2018年度例会・読書会のご案内
講演会案内
〈2018年度特別講演会〉 ※盛会にて終了いたしました。
講 演: 「この地でポライトネスを考えることの意味を考える」
講演者: 滝浦 真人(放送大学)
概要:
Brown & Levinson の Politeness から40年(!)、Watts や Eelen に唱導された discursive turn(談話論的転回)からも20年が経とうとしている現在、日本のポライトネス研究は少し息苦しそうに見える。 “一文語用論” を脱してディスコースにおける(イン)ポライトネスを探しに行く営みは限りなく談話分析のそれに近づき、また、(イン)ポライトネスを決するのは聞き手だから、話し手のストラテジーから決定論的に語る “還元主義” に陥ることもあってはならない。けれど、そうして苦労して描き出したインタラクションはどこか散漫(discursive)で、明確な像が取り出せない…。
こうした苦しさの中に日本語固有の事情があるとしたら、それは日本語が典型的な “敬語型言語” だということと関係しているだろう。非敬語的な手段によってポライトネスを表現する言語を “ポライトネス型言語” と呼ぶならば、B&L 自体が “敬語型言語” に対する “ポライトネス型言語” の異議申し立てだったと見ることができ、さらなる discursive turn は、ある言語形式の使用が(イン)ポライトネスの効果をもたらすといった “形式から機能へ” のアプローチを退ける意味合いをもった。このことは必然的に、たとえば「敬語使用の語用論的効果」といったアプローチを褪色して見せることになる。
しかし一方、敬語型言語では否応なく道具が目立ち、その新陳代謝も激しい。日本語コミュニケーションの現在に目を遣れば、取り沙汰されるのは変わらず「気になる日本語/言い方/敬語/etc.」であって、“形式から機能へ” の思考がなくなる気配は見えない。そのような言語文化にあって(イン)ポライトネスを考えるためには、敬語型言語とポライトネス型言語におけるコミュニケーション論的差異を踏まえた上での方法論が必要となろう。そのことについて考えてみたい。
メッセージ:
現在進行形のテーマで、未だ答えの得られていないトピックと言っていいかと思います。ともに考えてくれる方、大募集!です。
例会案内
〈2018年度第1回例会〉 ※盛会にて終了いたしました。
【データセッション】
「会話の中でのことばの学びの諸相」
データ提供者: 李 址遠(早稲田大学大学院・早稲田大学日本語教育研究センター)
コメンテーター: 片岡 邦好(愛知大学)
概要:
「社会的視点」に基づく第二言語習得研究では、教室を離れた様々な場面における言語学習の様相を明らかにすることが重要な課題の一つになっている。
本データセッションでは、初中級の日本語学習者2名と日本人母語話者2名が1学期間にわたって行った言語交換場面の会話データ(計12回)を取り上げ、そこで行われる明示的・非明示的な言語学習の様相を言語人類学的(社会言語学的)談話分析の視点から分析していただく。反復構造(詩的構造)やフッティング(footing)、ヴォイシング(voicing)などといった諸分析概念に注目することで、日常的場面における言語学習の分析にそれらの概念を用いることの有効性と可能性について議論する。セッションの進め方としては、発表者から上記の諸分析概念について簡略に説明を行った後、参加者全員でデータの動画を視聴し、各自スクリプトを分析しながら意見を共有するという形をとる。
メッセージ:
「社会的視点」に基づく近年の第二言語習得研究は、会話分析の枠組みに基づくものが多いように思われます。本データセッションが、言語人類学的談話分析の視点を第二言語習得の研究に援用することの可能性について自由に議論できる場になれれば幸いです。
〈2018年度第2回例会〉 ※盛会にて終了いたしました。
【データセッション】
「メディア・ディスコース研究の可能性を探る」
データ提供者: 多々良 直弘(桜美林大学)
概要:
メディア研究の射程は広い。これまでも様々な分野においてメディアに関する研究が行われてきたが、情報技術が発展し、様々なコンテンツがグローバル化の流れの中で世界各地に配信されるようになり、メディア研究の研究対象とその研究手法は増え続けている。例えばニュース報道をとっても、従来の新聞などの紙媒体やテレビ、ラジオといった媒体を通じてだけではなく、同じコンテンツがインターネットを通じても報道されるようになることでその研究の範囲は広がっている。更には報道側と情報の受け手である視聴者との双方向性という特徴も研究範囲を広げている一因である。またやさしい日本語、文字情報や手話通訳など現在のメディアにおける情報提供をより良いものに改善していくための研究も挙げられる。
この例会では、まずこれまでのメディア・ディスコース研究の事例を概観する。その後メディア翻訳、スポーツ報道の対照研究、目が不自由な視聴者向けのドラマやスポーツ実況中継の副音声などの事例のデータ分析を通じて今後のメディア研究の可能性を探っていきたい。
メッセージ:
近年は新聞や実況中継などのスポーツ報道の対照研究を中心に研究を行っています。この例会ではこれまでのメディア研究の成果を考察するだけではなく、まだ結論の出ていない始めたばかりの研究やこれから始めてみたい研究などについてもデータを提示し、今後のメディア研究の可能性を参加者の方々と自由に議論できたらと思います。また当日は参加者の方々からもメディア研究の研究素材や研究方法に関する提案もして頂けたら大変うれしく思います。
〈2018年度第3回例会〉 ※盛会にて終了いたしました。
【データセッション】
「スイスと日本の英語教育:学習者の動機づけの観点から」
データ提供者: 辻田 麻里(獨協大学)
概要:
外国語学習において動機づけは重要だとみなされているが、それを決定付ける要因は、学習者の居住国における対象言語の位置付けなど社会・文化的なもの、学習環境や教師・クラスメートとの関係、対象言語に対する個人的意識や家族の考え方など幅広い。本研究では、中等教育における英語学習の動機づけについて、スイスと日本の中学校・高等学校で、生徒対象のアンケート調査を行っている。スイスのフランス語圏とイタリア語圏の中学・高校3校、日本の高校1校で収集したデータを元に、スイスと日本の生徒たちの動機づけの比較を行う。アンケートの選択式回答については、英語学習に対して肯定的かどうか、要因別に見ていく。記述式回答については、生徒たちのコメントに動機づけのいかなる要因が反映されているか、参加者と一緒に考えていきたい。
メッセージ:
スイスには3つの公用語―ドイツ語・フランス語・イタリア語―があり、そのうち州の標準語以外の公用語を小学校で学び始め、その後に英語学習が始まります。一方で、日本は小学校から英語教育を導入し始めていますが、それが後の英語学習の動機づけにどのように影響するか、今後の検証が必要になります。現時点では、スイスの学校より動機づけが低い結果が出ており、何が大きな要因となっているか、自由に議論できればと思います。
読書会案内
〈2018年度第1回読書会〉 ※盛会にて終了いたしました。
書 籍:Ben G. Blount (1995). Language, Culture, and Society: A Book of Readings (2nd Ed.) Waveland Press. (詳細はこちらから)
内 容:Part III, Chapter 21. Language Acquisitions and Socialization: Three Developmental Stories and Their Implications (Elinor Ochs and Bambi B. Schieffelin) (p. 470-512)
発表者:李 址遠(早稲田大学大学院・早稲田大学日本語教育研究センター)
本書は、20世紀アメリカの言語文化研究を、特にサピア、ウォーフの言語学を起点に辿る論文集です。
様々な分野の方に集まっていただき、活発な議論を通して、今後の研究課題を見つけられたらと思います。
〈2018年度第2回読書会〉 ※盛会にて終了いたしました。
書 籍:Ben G. Blount (1995). Language, Culture, and Society: A Book of Readings (2nd Ed.) Waveland Press. (詳細はこちらから)
内 容:Part II: Chapter 9. Language and the Analysis of Social Laws (Claude Levi-Strauss) (pp. 143-152)
発表者:竹野谷 みゆき(東洋大学)
本書は、20世紀アメリカの言語文化研究を、特にサピア、ウォーフの言語学を起点に辿る論文集です。
様々な分野の方に集まっていただき、活発な議論を通して、今後の研究課題を見つけられたらと思います。
〈2018年度第3回読書会〉 ※盛会にて終了いたしました。
書 籍:Ben G. Blount (1995). Language, Culture, and Society: A Book of Readings (2nd Ed.) Waveland Press. (詳細はこちらから)
内 容:Part II: Chapter 12. On Face-Work: An Analysis of Ritual Elements in Social Interaction (Erving Goffman) (pp. 188-222)
発表者:片岡 さゆり(立教大学大学院)
言わずと知れたミクロ社会学の古典、アーヴィング・ゴフマンの「フェイスワーク」に関する論考です。
相互行為研究の基礎文献について、改めて理解を深められる機会になればと思います。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
〈2018年度第4回読書会〉 ※盛会にて終了いたしました。
書 籍: Ben G. Blount (1995). Language, Culture, and Society: A Book of Readings (2nd Ed.) Waveland Press. (詳細はこちらから)
内 容: PART I: 4. The Relation of Habitual Thought and Behavior to Language (Benjamin Lee Whorf)
発表者: 荻原まき(立教大学大学院)・辻田麻里(獨協大学)
この書籍では、SapirとWhorfの言語学を基礎として、
その後のHymes & Gumperz、さらにSilverstein以降の言語文化理論が展開したと位置づけています。
今回、読み進めるWhorfの論文は、その軸となる重要な論文の1つです。