『屋久島のアカウミガメ背甲上から得られた新属新種の貝形虫(甲殻類)、Chelonocytherois omutai』 (Tanaka & Hayashi 2019)
屋久島で産卵に上陸してくるアカウミガメに付着するフジツボを調査中、背中に生えている海藻類なども一緒に採集しています。
ウラシマタナイスの研究でサンプルをお渡しした北海道大学の田邊さんと角井さんが顕微鏡下でタナイスを探して海藻類をほぐしている際に貝形虫を発見し、
貝形虫の専門家である筆頭著者の田中隼人博士(葛西臨海水族園)に送ったところ、新属新種であるという判断をいただき、新種記載論文として公表することができました。
新属名の Chelonocytherois の Chelono- はギリシャ語でカメの~を意味するラテン語で、cytherois は この新種が属する Cytheroisinae亜科に由来しています。
種名の omutai はNPO法人屋久島うみがめ館を立ち上げ、長年屋久島でウミガメの調査・保護活動を続けてこられた大牟田一美さんの omuta に由来します(学名のルールで、人名に由来する場合は名前のあとに -i が付けられます)。
この研究は長年屋久島のウミガメ産卵調査を続けてこられたNPO法人屋久島うみがめ館および調査ボランティアのみなさまの協力を得て実施したものです。また、比較標本として、東京大学大気海洋研究所国際沿岸研究センター(岩手県大槌町)で捕獲されたアカウミガメから得られた海藻類も調査しました。本研究は、科学研究費助成事業(JP263700,JP16K21005)、生き物文化誌学会さくら基金の支援のもと、京都大学野生動物研究センターの共同利用・共同研究として、NPO 法人屋久島うみがめ館の協力を得ながら、ウミガメ捕獲等許可と特別地域内動物の捕獲許可を受けて実施されました。また、この研究成果は日本工営株式会社からプレスリリース(PDF直リンク)が公開され、建設工業新聞、日本経済新聞、財経新聞になど複数のメディアで取り上げていただきました。改めてここに感謝の意を表します。
Hayato Tanaka, Ryota Hayashi
Chelonocytherois omutai gen. et sp. nov. (Crustacea: Ostracoda) from the back of loggerhead sea turtle.
Zootaxa, 4624(4), 507-522. 2019.
Cited by 4 papers (at 2020/12/9):
Forel MB, Grădinaru E (2020) Rhaetian (Late Triassic) ostracods (Crustacea, Ostracoda) from the offshore prolongation of the North Dobrogean Orogen into the Romanian Black Sea shelf. European Journal of Taxonomy, 727, 1–83.
Hayashi R, Okanishi M (2019) The widely occurring brittlestar Ophiactis savignyi (Amphilepidida: Ophiactidae) as an epibiont on loggerhead sea turtle, Caretta caretta. Zootaxa, 4695(5), 497-500.
Tanaka H, Kondo Y, Ohtsuka S (2020) Pontopolycope orientalis sp. nov. (Crustacea: Ostracoda: Polycopidae), the first report of a living species of the genus from the Indo-Pacific region. Zoological Studies, 59, 13, doi:10.6620/ZS.2020.59-13.
Yoo H, Thi VAL, Karanovic I (2020) Two Paradoxostomatidae (Ostracoda) species from South Korea with a key to genera of the family. ZooKeys, 943, 21–39.