人の一生を川の上流から下流に泳いでゆく人間にたとえられることがある。上流で生まれ下流に向かって成長し、壮年・熟年に至る人の一生である。健康人は元気に上流から下流まで泳ぎ切り、一生を終える。ところが何人かは中・下流域でおぼれて助けを求める。ある学説によると肥満もそういう疾患の一つであり、これは幼児期からの教育や社会環境を整備することにより成人になってからも予防できるという。
確かに助けを求めている人を調べてみると、肥満のみならず、高血圧、糖尿病、高脂血症、がん、さらには認知症などいわゆる生活習慣病の類をもった人が多い。これらの病気は気がついたときには「すでに時遅し」の感がある。ここで幼少期からの教育論が浮上する。子供のころにきちんと教育を受けていると、このような成人病にはなりにくいような印象がある。教育といっても、なにも一流の幼稚園から小・中・高・大学とすすんだ方たちではなく、一般の教育(家庭教育も含む)を普通に受け、その教養・知力から健康をどう保つかを自然に身につける人たちである。こういう教育が功を奏すると暴飲・暴食、煙害、薬物依存、心身への過重負担などは自然と避けるようになり、一方ではバランスのある食事、適度な運動・飲酒、そして早めの適切な医療機関受診など健康維持にプラスにはたらく習慣を身につけることになる。経済学的にも子供のころへの投資は大人になってからの医療費支出の抑制につながるようである。
勿論一生の内で無理を承知で頑張らなければならないときもある。それでもなお適切に乗り切る力は育った教育、社会環境が影響しているかもしれない。子供のころから健康教育をきちんと行い、一生を充実した輝かしい人生を送ることができればその人にとっても社会にとってもこの上ない幸せなことである。