Maliau Basin (マリアウ盆地)

マリアウ盆地 (Maliau Basin)

火山が分布しない熱帯地域では、土壌条件によって、同じ標高であっても、相観と組成が劇的に異なる森林が分布する。土壌には母材料となる岩石の違い(特に石灰岩・蛇紋岩)が影響するほか、様々な理由でポドゾル化が進んだ砂質土壌の上には、熱帯ヒース林と呼ばれる森林が見られる(Whitmore 1984)。ヒースとはヨーロッパの寒冷地などの荒地植生のことで、それに例えることができるぐらい貧弱な森林という意味である。フタバガキ科樹種は存在してもヒース林特有の数種のみで、広く優占するのはマキ科やナンヨウスギ科の針葉樹とフトモモ科(とりわけ樹皮が剥げてオレンジ色になるTristaniopsis属)である。マリアウ盆地には標高約1000mの台地上に、土壌のポドゾル化の程度に対応した様々なタイプの熱帯ヒース林が存在する(Miyamoto et al. 2016)。

残念?ながら、火山灰と黄砂にあまねく覆われた日本では、土壌による森林の変異の程度は熱帯に比べはるかに小さい。温帯であっても、火山や黄砂の影響の小さい場所では、熱帯と同様の変異が見られる(アメリカ合衆国カリフォルニア州の一部など)。

台地上の標高1000mの山小屋から調査に出発!

Morning at the Camel Trophy (Nepenthes) Camp (1000 m asl).


台地上のヒース林(Short heath)での調査(オレンジ色の幹のTristaniopsisが目立つ)

Fieldwork in the tropical heath forest; Tristaniopsis trees with orangish trunks are noticeable.


ヒース林(Short heath)の土壌断面:漂白層とその直下の集積層によりポドゾルと同定される

Soil profile in the heath forest, exhibiting bleached E horizon and blackish accumulation layer beneath it.


一番極端なヒース林(Very short heath)

Extremely stunted heath forest


貧栄養土壌のヒース林には食虫植物ウツボカズラが多い

Pitcher plants (Nepenthes) are abundant in the heath forests


低地から台地側面には混交フタバガキ林が広がる

Mixed dipterocarp forest on the side slope of the basin


低地林にはゾウがいる。

Elephants are roaming the lowland.


混交フタバガキ林の一斉結実(2014年7月10日)

Mass fruiting of mixed dipterocarp forest



一斉結実の後には実生が林床を埋める(2019年11月27日)

Seedlings emerged after mass fruiting of mixed dipterocarp forest