● 狩野文浩 (KANO, Fumihiro ) 京都大学熊本サンクチュアリ
『類人猿の予測的注視が明らかにする高次認知機能:他者の目的予測、心の理論、エピソード記憶』
予測的注視とは、規則的なイベントや動き、他者の目的志向的運動を観察している時、その事象が起こる直前に生じる、
記憶に基づいた注視のことである。事象が起こった後に生じる反応的注視とは異なり、記憶に基づいた注視行動である
ため、高次認知機能を調べるのに適している。発表では、この予測的注視に焦点を当てて、類人猿を対象にした最近の
アイ・トラッキング研究を紹介する。
● 佐藤 德 (SATO, Atsushi ) 富山大学
『アイコンタクトと行為表象の形成』
動作と感覚結果の双方向的な関係に関する表象(行為表象)は、運動制御のみならず、自他の行為の区別や、自己身体
の延長、他者の行為の理解などにも寄与すると考えられている。本発表では、こうした行為表象が、自己の動作とそれに
対する他者の動作との間でも形成され、特にアイコンタクトがある場合にその学習が促進されることを報告する。
● 高野裕治 (TAKANO, Yuji) 同志社大学
『他者の視線で変わるパフォーマンス』
他者の存在を知覚することで、覚醒度が上昇し、パフォーマンスが上昇する(または下がる)。この効果は心理学では
「社会的促進」とよばれ、動物種を超えて観察できることが知られている。本発表ではヒトを対象とした実験に加え、
人間心理のモデル動物として、学習心理学等で登場するラットの実験を紹介する。そして、生物種を超えて、他者の
視線がパフォーマンスに及ぼす影響を考察することで、視線認知研究の新展開を提案したい。
● 高橋翠 (TAKAHASHI, Midori) 東京大学
『視線が顔の魅力評定に与える影響』
顔魅力に関する研究では、標準的に、評定者のことを“見つめている(直視の)”顔写真が用いられてきた。しかし最近、
視線の向きが、表情や形態的特徴といった他の要素と相互作用しながら魅力に影響することが示されている。
そこで「なぜその条件で魅力が知覚される/ないのか?」ということの説明(適応主義的アプローチ)に触れながら、
顔魅力に対する視線の効果について最新の研究を紹介したい。