2025.10.17
「…の間に、…の中に」を意味する前置詞 among は後期古英語から見られる。 古英語期の語形は on ġemang, -mong で、前置詞 on と「混合、集合」を意味する ġemang から成り、「集まりの中において」を意味した。ġemang は ġemengan「混ぜる」から派生したもので、印欧祖語の *mag-「こねる、形作る、適合させる」に遡り、make「作る」と同根である(『英語語源ハンドブック』p. 14)。
古英語の on ġemang における強勢の置かれない前置詞 on と ġe- が弱化した結果、中英語期には among(es) の語形となった。前置詞 on の a- への弱化は alive などにも見られる。また、現代英語では among の発音は綴字通りの /əmɔ́ŋ/ ではなく /əmʌ́ŋ/ となっているが、『英語語源辞典』は West Midland 方言の影響による可能性を指摘している。
また、among と同義の前置詞 amongst があるが、これは among に属格語尾 -(e)s の付いた中英語の amonges に、16世紀から非語源的な -t が付いたものである。非語源的な -t の添加については「79. againとagainst ―<g>の綴りと発音、-stの語尾について―」、「142. amidst ―非語源的な添え字-t―」を参照されたい。
参考文献
「Among, Prep.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一『英語語源ハンドブック』研究社、2025年。
キーワード:[Germanic] [Indo-European] [dialect] [metanalysis] [analogy]