発表者
題目
望月正哉
(日本大学文理学部)
上田紋佳
(日本心理学諸学会連合検定局)
行為文理解における心的シミュレーションは
常に起こっているのか?
読書する本のジャンルが言語力に及ぼす影響の検討:
小学生児童の図書貸し出し数による検討
第14回定例研究会
・ 日時:2014年12月6日(土)13:30~17:00
・ 場所:法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー11階 BT1100番教室
【参加予定の方は、下記まで事前連絡をお願いします】
森島泰則(国際基督教大学)
morishima@icu.ac.jp
・ プログラム
1)ケース・スタディ、2件(各ケース、話題提供30~40分、質疑応
答・討論50~60分)
2)懇親会(自由参加)
・ 参加費:無料(研究会終了後、親睦会を計画しています。こちらは実費ある
いは会費制とします。)
ケース・スタディ発表者と題目・要約
望月正哉氏(日本大学文理学部)
題目:行為文理解における心的シミュレーションは常に起こっているのか?
要約:
身体性認知に基づく言語理解の研究では、行為に関連する文から心的シミュレー
ションを通じて感覚運動情報が活性化されることが示されているが、それらの情
報が常に活性化されるかは議論となっている(Zwaan, 2014)。本研究では、異
なる課題文脈において、日常的な行為に関する文とともに遂行できない行為に関
する文を提示し、心的シミュレーションが起こるのか検討した。実験の結果、課
題により心的シミュレーションの生起には違いがみられたが、文の種類の影響は
明確でなかった。これらの結果をもとに、行為文理解における心的シミュレー
ションの生起条件や、心的シミュレーションが文を理解するために必須なもので
あるのかについて議論する。
上田紋佳氏(日本心理学諸学会連合検定局 研究員)
題目:読書する本のジャンルが言語力に及ぼす影響の検討:小学生児童の図書貸
し出し数による検討
要約:
児童期における読書が言語力を高めることが数多くの研究によって報告されてき
た(e.g., Echols, West, Stanovich, & Zehr, 1996; Mol & Bus, 2011)。しか
し、一口に読書といっても、フィクションを中心に読む場合と、ノンフィクショ
ンを中心に読む場合では、本を読む動機、本の内容、そして用いられる言葉な
ど、非常に多く面で異なる。したがって、読書が言語力に及ぼす影響は、フィク
ションを中心に読む児童とノンフィクションを中心に読む児童では異なってくる
と予想される。しかしながら、上記の問題については先行研究がほとんどないの
が実情である。そこで本研究では、小学生1~6年生を対象に、実際に図書室で借
りた本のジャンルの違いが言語力に及ぼす影響について検討した。言語力は、
Reading-Test読書力診断検査(福沢・平山, 2009)によって、読字力、語彙力、
文法力、文章理解力を測定した。結果として、低学年では、文章理解力はどの
ジャンルとも関連が見られなかったのに対して、読字力は絵本以外のジャンルに
よって有意に予測されることが示された。また、高学年では、フィクション(文
学)が全般的に言語力を予測した。つまり、学年によって、読む本のジャンルと
言語力の関係が変化することが示された。本研究の結果を踏まえ、言語力を高め
ることを目的とした児童への読書指導法について議論を行いたい。