心身のゆらぎ

この世の中はなにかとストレスが多い。難しい問題につきあったたり、複雑な人間関係に巻き込まれたりして解決の糸口がつかめないと、ついつい思いつめて、精神的にも過緊張な状況に陥る。肉体的な労働でもリラックスがないと、身体的に固まった状態になってしまう。

さて精神疾患で注目されている統合失調症やうつ状態のような病態では脳内の神経伝達物質のバランスが崩れているのでは考えられているが、こういう疾患で心拍の調律を観察するとその変動が少なく単調な心調律、脈拍となっていることが多い。心臓疾患でも重篤な心不全や冠動脈疾患では自律神経系の交感神経や副交感神経(迷走神経)の緊張バランスがくずれ、一方的に交感神経系の緊張が高まった状況があるようだ。

つまり精神疾患にしても循環器系疾患にしても、悪い状態のときは作用の働きを強めたり弱めたりする神経系のバランスが崩れ、一方的にどちらかの状態が長く持続することが見られる。

タクシー運転手の方との話しであるが、一日中座って運転していると、仕事を終えた時には肩や腰の筋肉がこわばり、疲れがたまってしまう。だからそれをほぐすために、入浴は勿論、マッサージ機などを使って過緊張を取るように体のケアに努めているという。そういえば、今年米国野球ワールドシリーズで優勝したボストンレッドソックスの上原浩治投手も帰宅後は必ず体のケアをしていると聞く。ケアをしないことで故障やけがの原因を作っては何にもならぬからだという。

精神状態にしても、身体状態にしても緊張とリラックスのバランスをどうとってゆくのか難しいところであるが、その人の状況にあった形でリラックスが得られればよい。文化的活動と身体的活動とをうまく活用して、心身共に調和のとれた調節系の揺らぎをおこせばしめたものである。近年適度な有酸素運動が推奨されているが、運動も楽しみながら行えば、身体を鍛えることのみならず、過緊張を解きほぐし心身の揺らぎを取り戻す有力な手段となる。