例会・読書会

2019年度例会・読書会のご案内

例会案内

〈2019年度第1回例会〉

日時: 2019年5月19 日(日)14:00-16:00

場所: 桜美林大学 四谷キャンパス(アクセスマップはこちら

【研究発表1】

「『商標言語学』―商標の類似性判断における音韻論及び認知言語学的アプローチー」

発表者: 五所万実(慶應義塾大学)

概要:

商標言語学とは、言語学の知見を法実務に応用することを目的とした法言語学の一分野である。本研究は、商標登録の審査過程において問題となる商標の類似性について、音韻論・認知言語学の観点からアプローチするものである。審決文書を質的・量的に分析し明らかとなった、複合語型商標に係る類否判断において重要となる「語の一体性」あるいは「分離可能性」、「要部(独立して識別力を発揮する部分)の認定」について、複合名詞のアクセント規則や認知ドメイン、構文スキーマなどの概念を援用し考察を試みる。

メッセージ:

商標の類似性は、外観(見た目)、称呼(呼び名)、観念(意味合い)を含む観点から総合的に判断されます。本発表では、称呼と観念に焦点を当て音韻論と認知言語学の観点からアプローチしますが、分析手法の妥当性や新たな分析手法について幅広い視点から議論していければと思います。商標の類似性判断は、人工知能による自動化や、言語権の独占が論じられることがあります。ぜひ皆様のご関心、ご専門と関連させたご意見等も、お伺いできますと幸いです。

【研究発表2】

「日本人上級英語学習者による『発話のための思考』」

発表者: 野口敬未(北里大学)

概要:

人はある年齢を過ぎると第二言語でネイティブレベルに達するのが困難になる、という症例が多く報告されています。特に、第一言語と比べ第二言語特有なのは、到達レベルに個人差がある事、また個人でも語彙ごとに習得レベルにばらつきがある事です。当研究はこのばらつきに注目し、第二言語のどの部分が、どのように習得しにくいのかに迫りました。SlobinのThinking for speaking(発話のための思考)を研究の枠組みとし、日本人上級英語学習者が「文章のどこにどんな意味をどの品詞で表現するのか」を分析しました。結果、第一言語にない「意味と言葉の組み合わせ」のある語彙は習得困難で「部分的習得」の傾向が強い、という事が分かりました。

メッセージ:

「大枠をつかむ」目的で始めた研究です。この先焦点を絞った研究を進めたいと思っておりますので、いろいろな視点からのアドバイスをいただけると幸いです。

〈2019年度第2回例会〉

日時: 2019年7月21 日(日)14:00-16:00

場所: 杏林大学 井の頭キャンパス(アクセスマップはこちら

【研究発表1】

「『キャラクタ』論に関する一考察―日本語母語話者を対象としたインタビュー調査のSCAT分析を通して―」

発表者: 荒井美咲(東北大学)

概要:

本研究は、日本語母語話者(以下、NS)6名に対して実施した半構造化インタビュー調査をSCATによって分析することで、「キャラクタ」の性質を見出し、NSがどのように「キャラクタ」を形成しているのかを考察したものである。「キャラクタ」は、<意図的操作の可能性><対人関係性><コントロール困難性>という3つの基本的性質を持つ。加えて、<演技性/非演技性><記号性><遊戯性>という付属的性質を持つ。また、「キャラクタ」は8種類に分類され、NSはそれらの「キャラクタ」を駆使し、「キャラクタ形成モデル」に従って「キャラクタ」を形成していることが分かった。NSの「キャラクタ」を活用したコミュニケーションの実態を明らかにすることで、これらの知見が今後の日本語教育におけるコミュニケーション教育への応用に繋がることを期待している。今後さらにインタビュー調査を継続し、現在発見されているもの以外の「キャラクタ」ならびに「キャラクタ形成モデル」を見出すことが課題の1つである。

メッセージ:

本研究は、「そもそも『キャラクタ』って何?」「『キャラクタ』をどのように説明すればいいの?」という根本的な疑問に対して、答えを導き出そうと試みた研究です。近年、「キャラ(クタ)」研究が盛んですが、どの概説書・論文の「キャラクタ」の定義・説明を読んでも、「なんとなく分かるがいまいちピンとこない」ことが多いため、本研究を始めました。現在、所属する研究室で行われる研究会で「キャラクタ」を上手く説明できなかったり、他のメンバーから理解が得られなかったりします。本発表では、「キャラクタ」論に関して議論を交わし、「キャラクタ」について整理したいと思います。様々なご意見をお待ちしております。

【研究発表2】

「前置詞の習得段階における発話の単位 ー前置詞句単独発話の産出についてー」

発表者: 堀内ふみ野(大東文化大学)

概要:

英語の複文の習得過程を用法基盤主義の立場から研究したDiessel (2004) は、so, but, becauseなどの接続詞によって導かれる節の習得について、(i) 子供はそれらを最初から主節(関連する節)と共に産出するわけではなく従属節・等位節単独での発話から産出し始めること(e.g.“So you can watch it.”)、(ii) 接続詞ごとに先行発話との関係性に異なる傾向が見られること(e.g. because節は親の発話に、so節は子供自身の発話に後続して生起しやすいこと)を明らかにした。本研究では、この研究成果を踏まえた上で、前置詞の習得においても前置詞句単独の発話から産出が始まるのか、先行発話との関係は前置詞ごとに異なるのかを、CHILDESを用いて調査する。これを通して、句と節の習得過程の違いや個々の前置詞の習得過程に見られる特性を考察していきたい。

メッセージ:

文法、談話、コミュニケーション、言語習得など、様々な分野の接点となる現象です。多様な分野の方々からコメントをいただければ幸いです。

読書会案内

〈2019年度第1回読書会〉

日時: 2019年8月27日(火)午後

場所: 東京農工大学 小金井キャンパス(アクセスマップはこちら

内容: PART II: 11. Shifters, Linguistic Categories, and Cultural Description (Michael Silverstein)

書籍: Ben G. Blount (1995). Language, Culture, and Society: A Book of Readings (2nd Ed.) Waveland Press.

担当: 合崎京子(立教大学)

参考

2018年度の例会・読書会については、こちらからご覧いただけます。

2017年度の例会・読書会については、こちらからご覧いただけます。