第21回 地理情報システム学会学術研究発表大会 特別セッション
近年インターネットの世界が拡大することによってオープンソースソフトウェアの開発と普及が加速しています。地理空間情報に関するオープンソースソフトウェア(FOSS4G)に関しても種類の増大や機能の向上が顕著です。これらのFOSS4Gは政府や企業での利用から研究機関や個人での利用まで様々なスケールと目的で使われています。開発や利用促進については国際的なコミュニティによって進められていることが多いです。ただし、これらコミュニティに日本からの参加者は少なく国内でのGIS利用とFOSS4Gの発展の間には少しギャップがあるようです。 QuantumGISについては近年プログラムやドキュメントの日本語が行われたせいか国内での利用例も急激に増加しています。ユーザが増加すればそのソフトウエアの利用方法や問題点の共有も進み、結果としてツールが利用しやすくなるといえます。 本セッションではいくつかのFOSS4Gツールや関連する環境のローカライズ状況の事例、方法、課題の発表を行い、それらツールの利用環境を向上させていくための情報交流をパネルディスカッションで行いたい。
【開催日時】
2012/10/13 10時50分-12時30分
【場所】
広島修道大学 会場B
【司会】
岩崎亘典 (FOSS4G分科会 OSGeo.JP 農業環境技術研究所)
【発表】
○QuantumGIS日本語化の現状と課題
嘉山陽一 (朝日航洋株式会社)
QuantumGISは高機能のデスクトップGISです。ここ数年QuantumGISの開発リポジトリにコントリビュートする形でメニューやマニュアルの日本語リソースを作成してきました。その結果近年国内の様々な場所でQuantumGISが利用されるようになってきました。このことでオープンソースソフトウェアのローカライズは国内普及のためには重要な課題であることが明らかになりました。本発表ではQuantumGISローカライズの経過、手法の報告と現状の問題点、課題の提起を行います。発表資料
○SAGAの日本語ローカライズについて
平松孝晋(アジア航測株式会社)
SAGA GISはドイツの研究者が中心となって開発を進めているオープンソースのGISです。豊富なラスタ解析アルゴリズムや、RやQGISとの連携機能を持つ、 極めて強力なソフトウェアですが、現時点ではヘルプやマニュアル等の情報が少なく、国内での普及はそれほど進んでいません。しかし、ソフト ウェア自体には、柔軟なローカライズの仕組みが用意されており、ユーザは自由にメニュー等の言語を変更することが可能です。本発表では、 SAGA GISの概要と翻訳事例の紹介とともに、FOSS4Gの翻訳における共通の問題や、用語法に関する話題を取り上げます。
○eコミマップのインターナショナライズとローカライズ
臼田裕一郎 ((独)防災科学技術研究所)
(独)防災科学技術研究所では、共助での防災活動を支援するオンライン地図ツールとして「eコミマップ」を開発し、オープンソースで公開している。これまでは日本国内での活用を対象としていたため、日本語のみとしていたが、国外での活用や外国人向けサイトの構築への要望も多くあることから、今年度よりインターナショナライズに着手している。インターナショナライズにおいては、単に英語版を作るのではなく、使用する言語のリソースファイル(表示項目毎に使用したい言語での名称を記載したもの)を作成しインポートすることで、他の言語での画面表示を容易に行えるようにしている。本セッションでは、その概要を報告するとともに、オープンソースソフトウェアのインターナショナライズとローカライズの課題について議論したい。
【eコミマップ: http://ecom-plat.jp/ 】
○FOSS4G製品タイプによるパッケージローカライズケーススタディ
林博文(応用技術株式会社)
OSGeoが支援するプロダクト製品には統合インストーラからAndroidアプリまで様々な種類があります。
OSGeo4Wインストーラ、デスクトップ系アプリGRASS-GIS、Andorid系アプリgvSIG mini,GeoPaparazzi、WebGIS系MapGuideOpenSourceを例に、これらの製品を日本語ローカライズする際に生じた問題点等を紹介し、カスタマイズやフィードバックについて考えましょう。
○FOSS4Gの普及・活用に向けたOSGeo-Liveの開発とローカライズ
瀬戸寿一 (立命館大学)
FOSS4Gの普及を目的として、OSGeo-LiveというLiveDVDシステムが存在する.これは,OSGeo財団の支援する数十種類以上のツールやライブラリをLiveDVDとして収録することで,ユーザーは特別なセットアップの必要なしに試用することが可能である.本発表では,この開発過程と国際化に対応するためのローカライズを取り上げ,FOSS4Gへの貢献に関する多様な側面について議論したい.