【2025年度 第2回研究発表及び特別講演会】
日時:2025年12月21日(日)13時00分~17時15分
場所:桜美林大学新宿キャンパス(※オンライン同時配信)
〒169-0073 東京都新宿区百人町3丁目23-1
https://www.obirin.ac.jp/access/shinjuku/
参加費:無料
研究発表(13時00分~15時00分)
① 平松里咲(慶應義塾大学大学院生)
タイトル:『シンガポール英語の簡潔性を支える省略現象』
要旨 :
本研究では英語の変種であるシンガポール英語での省略現象について特徴と機能を整理することを目的としている。先行研究においてシンガポール英語はシンガポール英語自体の特徴、場面別の使用状況、接尾辞など標準英語と比較し「逸脱」としての研究がなされている。その中の特徴で多く指摘されているのが、省略現象である。主語、コピュラ、不定冠詞の脱落が見られるほか、スタンダード英語と比較して文全体が簡潔にまとまっている。これはシンガポール英語母語話者同士の事前共有情報があるのか、あるいは補っているものがあるのか、文脈依存性の高さが関与している可能性が高いが、省略という言語選択を行う理由をシンガポール英語のコーパスの事例から省略がどのような場面で生じ、何で補うことで共通理解が成立しているのかを突き詰めていく。
②重久理奈(大阪大学大学院生)
タイトル:「現代歌壇における日常言語から詩的言語へのレジスター化―新様式の価値創出と伝播の源として見る誌上評論―」
要旨 :
本研究では、日常言語と典型的様式とで二重の標準を念頭に置く歌人の語釈と文体評価 の相互作用を介して、詩的言語の実体化が果たされる一面を、言語人類学の視座から明ら かにする。従来の文体論でも、詩文解釈を制約する慣習や規範の踏襲が、例えば「解釈共同体」(Fish, 1980)の構成員の素養として論じられてきた。この発想は社会言語学・言語人 類学に通じる反面、社会的現実の領域で感知・喚起される価値、ひいてはその変容と連動 する詩的言語の範囲の交渉過程を扱い損ねている。この課題解決のためには、解釈共同体 に代え「語用共同体」を基盤とし、指標的価値に基づき差異化された言語範疇、つまり 「レジスター」(Agha, 2003, 2005, 2007; Silverstein, 2023)の概念を導入する必要がある。 そこで本研究は、詩的言語の範疇拡大に伴う社会文化的意味の変容と折衝の現れを、日 常言語のレジスターを顕著に採用した文体で知られる歌人・伊舎堂仁による新人賞候補 作・講評と、改稿後の歌集評の分析を通して解明する。このようなメタ語用的な分析により、新たな様式の確立に制度的な経路と反復的な通用が不可分であると示す。
特別講演会(15時15分~17時15分)
講師:猿橋順子先生(青山学院大学)
題目:「実践のための言語政策:言語政策教育の方法と課題」
要旨:
異なる言語背景をもつ人々が協力しあいながら暮らす社会では、言語使用面の調整、すなわち言語政策が求められる。言語政策というと「国や政府が定めるもの」と受けとめられがちだが、言語政策研究では「他者の言語使用や言語への態度に影響を及ぼすはたらきかけ」と定義づけ、その主体と範疇を拡張させている。今回は、筆者が担当する学部授業において、言語政策を身近なことと認識するための教育活動から事例報告を行う。言語オートバイオグラフィー、言語マネジメント、ハウゲンモデルなど、言語政策研究で提案された手法や理論枠組みを援用し、言語政策について学びながら、それを各人の日常にも見出す言語政策教育活動の過程、意義、課題を議論する。
参考文献:
猿橋順子(2024)『社会言語学の副読本:異なる言語話者達でつくるコミュニティ』三元社
※参加される方は、以下のフォームにて、必ず事前申込をお願いいたします。
https://forms.gle/tprhnzTaY2JDMAvb9
締め切り:12月18日(木)
会場・Zoomミーティング情報等の詳細は、申し込みされた方にメールでお届けいたします。
【2025年度 第1回特別講演会】
講師:町田章先生(日本大学)
題目:「認知言語学から見た生成AI」
日時:2025年6月8日(日)14時~16時
場所:桜美林大学プラネット淵野辺キャンパス(※オンライン同時配信)
※参加される方は、以下のフォームにて、必ず事前申込をお願いいたします。
会場・Zoomミーティング情報等の詳細は、申し込みされた方にメールでお届けいたします。
https://forms.office.com/r/T3123PDhuN
参加費:無料
要旨:
生成AIを用いたChatGPTなどのチャトボットは人間の言語能力をどれだけ反映しているのか?生成AIは「意味」を学習できているのか?生成AIは言語生得論争にどのような影響を及ぼすのか?生成AIは今後の言語研究の在り方をどう変えうるのか?本発表では,これらの問いに対して一認知言語学者の立場から考察を加える。その際,可能な限り,経験基盤主義,身体性,サピアウォーフの仮説,間主観性,普遍文法,言語変化,文法化などのテーマにも言及しながら,生成AIがもたらす言語学へのインパクトについて一緒に考えてみたい。
2024年度第2回特別講演会
講師: 井上亜依先生(東洋大学)
題目: 「効果的な言語習得の一提案ーフレーズ研究と辞書学の視点から」
日時: 2024年12月15日(日)14時~16時
場所: 立教大学池袋キャンパス(※オンライン同時配信)
※参加される方は、以下のフォームにて、必ず事前申込をお願いいたします。
会場・Zoomミーティング情報等の詳細は、申し込みされた方にメールでお届けいたします。
https://forms.office.com/r/QMLsyK8f3Q
内容:
日本人英語学習者の英語力は、決して高いとは言えない。このような状況を改善し、英語が使える日本人養成のために様々な方法論が提唱されている。
本講演は、言語を習得する方法の1つとして、フレーズ研究と辞書学の融合を提案する。具体的には、(1)フレーズ研究の成り立ちと歴史、(2)100年以上前から辞書学の中で実践されていたフレーズ研究の紹介と現代までの変遷、(3)現代の日本人英語学習者の状態に即したフレーズ研究と辞書学の融合、の3点を詳述する。
2024年度第1回特別講演会
講師: 篠原和子先生
題目: 「時空間の概念構造研究を振り返る」
日時: 2024年5月19日(日)14時~16時
場所: 立教大学池袋キャンパス
【アクセスマップ】
https://www.rikkyo.ac.jp/access/ikebukuro/qo9edr00000001gl-att/img-accessmap_ike_new.pdf
【キャンパスマップ】
https://www.rikkyo.ac.jp/access/ikebukuro/qo9edr00000001gl-att/img-campusmap_ike.pdf
2023年度第2回特別講演会
講師: 藤井洋子先生(日本女子大学)
題目: 「比較言語文化研究から新たな語用論の展開へ」
日時: 2024年1月27日(土)14時~16時
場所: 桜美林大学新宿キャンパス J306教室 (※オンライン同時配信)
参加費:無料
【アクセスマップ】
https://www.obirin.ac.jp/access/shinjuku/
https://www.obirin.ac.jp/shinjuku-campus/campus_details.html
会場参加・オンライン参加の別を問わず、以下のフォームにて事前申込をお願いいたします。
Zoomミーティング情報等の詳細は、申し込みされた方にメールでお届けいたします。
要旨:
本発表は、比較言語文化研究のために収集した日本語・英語・韓国語・タイ語・中国語・ドイツ語の課題達成談話をデータとし、それぞれの言語使用とコミュニケーション・スタイルの分析を行った結果をもとに、既存の語用論理論を補完することのできる新たな語用論理論を提案するものです。
藤井(2012, 2014, 2018 他)で行ったこれらのデータ分析の結果では、英語・中国語・ドイツ語で共通の言語使用とコミュニケーション・スタイルの特徴が見られ、一方で、日本語・韓国語・タイ語に共通の特徴が見られました。そこで、特に日本語・韓国語・タイ語などの言語文化の言語使用やコミュニケーション・スタイルを説明する語用論理論を提案し、その有効性について、さらに日本語の事例などをもとに考えていきます。
2023年度第1回特別講演会
大谷直輝先生(東京外国語大学)を迎え、以下の通り開催いたします。
講師: 大谷直輝先生(東京外国語大学)
題目: 「認知言語学と談話機能言語学の接点:両言語学を用法基盤モデルに位置付ける」
日時: 2023年10月14日(土)14時~16時
場所: 立教大学池袋キャンパス 4号館3階4341教室(※オンライン同時配信)オンライン開催に変更となりました
【アクセスマップ】
https://www.rikkyo.ac.jp/access/ikebukuro/qo9edr00000001gl-att/img-accessmap_ike_new.pdf
【キャンパスマップ】
https://www.rikkyo.ac.jp/access/ikebukuro/qo9edr00000001gl-att/img-campusmap_ike.pdf
※参加される方は、以下のフォームにて、必ず事前申込をお願いいたします。Zoomミーティング情報等の詳細は、申し込みされた方にメールでお届けいたします。
要旨:
本発表の目的は以下の二点である。一つ目は,1) 用法基盤モデル(the usage-based model)の基本的な考え方と,2)用法基盤モデルから想定される言語知識のありようを紹介することである。二つ目は,用法基盤モデルを採用する2つの学派(認知言語学と談話機能言語学)が,研究交流が少ない現状とは対照的に,実質的に,共通の言語観を持つ学問であることを示すことである。
第一の目的に関しては,用法基盤モデルと,言語知識は文法と語彙に二分されると仮定する辞書・文法モデルとの比較を通して,用法基盤モデルが想定する様々な概念(ボトムアップの言語習得,語彙と文法の連続性,意味論と語用論の分離は不可,言語使用の中で揺れ動く言語知識,など)の妥当性を検討していく。
第二の目的に関しては,認知言語学と談話機能言語学が持つ共通点と相違点に注目しながら,用法基盤モデルという大きな枠組みにおいて,両言語学が相補的に位置づけられる可能性を検討する。
本発表を通して,両言語学の学際的な視点が,発話された言語を実証的に分析する際に有益かつ不可欠であることを示す。なお,本発表は,『認知言語学と談話機能言語学の有機的接点:用法基盤モデルに基づく新展開』(ひつじ書房)の1章と2章に基づいている。
<参考文献>
中山俊秀・大谷直輝(2020)『認知言語学と談話機能言語学の有機的接点:用法基盤モデルに基づく新展開』ひつじ書房(1章と2章)