Mt Kinabalu (キナバル山)

キナバル山 (Mount Kinabalu)

熱帯でも標高が上がれば気温は低下するが、冬がない湿潤熱帯には落葉広葉樹林(夏緑樹林)は存在せず、常緑広葉樹林が徐々に貧弱化していくのみである。Grubb (1977)は、相観(葉のサイズと形、ツル植物や板根の頻度など)に基づき、熱帯の垂直分布を下から順に、熱帯低地林・熱帯下部山地林・熱帯上部山地林・熱帯亜高山林に分類し、Whitmore (1984)もそれを踏襲した。ボルネオのキナバル山(標高4095m)には、その全てが存在する。

熱帯低地林は、東南アジアではふつうフタバガキ科樹種が優占することから、混交フタバガキ林と呼ばれる。

下部山地林(Whitmoreの定義ではその上部のみ)では日本の照葉樹林と同様にブナ科・クスノキ科が優占することが多く、oak-laurel forestとも呼ばれる(Ashton 2014)が、ボルネオの貧栄養土壌上ではフトモモ科とマキ科が優占する(Aiba & Kitayama 2020)。

上部山地林ではツツジ科が優占するとされる(Whitmore 1984)が、ボルネオではフトモモ科やマキ科針葉樹が多い。

亜高山林は極東熱帯ではニューギニア、ジャワ、スマトラの高山にしかないとされる(Whitmore 1984)が、キナバル山にもある(Kitayama 1992)。温帯系の植物により特徴づけられ、ニューギニアとキナバル山ではマキ科針葉樹が優占する。

熱帯では、同じ標高でも土壌によって森林の相観と種組成が劇的に異なる。土壌に影響する要因として、土壌の母材料となる岩石が重要で、とりわけ、石灰岩と蛇紋岩(超塩基性岩)上の森林は別の森林タイプとされる。キナバル山には蛇紋岩が低地から亜高山まで連続的に分布し、通常の成帯土壌上の森林と比較することができる (Aiba & Kitayama 1999)。

キナバル山地林の位置付け https://www.jstage.jst.go.jp/article/ecohabitat/18/1/18_KJ00008781259/_pdf

低地林(700m蛇紋岩)で板根がある木を測定する(現場で手作りのハシゴを使う)

Measuring buttressed tree (Koompassia malaccensis?) in a lowland forest (700 m asl).


低地林(700m堆積岩)で板根がある木を測定する(4mのアルミハシゴを使う)

Measuring buttressed tree (Shorea parvistipulata) in a lowland forest (700 m asl).

(撮影:吉良友祐)


低地林(700m堆積岩)には観光用のキャノピーウォークウェイがある

Canopy walkway at Poring hot springs (700 m asl)


カリフラワーのようなフタバガキ科樹種(Parashorea)の樹冠(700m堆積岩)

Cauliflower-like crown of dipterocarp tree (Parashorea malanonaan) in lowland forest (700 m asl)


ピノスック台地(1500m)から見たキナバル山

Mount Kinabalu seen from Pinosuk Plateau


1700m蛇紋岩上の山地林:のっぺりした林冠が特徴

Montane forest over ultrabasic (serpentine) rock (1700 m asl)

これが蛇紋岩

Ultrabasic (ultramafic, serpentine) rock


3100 m蛇紋岩上の疎林:樹高は数mほど

Subalpine Leptospermum recurvum woodland on ultrabasic rock (3100 m asl)


コタキナバル空港から見たキナバル山(2013年9月19日)

Mount Kinabalu seen from Kota Kinabalu Airport


飛行機から見た朝焼けの雲海に浮かぶキナバル山(2014年11月28日)

Mount Kinabalu at dawn seen from an airplane