認知症

認知症はその記事が見られない日はないくらい注目されている疾患である。記憶障害、見当識障害(いつ、どこで何をしているのかわからない)、実行力や判断力が低下する中核症状とそれらが原因となって発生する幻覚、妄想、徘徊、異常行動などの周辺症状とからなる。発症原因、治療法、予防法など数多くの研究が行われているが、これが確実であるという知見がないところが問題である。65歳以上の高齢者では15%ほどがかかるとされているので、現在400万人ほどが認知症を患っているとされる。

治療薬として4種類の薬物が臨床で使われており、完全には治すことはできないが、認知機能の改善や病気の進行を抑える効き目がある。勿論薬以外の治療も行われており、私たちの病院では約30%は入院治療で軽快し自宅あるいは居宅にもどられるので、治らない病気と思ってあきらめてはならない。

では、認知症にならないためにはどうしたらよいのか。まず異常について早めに気付くことであり、気付いたら、かかりつけ医やサポート医、地域包括支援センターに相談されることである。認知症と診断される中には慢性硬膜下血腫など治るものも含まれている場合もある。認知症でも軽症の内ならば通院しながらでも治療ができるし、進行を遅らせることができる。予防的手法としては社会活動への参加、適度な運動(ダンスがよいとの説もある)、過度なアルコール摂取をひかえる、バランスのよい食事など現代養生訓に出てくるようなことばかりである。これらに気をつけておればすでにかかってしまった方には進行を遅らすことができるし、まだ患っていない方には予防的に働くという。社会第一線で働く人には難しいことであるが、ぜひ心がけたい。

ただ医療者の感みたいなものであるが、認知症の方には過去に腹部や胸部などの大きな手術をしていたり、家族内や社会との関係で大きなストレスにさらされ、うまく対処できなかった人も少なからずお見えになるように思う。ストレスは人生の中で避けることのできない負の力であるが、これらに確実に対処できる自分自身をつくってゆくことが大事である。