奥村優子(京都大学大学院文学研究科・日本学術振興会特別研究員)
「乳児におけるヒト及びロボットの視線からの物体学習」
乳児は、他者の視線を追従し、視線の先にある対象物へと注意を向ける。
本研究では、乳児が他者の視線情報を利用することによって視線の対象物である物体を
学習する現象に着目し、その情報源となるエージェント(行為者:成人女性とヒューマノイドロボット)
が乳児の物体学習に与える影響を比較した。これら一連の研究から、乳児の社会的学習において、
情報源であるエージェントの重要性について論じる。
明地洋典(日本学術振興会特別研究員PD(東京電機大学))
「とある視線の処理機構 ―定型・非定型発達、および、文化間比較―」
ヒトは生まれながらにアイコンタクトへの敏感性を持つことが報告されているが、
他者の視線への反応には、自閉症スペクトラム障害の人や、文化間では違いがあることも報告されている。
自閉症スペクトラム障害における他者の視線への反応について事象関連電位などを用いて検討した研究、
および、アイコンタクトへの反応の文化差について心拍測定などを行い検討した研究を紹介し、
視線処理機構の非定型発達や文化的影響について議論する。
宮崎由樹(中京大学心理学部)
「見られていると視覚探索は慎重になる」
視覚探索の実験的研究は、実験参加者が1人残された状況で行われることが多い。
しかし、日常場面では、我々は誰かの目を気にしながら探索する機会に頻繁に出くわす。
発表者は“見られている”という意識が、探索行動にどのような影響をもたらすか検討した。
その結果、他者に見られている(vs. 見られていない)と、速度より精度を重視するように
探索方略が変化することがわかった。発表では、この方略変化の意味することと、その応用についても論じたい。
松田昌史(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
「視線一致知覚範囲と社交性不安および性差─あの日見た視線の意味を僕達はまだ知らない。─」
人は他者が自分の顔面方向に視線を向けている時、必ずしも目と目が合っていなくても視線一致していると知覚する。
その範囲を視線一致範囲として測定した。実験では120cmの距離で相対して着席した実験者が参加者の顔面内の任意の地点を注視し、
参加者は視線一致か否かを判断する課題を行わせた。視線一致範囲は社交性不安とは正の相関があること、
異性からの視線の場合には面積が小さくなることがわかった。人がこのような傾向を持つ意味を議論したい。
田邊宏樹(名古屋大学文学部)
「二台のMRIを繋げて共同注意の神経メカニズムを探る:We-mode neuroscienceの第一歩」
「目と目で通じ合う」という表現があるように、視線を介した他者とのコミュニケーションは重要である。
我々はオンラインでお互いの目や顔を見合うことができる二台の機能的MRI同時計測系を構築し、
よりリアルな状態に近いかたちでの共同注意の神経基盤の解明に取り組んでいる。
ここでは主にベースとしての見つめ合いと2つのタイプの共同注意(始発/応答)の解析結果を紹介し、
共同注意が成立する神経機構について議論する。