1 近況報告

森林は陸上の中で最も多くのバイオマスを蓄積し、複雑な構造を持ち、多くの生物の住処となっている生態系です。人間が生態系に与えるインパクトによって、多くの生物が絶滅に瀕していますが、森林生態系においても、生物多様性の減少が懸念される状況にあります。

その一方で、生物多様性の基盤となる遺伝的多様性を解析するための手法は、著しい技術革新が進行中です。例えばDNA塩基配列解読に関しては、半導体技術におけるムーアの法則を超える勢いで、効率化が進んでいます。

私達の研究室では、このような遺伝解析技術を活用して、生物多様性の実態を理解し、より適切な保全策を構築しようとしています。

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第64回日本生態学会大会で安藤温子さんが第5回日本生態学会奨励賞(鈴木賞)を受賞 (2017.3.17)
森林生物学研究室出身の安藤温子さん(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター)が、第5回日本生態学会奨励賞(鈴木賞)を受賞しました。タイトルは「海洋島に生息する絶滅危惧鳥類の生態解明:分子生物学的アプローチ」で、安藤さんが博士論文で行った小笠原諸島における絶滅危惧鳥類の解析内容が主な受賞理由となっています。受賞記念講演は早稲田大学の大隈講堂で行われました。

第64回日本生態学会大会で小村健人君と古田智博君が最優秀ポスター賞を受賞 (2017.3.16)

森林生物学研究室のポスター発表が2題、最優秀ポスター賞を受賞しました。受賞したのはM1の小村健人君とM2の古田智博君で、それぞれ、「動物繁殖・生活史分野」と「生態系管理分野」での最優秀賞でした。

小村健人(京大院・農)、安藤温子(国環研)、堀越和夫(NPO法人小笠原自然文化研究所),鈴木創(NPO法人小笠原自然文化研究所)、井鷺裕司(京大院・農)「繁殖海域を共有する海鳥は餌資源を分け合っているのか? ―糞のDNAから探る採食戦略―」

古田智博(京大院・農)、中濵直之(京大院・農)、鈴木節子(森林総合研究所)、高柳敦(京大院・農)、井鷺裕司(京大院・農)「過採食による下層植生衰退下でシカは何を食べているのか? ―DNAバーコーディングで明らかとなった高木種への依存性―」


タイに出張 (2015.12.15-18)
タイのカセサート大学と京都大学の研究交流シンポジウムに出席しました。15日は学内の委員会があったので夜行の飛行機で出発、タイには2泊しただけ(こういった類の出張ではよくあるパターン)でしたが、有意義なひとときでした。



西表島で調査 (2015.12.11-14)
希少植物の生育状況の確認と、保全のための遺伝解析試料採集のために西表島を訪れました。西表最高峰で調査することや、その他ディープな調査をする予定でしたが、雨で川が増水しているなどで、予定変更が重なった出張でした。今回の積み残しは、2016年3月に解消します!



ボゴール植物園から研究者来訪 (2015.12.1-10)
 環境研究総合推進費で行われているプロジェクト「アジア規模での生物多様性観測・評価・予測に関する総合研究」のサブプロジェクト「アジア産絶滅危惧植物の全個体ジェノタイピングによる保全」の一環としてボゴール植物園と共同研究を行っています。今年はインドネシア産希少植物の遺伝マーカーを作成しました。次世代シーケンサーを用いた一発勝負のスケジュールでしたが、うまく解析できました。

奄美大島で調査 (2115.11.21-24)
希少植物の生育状況の確認と、保全のための遺伝解析試料採集のために奄美大島を訪れました。



ニューカレドニアでサンプリングと研究集会 (2015.11.9-16)
今年も4WDを用いたサンプリングを行いました。確かに、このタイプの車でないとダメだったなと思えることも何度かありました。中日には現地の自然保護に関わっている人たちと公開の研究集会を行いました。TVや新聞社なども取材に訪れ、自然保護への関心が高いことを感じました。



大東島でサンプリング (2015.10.30-11.1)
沖縄本島の東340 kmに浮かぶ南北大東島を訪れました。那覇空港から北大東島まで飛行機で1時間ですが、南北大東島間は、飛行時間数分。定期商業飛行としては世界最短区間ではないでしょうか。



中国で野外調査と研究交流 (2015.911-17)
中国の浙江大学を訪れ、研究打ち合わせとセミナーを行いました。活発な質疑応答がありとても有意義なものでした。峨眉山で野外調査も行いました。日本と共通する属の植物を興味深く観察しました。どう見てもイワタバコ科にしか思えない植物が日本の水田地帯でお馴染みのムラサキサギゴケMazus属であったり、、ヒトが楽しみを感じる適度な差異です(違いすぎるとカオス、同じすぎると退屈)。



中国から共同研究者来訪 (2015.7.22-31)
二国間交流事業共同研究「日華植物区系における主要植物の系統・種分化をもたらす時空メカニズムの解明」の一環で中国浙江大学から邱英雄教授が来日されました。日本側の研究者とともに、紀伊半島、九州、北海道で解析対象植物の採集を行いました。京都大学ではセミナーもお願いしました。



小笠原で現地調査 (2015.6.5-11)
生育域外保全集団の網羅的遺伝解析によって生物多様性ホットスポットを保全する研究を、小笠原を対象に始めました。希少種の実態を知るために生育地を訪れました。


ニューカレドニアから共同研究者来訪 (2015.5.25-29)

昨年度より科学研究費補助金で行っている研究の一環としてニューカレドニアよりGildas Gatebleさんを招き、解析や研究打ち合わせを行いました。また、セミナーもお願いしました。世界中の誰とでもメールで連絡はできるとはいえ、直接会って話すことにはかないません。大変有意義な打合せと解析ができました。

第126日本森林学会および森林立地学会現地検討会に参加 (2015.3.26-30)

第126回日本森林学会は北海道大学で行われました。キャンパス内には厚い残雪ものこっていて、日本の多様な気候条件を感じました。引き続いて行われた森林立地学会現地検討会では有名な黒松内のブナ北限地を訪ねました。分布最北端なので、息も絶え絶え育っているのかと予想していたのですが、実に立派に育っていました。間氷期の今、ブナは分布を北に拡大しつつあるのですが、生理的な北限地まで到達していないため、そのような活発な成育が可能であるようです。



第62回日本生態学会大会@鹿児島大学に参加 (2015.3.18-22)

生態学会大会は新たな知見や人にめぐり会うことができる素晴らしいものです。朝から夜までプログラムが組まれていて飽きることがありません。毎年の事ながら、少し長くて疲れるのですが、充実した学会でした。大会運営の皆さん、ありがとうございました。(写真は学会には関係ありませんが、鹿児島大学キャンパス内のノキシノブ。いつもシダ類の生育の良さに感心します。)


植物分類学会第14回大会@福島大学に参加 (2015.3.6-7)

生態学会のような多数の参加者がある大会と違って、植物分類学会は全ての講演が一つの講義室で行われます。これが素晴らしい。参加者は少ないものの、講演内容はどれも興味を持って聞けるものばかりで、得られるものも多い学会でした。

ブラジル・リオデジャネイロ植物園で生物保全研究会(2015.2.6)

リオデジャネイロ植物園は1808年に設立され、現在はブラジルの国定歴史芸術遺産(Patrimônio Histórico e Artístico Nacional)として保護されるとともに、2012年に指定されたユネスコの世界遺産「リオデジャネイロ: 山と海との間のカリオカの景観群」にも含まれています。歴史、自然、植物コレクションと魅力に富んだ植物園ですが、それに加えて素晴らしかったのが、研究会に参加した研究員の方々でした。生物保全に熱意を持って取り組んでいるのが窺い知れる会議でした。


ブラジルで植物保全のワークショップ(2015.2.3-5)

千葉大学の梶田さんが企画されたブラジルとの共同ワークショップ Contribution of Genetics to Plant Conservationにmentorとして参加しました。ブラジルには、ほぼ12時間の長い飛行を2回乗り継いでやっと到着するのですが、期待していた以上に素晴らしいワークショップでした。自然も興味深いものでしたが、ブラジルの生物保全研究の質や熱意に感動しました。


安藤温子さんが日本森林学会学生奨励賞を受賞(2014.12.19)

対象論文は次のとおりです。Ando H, Setsuko S, Horikoshi K, Suzuki H, Umehara S, Inoue-Murayama M, Isagi Y (2013) Diet analysis by next-generation sequencing indicates the frequent consumption of introduced plants by the critically endangered red-headed wood pigeon (Columba janthina nitens) in oceanic island habitats. Ecology and Evolution 3: 4057-4069.

中浜直之君が日本昆虫学会近畿支部2014年度大会で若手発表賞を受賞(2014.12.14)

対象となった発表は、中浜直之・内田圭・丑丸敦史・井鷺裕司「絶滅危惧種ウスイロヒョウモンモドキの遺伝的多様性の過去と今?標本の解析から明らかになったこと?」です。

マレーシアのサバ州で研究打合せ(2014.12.6-12.9)

熱帯多雨林の生物多様性を支えるフタバガキ科の保全研究打合せのために、マレーシアサバ州コタキナバル近辺の森林を訪れました。


奄美大島を訪問(2014.11.22-11.25)

ubiquitous genotypingプロジェクトを行っていた頃から訪問してみたかった奄美大島を訪れました。渓畔林研究会で鹿児島大学の川西さんにお世話になりました。期待していた以上に魅力的な場所でした。遺伝解析でより良く保全できそうな種もありました。


博士論文公聴会(2014.11.20)

菊地賢(森林総合研究所)さんの博士論文「生育地の分断化が森林植物の繁殖様式および遺伝的多様性に及ぼす影響」の公聴会が行われました。

インドネシア・ボゴール植物園と共同解析(2014.11.5-14)

インドネシアのボゴール植物園から共同研究の一環でSiti AriatiさんとRosniati Rsinaさんが研究室を訪れました。絶滅危惧種のフタバガキ科樹木を対象に遺伝解析を行いました。

タイを訪問(2014.10.3-10)

生物解析を行うための事務手続きでタイのバンコクを訪れました。いい機会なのでチェンマイ、ドイ・インタノンの森林も訪問しました。京都大学の神崎さんたちによって長らく管理・維持されてきた調査サイトです。林床から林冠まで、精力的な研究が行われていました。



ニューカレドニアで試料採集(2014.9.21-28)

現地の共同研究者Gildas Gatebleさんたちの協力を得てニューカレドニアの南端から北端まで採集旅行を行いました。朝から日没まで,毎日よく働き、素晴らしいサンプリングができました。


博士論文公聴会(2014.9.8)

安藤温子さんの博士論文「Conservation biology of the critically endangered red-headed wood pigeon Columba janthina nitens in disturbed oceanic island habitats」の公聴会が行われました。

三瓶山、秋吉台で試料採集(2014.9.9-11)

を行いました。島根県立三瓶自然館の井上雅仁さんや秋吉台科学博物館の太田陽子さんたちにお世話になりました。予定通りの充実した採集ができました。


ニューカレドニアで研究打ち合わせとフィールド調査(2014.7.13-17)

ニューカレドニアは植物の3分の2以上の種が固有種、属レベルでも15%が固有という驚くべき島です。世界中の多くの生態系と同様に、ここにおいても生物多様性は危機にさらされています。危機をもたらしている要因の一つは、日本にも大量に輸出されているニッケル採掘のための鉱業です。ニューカレドニアにおける種分化を理解することと、適切な生物保全を行うための遺伝解析プロジェクトを開始しました。今回は、現地の研究者スタッフとの研究打ち合わせと解析対象種の生育状況についてフィールド調査を行いました。特に研究打ち合わせでは、想定していた以上の成果が得られました。写真は、今回フィールドで出会った最も印象的な植物の一つ、Oxera rugosa。


伊吹山の麓で調査(2014.6.30)

草原の植物の歴史的動態を知ることで森林の管理を考えるという研究プロジェクト(秋植物のゲノミクスで迫る日本の草地の興亡史―林業復活の優先地域の特定―、研究代表者:山浦悠一さん)の一環として、伊吹山を訪れてきました。


里山でサンプリング(2014.6.14)

適度の人為インパクトが定常的に加わることで維持されている里山。生物多様性の魅力を堪能してきました。こういった場所を歩いていると、あっという間に時間がたち、日が暮れてゆきます。


東京大学小石川植物園(2014.6.12)

東京大学小石川植物園で研究打ち合わせをしました。植物が丁寧に栽培されていることに感銘を受けます。


東北大で遺伝解析(2014.6.4-6.6)

絶滅危惧種の遺伝解析のために東北大学を訪れました。緑あふれる爽やかな場所でした。共同研究者の陶山さんと森林生物学研究室で2009年に学位取得した松木君にお世話になりました。写真は訪れた次の週から全研究室が引越する新棟。


ハワイ大学で共同研究の打合せ(2014.5.27)

典型的な海洋島(一度も大陸とつながったことのない島)であるハワイでは、著しい適応放散など興味深い生物進化を解析することができます。ハワイ大学ヒロ校のElizabeth Stacy博士と研究打ち合わせを行いました。近いうちに興味深い研究成果が得られるでしょう!



カッコソウの生育地を訪れました (2014.5.21-22)

カッコソウは群馬県のごく限られた地域のみに生育するサクラソウ科の絶滅危惧植物です。地元や研究所で保全に関わっておられる方々に生育地をご案内いただきました。遺伝解析によって、より適切な保全に貢献できればと考えています。



つくば蘭展のシンポジウムで講演を行いました (2014.3.21)

遺伝情報を活用した生物保全研究について紹介をしましたが、とても興味深い講演をたくさん聴くことができ、有意義でした。

「ランの未利用遺伝資源の保全と開発」
三吉一光(千葉大学)「これからの育種」
立澤文見(岩手大学)「花色素の多様性の利用」
大久保直美(花き研究所)「花の香気成分の多様性とその効用」
高宮知子(日本大学)「新規薬用植物資源の探索」
三位正洋(千葉大学)「有用遺伝子の探索とモデル植物開発」
遊川知久(国立科学博物館)「系統保存施設としての植物園の現状と展望」
井鷺裕司(京都大学)「遺伝的多様性の評価と保全への利用」
山本伸一(農業生物資源研究所)「種子と組織の長期保存」
谷亀高広(北海道大学)「菌根菌の保存と利用」



広島国際会議場で第61回日本生態学会大会(2014.3.14-18)

いつものことながら、とても刺激に満ちた数日間でした。私が関係している研究発表では次の3点がポスター賞を受賞しました。
●中浜直之(京都大院・農)、内田圭、丑丸敦史(神戸大院・人間発達環境)、井鷺裕司(京都大院・農):夏季の草刈が草原生希少草本スズサイコの繁殖成功と遺伝的多様性を低下させる
●辻井悠希、小野田雄介(京大・農・森林生態)、伊津野彩子、井鷺裕司(京大・農・森林生物)、北山兼弘(京大・農・森林生態):ハワイフトモモの葉形質多型における生理的基盤-複数の環境因子に対するラミナとトライコームの個別的応答-
●栄村奈緒子(立教大理)、酒井美由紀、傳田哲郎(琉大理)、安藤温子、井鷺裕司(京大農)、上田恵介(立教大理):海流だけでなく、鳥による散布能力も異なるクサトベラの果実二型




スイス連邦工科大学で国際シンポジウム「Swiss-Kyoto Symposium」(2013.11.20 - 11.24)

現地には実質2日いただけでしたが、有意義な分科会でした。近い将来の新たな共同研究者とも巡り会うことができました。

詳しくはこちら。 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2013_1/131122_1.htm




「生態学者が書いたDNAの本」が出版されます(2013.9.26)

DNA情報は様々な研究に活用されています。今や、単一あるいは少数の遺伝子座だけでなく、ゲノム全体にわたる網羅的比較解析を、種間、あるいは種 内の異なった表現型を示す個体間で行うことや、環境中に存在する多種多様な遺伝子の一括解読、多数の遺伝子発現解析なども行われるようになりました。解析 技術の進歩がこのまま続いたとして、10年後には一体どのような状況になっているのか、予想することすら困難です。

DNA情報の活用に関して、これまであまりなじみのなかった方でも、本書で述べられている比較的単純な事項を理解するだけで、そのような研究アプローチに興味と親しみがわくような本を目指しました。

井鷺裕司・陶山佳久著「生態学者が書いたDNAの本 メンデルの法則から遺伝情報の読み方まで」、文一総合出版、2013年10月20日発行(書店にはもう少し早く並ぶかも?)



ニューカレドニアで試料採集調査(2013.9.6 - 9.15)

オーストラリアで継続調査している樹木分類群の解析の外群として、ニューカレドニアに生育している近縁種を採集しました。

日本とオーストラリアからの7名の専門家と現地のエキスパートというメンバーで各地を訪れました。目的としていた分類群の他に、現存する最も祖先的な被子植物アンボレラなど、ニューカレドニア独自の植物を多く目にすることができました。

モザイク状に構成された複雑な土壌条件(超塩基性のものが多く、ニューカレドニアの主要産業であるニッケル鉱業を支えている)や、局所的に変化する 気象条件によって、micro-endemicという、生育範囲がきわめて限定された固有種が多いのも印象的でした。そして、そのような進化の展示場とも いえる山地がニッケル原石採掘のために崩されていました。現地の研究者とも協力して、遺伝解析で多様性保全に貢献したいという思いを強く持ちました。

写真は島東部のrain forest。海洋島によくあるように、東部と西部で降水量が著しく異なっています。「生態学者が書いたDNAの本」の裏トビラに使うために森林総合研究所(当時)の津村さんに撮っていただきました。



ハワイ島で調査(2013.6.7 - 6.17)

ハワイで調査というと、なんだかうらやましそうな顔をされます。帰りの空港の事務官もそんな顔で、「海の中に生えている樹木を調べていたのですか?」という訳のわからないことを聞かれました。ハワイ=海なんでしょうね。

しかし、この調査で海の近くに行ったのは、最初の移動日のだけ。朝から夕方まで海は見えない山地で調査、夕方、宿泊施設に戻って夜の12時頃に寝るまで測定、という毎日でした。

現存する最も典型的な海洋島(太平洋という世界一大きな海の真ん中にある)における生物進化の実態を感じることのできた充実した日々でした。



インドネシアボゴール植物園と研究協力協定を結びました(2013.5.21)

ボゴール植物園は、今年、創立196年を迎える歴史ある植物園です。東南アジアの植物多様性研究において重要な位置づけにある植物園です。2013 年5月21日に、研究協力協定締結のために、ボゴール植物園で行われた式典に出席してきました。この日は,ちょうど開園196周年記念のイベントがあり特 設会場に多くの人が集まっていました。

また、5月22日には,ボゴール植物園の研究担当者と実務的な打ち合わせを行いました。これから、ボゴール植物園と京都大学大学院農学研究科の研究協力をとおして、熱帯地域の生物多様性保全にも貢献したいと思っています。



第124回日本森林学会大会が岩手大学で行われました(2013.3.25-28)

今年度学位を取得した阪口翔太君が日本森林学会学生奨励賞を受賞しました。

Sakaguchi S, Takeuchi Y, Yamasaki M, Sakurai S, Isagi Y (2011) Lineage admixture during postglacial range expansion is responsible for the increased gene diversity of Kalopanax septemlobus in a recently colonised territory. Heredity 107: 338-348.



日本生態学会第60回大会が静岡県コンベンションアーツセンター(グランシップ静岡)で行われました(2013.3.6-8)

森林生物学研究室からも多くの研究成果が発表されました。ポスター発表が2件受賞しました。

【最優秀賞】 安藤温子(京大院・農)、 鈴木節子(森林総研)、堀越和夫(小笠原自然文化研究所)、鈴木創(小笠原自然文化研究所)、梅原祥子(小笠原自然文化研究所)、村山美穂(京大・野生動 物研究センター)、井鷺裕司(京大院・農)「DNAバーコーディングを用いた糞分析に基づく、絶滅危惧種アカガシラカラスバトの食物構成とその季節変化の 解明」

【優秀賞】 原澤翔太(京大院・農)、正木隆(森林総研)、滝久智(森林総研)、永光輝義(森林総研)、石金卓也(農大)、村尾未奈(農大院)、前田孝介(農大)、井鷺裕司(京大院・農)「人工林によって断片化された広葉樹林の鳥類多様性 ~ランドスケープ構造と液果生産量の効果~」



キナバル山を訪れました(2012.2.26 - 3.3)

4000メートルを超える岩山を1泊2日で登るのも素晴らしい体験でしたが、山頂へ至るまでの森林帯で目にする実に多様な生物も驚異的でした。



本が出版されました(2012.12.12)

エコゲノミクス―遺伝子からみた適応―

日本生態学会 編・森長 真一・工藤 洋担当編集委員

シリーズ 現代の生態学 全11巻 【7】巻

共立出版ISBN978-4-320-05740-1

A5版320ページ、3,570円

(共立出版HPより)  エコゲノミクスとは、生態学的に興味深い現象をゲノムレベルで遺伝的に解剖していく最新の研究分野である。ゲノム情報は生態学に何をもたらしたのか。ゲ ノムとは生物のもつ遺伝情報全体を示し、すべての生物はゲノムと環境の影響により表現型を発現する。これまで、生態学ではその表現型に基づく生物と環境あ るいは生物間相互作用の解明を、ゲノム学では生物の全ゲノム解読を主な目標として、両者が交わることはなかった。しかしながら近年の分子生物学の発展は、 様々な生物におけるゲノム情報の解明を可能にし、エコゲノミクスが生態学の主要分野の1つとなった。  本書では、遺伝子解析からの適応研究に焦点を絞り、今もなお発展し続けるエコゲノミクスの全体像を概観することを目的に編纂した。I部では遺伝的変異と 適応研究のこれまでについて、II部では適応遺伝子の探索法について、III部では適応遺伝子の機能について、IV部では適応遺伝子の進化について、各分 野の第一線で活躍する研究者によりわかりやすくまとめられている。本書は、これからの生態学における新たな指針となる一冊である。

 私は、「第2章 遺伝的変異と空間的遺伝構造」を担当しました。



本が出版されました(2012.12.11)

森林遺伝育種学 (井出雄二・白石 進 編)

A5判312頁 定価5,040円 ISBN978-4-8300-4124-2

森林遺伝と林木育種の重要性、森林の遺伝的管理、遺伝学の基本、天然林の遺伝的変異、林木育種などについて、オールカラーの美しく分かりやすい紙面で記述されています。

私は、「第3章 天然林の遺伝的多様性 3. 集団内の遺伝的動態」を担当しました。



2001年からオーストラリアで行っていた共同研究の成果が、NatureとScienceほか色々なメディアで紹介されました(2012.3.26)

オーストラリアの大部分は乾燥した地域で占められていますが、そのほぼ中心にPalm Valleyという美しい場所があります。名前の通り、ここには乾燥地の中に流れる小川に沿ってビロウ属のヤシLivistona mariaeが生育しています。小川といっても、大きな岩盤の上を流れているところが多く、4WDで訪ねたサンプリングは大変印象的なものでした。

ヤシは本来、湿潤高温の場所に生育すると考えられますが、Palm Valleyの近辺にはLivistona属が生育できるような場所はなく、どうしてこの場所にLivistona mariaeが隔離分布しているのか、謎のままでした。最も一般的に信じられていた、そして、最も魅力的な仮説が、Linistona mariaeがゴンドアナ大陸が存在していた頃の植生の生き残りというものです。つまり、湿潤であった頃に生育していたヤシが、オーストラリア大陸の乾燥 化と共に分布を縮小し、現在、palm valleyに孤立し生存しているという話です。

現在生育している生物個体に保持されている遺伝的特徴から、集団の歴史、由来、個体数変動が推定できるようになりました。

Palm valleyのLivistona mariaeとオーストラリア中・北部に点在するオアシスや谷部に生育する近縁種のLivistona rigidaを対象に遺伝解析した結果、Palm valleyに生育するヤシ集団はゴンドアナ大陸の生き残りといったような古いものではなく、数万年前にやって来たものであることが明らかになりました。 当時すでに北部のヤシ生育地とPalm valleyの間にはヤシの生育適地は無かったと考えられています。いったいどのようにして移動してきたのでしょうか。最も可能性の高いのが、人為的なも の、つまり、数万年前にオーストラリア大陸にやって来たアボリジニによる移植です。

これらの解析は、 Kondo T, Crisp MD, Linde C, Bowman DMJS, Kawamura K, Kaneko S, Isagi Y, Not an ancient relic: the endemic Livistona palms of arid central Australia could have been introduced by humans. Proceedings of the Royal Society B (in press). に詳しく述べられています。


この論文に対する反響は大きく、すでに以下のメディアで取り上げられています。第一著者は日本人の近藤俊明博士(広島大学)なのに、日本のメディアに取り上げられていないのが残念ですが。(20120509追記:2012年4月26日の朝日新聞でも取り上げられました)

1. Nature: http://www.nature.com/nature/journal/v483/n7389/full/483248a.html

2. Science: http://news.sciencemag.org/sciencenow/2012/03/ancient-palm-not-so-ancient-afte.html?ref=hp

3. PHYSORG (UK): http://www.physorg.com/news/2012-03-genetic-central-australian-palm-trees.html

4. ABC Science (Australia) http://www.abc.net.au/science/articles/2012/03/07/3447620.htm

5. ABC News (Australia) http://www.abc.net.au/worldtoday/content/2012/s3447749.htm

6. COSMOS (Australia): http://www.cosmosmagazine.com/news/5382/australian-palms-may-have-migrated-with-aborigines

7. SPEIGEL (Germany): http://www.spiegel.de/wissenschaft/natur/0,1518,819944,00.html

8. Spektrum.de (Germany): http://www.spektrum.de/alias/botanik/aborigines-verschleppten-palmen-ins-outback/1144579

9. WELT online (Germany) http://www.welt.de/wissenschaft/umwelt/article13905873/Ureinwohner-koennten-Palmensamen-vermehrt-haben.html

10. dehir (Hungary) http://www.dehir.hu/bulvar/kiderult-az-ausztral-maganyos-palmak-titka/2012/03/12/

11. INDEX (Hungary) http://index.hu/tudomany/2012/03/12/megfejtettek_a_maganyos_palmak_titkat/

12. HirPerec? (Hungary) http://hirperec.hu/index.php?contentId=11347

13. VJM (Hungary) http://www.vjm.hu/tudor/megfejtettek-a-titkot/374/

14. 100DNI (Slovakia) http://stodni.sk/australien-genanalyse-luftet-geheimnis-der-einsamen-palmen/


本が出版されました(2012.3.22)

宮下直 ・井鷺裕司 ・千葉聡 著

「生物多様性と生態学 ─遺伝子・種・生態系─」

朝倉書店 A5/184ページ/2012年02月20日 ISBN978-4-254-17150-1 C3045 定価2,940円(税込)

生物多様性を構成する3つのレベル、遺伝子、種、生態系、をわかりやすく解説したものです。幸いなことに好評で、既に増刷が決定したようです。

これは、書店に走るしかないでしょう。




本が出版されました(2012.3.22)

もう一つ

津村義彦・陶山佳久編

「森の分子生態学2」

文一総合出版 414ページ/2012年03月31日

10年前に出版されたベストセラー(?!)「森の分子生態学」の続編です。全面書き換えられています。すばらしい内容だと思います。しばらくは、森に限らず、分子マーカーを用いた生態研究の座右の書となるでしょう。私は、「絶滅危惧種の分子保全遺伝学」を担当しました。



第59回日本生態学会大会(龍谷大学)が終了しました(2012.3.22)

ポスターはどれも力作でした。今年の大会は国際大会ということもあり、大半のポスターが英語でしたが、展示されていたポスターをそのままそっくり、どこかの国で行われている大会に持ち込んでも遜色のないと思われるものでした。

2時間のコア時間の前半で、全体を急いで見回り(顔見知りがいても話し込むことなく(笑))、残りの1時間で、数個のポスター発表をじっくり聞くと いうことを3日間繰り返しました。心から感激するようなものも複数有り、実に有意義な時間でした。そういう、レベルの高いポスターの中で、森林生物学研究 室のポスターが4報もポスター賞を受賞しました。

Sakaguchi S (Kyoto Univ.), Qiu Y-X, Liu Y-H, Qi X-S (Zhejiang Univ., China), Kim S-H, Han J (Korea Forest Research Institute, South Korea), Takeuchi Y (Graduate Univ. of Advanced Studies), Worth RPJ, Yamasaki M (Kyoto Univ.), Sakurai S (Kyoto Prefectural Univ.), Isagi Y (Kyoto Univ.), Historical fragmentation and reconnection of East Asian temperate forests, inferred from range-wide phylogeography of a key canopy tree species, Kalopanax septemlobus.

Sakata Y, Ohgushi T, Ando Y, Isagi Y (Kyoto Univ.), Invasive herbivorous insects as selective agents to defensive traits of an exotic plant Solidago altissima.

Yokogawa M (Kyoto Univ.), Takahashi Y (WeNARC), Isagi Y (Kyoto Univ.), Can soil seed banks restore genetic diversity of critically endangered plants? : Genetic status of seed bank derived populations of Polemonium kiushianum.

Mizusawa L (Kyoto Univ.), Hasegawa M (Toho Univ.), Kaneko S, Isagi Y (Kyoto Univ.), Does the difference in reproductive system between the insular shrub Clerodendrum izuinsulare and widespread C. trichotomum influence the degree of inbreeding depression at the germination stage?


総会の光景


絶滅危惧種の保全研究が朝日新聞に紹介されました(2011.9.26)。



SpringerよりSingle-Pollen Genotypingが出版されました!


花粉一粒の遺伝子型解析の手法と生態学への応用がまとめられています。

amazonのほか、紀伊國屋書店、楽天、livedoor等々、様々なオンラインショップで購入できます。

一部のページをみることが出来るamazonの中身検索では、プリント版では白黒の写真もカラーになっていて、なかなかいい感じです。更に本家のSpringerのサイトではより多くのページが閲覧できます。カラーページはほとんどすべて見られます

http://www.springerlink.com/content/978-4-431-53900-1#section=808059&page=1

更に、Springerのサイトからは、pdf版を紙媒体の1/4の価格でダウンロードできるようです。美しいカラー写真付きで。これは、落とすしかないでしょう!

Y. Isagi, Kyoto University, Japan; Y. Suyama, Tohoku University, Miyagi, Japan (Eds.)

Single-Pollen Genotyping

Pollination is one of the most important processes in plant reproduction. It directly influences reproductive success and fitness and the genetic structure of the plant population. Methods exist to infer the pattern and distance of pollen dispersal, but direct observation of the movements of individual pollen grains during pollination is not feasible owing to their small size. Single-pollen genotyping is a novel technique for genotyping a single pollen grain. In this book, the principles, the experimental protocol, and several applications of this method in studies of plant ecology, reproductive biology, and evolutionary genetics have been described. More specifically, the information is useful for the analysis of linkage disequilibrium, intraspecific genetic variation, chromosome map- ping, and the origins of polyploidy. It is also essential for achieving sustainable and optimal crop yield and is vital to agriculture and forestry. Written by pioneer researchers, the book provides novel research approaches that are proving useful in a growing number of fields. This volume is intended to encourage new and continued applications of single-pollen genotyping among many disciplines in the future. ... more on http:// springer.com/978-4-431-53900-1

▶ Offers an introduction to a unique and novel method for detailed analysis of the reproductive process in plants ▶ Provides detailed description of the principle and method of single-pollen genotyping ▶ Presents interesting applications of the method in ecological studies on plants