形の中で、(面積)÷(辺の長さの和)^2 を最大にするのは、 正三角形であることを、微分積分を用いずに示せ。

9.(Open Problem for the moment?) n 面体 X の体積 V を表面積を S 辺の長さの和を L とします。 n=4,6,8,12,20 のとき、正 n 面体が V^2/S^3, V/L^3 の最大を与えるでしょうか。

10. 与えられた点Aを通り、与えられた円C_1,C_2と直交する円を作図しなさい。

脳を鍛える(?)数学パズル 問題編解答(オープンキャンパスより)

なぞなぞ : 狸のポン太郎クンが、片目をつぶってあるものに化けました。 さて、何に化けたでしょうか?

ドラキュラさんは、貴族と平民のどちらの血が好きでしょうか?

漢字4文字パズル 木■微■、 ■婆■子、口■味■、西■山■、etc.

小学校の算数のパズル

私は小学校の先生には、大変に恵まれました。

「天下分け目の戦いは箱根であった」とか、 社会の教科書で、(例えば)気温と降水量(だったか、とにかく、単位の異なる 二つのもの)の折れ線グラフが交わっていると、 「それは、ちょうどいい、ということです」とおっしゃったりするような方でした。

おかげさまで、 「勉強というものは、先生を当てにせず、自分でやらなければならない」 という 学問の基本 を、期せずして身に着けることができました。 という訳で、この先生には大変に感謝しています。

(その点では、最近の塾などでの、「 痒いところに手が届くような、きめ細かい親身な指導」というのは、非常によくないということが 分かります。学力低下の一因かもしれません。)

このすばらしい教育を私一人が独占しているのはもったいないので、その一端をここに公開しようと思います。

1.  先生:「コンパスで円を描き、その半径で、円周を切っていくと、 6回切ることが出来て、ほんの少し余ります。これはどうしてでしょう?」

(生徒の一人、実際にやってみて、「僕、足りなくなっちゃったよー」)

先生の答え:「それは、円周率は3.14159265...とずっと続くのを、 3.14としてしまっているので、その余りが出てくるのです!」

(このジョークのような説明も、「円周率およそ3」の世の中では、 面白みが減じてしまいそうで、残念です。)

2. 対頂角が等しいのは何故か、というところで、先生:「誰か分かる人?」

ある生徒:「はーい、90度の時は等しいです。そこから連続的に動かしていくと、同じだけ増えたり減ったりするので、90度でない時もやっぱり同じになります」

先生:「そうです!」

このように、ご自分が分からないこと、例えば分数の割り算など、は出来そうな生徒にきいて(「学び合い」ですね)、その答えが合っているか間違っているか判定できないので、そのまま授業は進みました。

パズルというのは、上の間違いはどこでしょう、というものです。