2025.7.26
affront は動詞で「侮辱する」(1330年頃初出)、「感情を害する」(1340年初出)、「†意図的に言葉をかけて会う」(1600–1年初出、1633年廃義)、「†向かい合わせる」(1601–2年シェイクスピアの Troilus and Cressida でのみ使用)、「†用心して立ち向かう」(1609–10年シェイクスピアの Cymbeline でのみ使用)を意味する。『英語語源辞典』によると中英語での語形は afrounte(n) で、古フランス語の afronter から借用された(現代フランス語では affronter)。これは俗ラテン語で ‘to strike against’ を意味する *affrontāre から発達したもので、ラテン語で ‘to the face’ を意味する ad frontem に遡る。
OED の語形欄によると、<f> が2つの語形は16世紀から見られるようである。中英語期にフランス語から <f> が1つの語形で借用されたが、ラテン語の ad を語源に持つために、ad の d がfront の f に同化した形として16世紀に <f> が追加挿入されたと考えると、affront は典型的な語源的綴字の説明に当てはまるように思われる。しかし、『英語語源辞典』を眺める限り、affront の他にラテン語に遡ることができ、フランス語から借用され、且つ中英語の語形が <f> が1つの綴字になっているのは affair のみで、affeer「決定する;確認する」、affiance「信頼」「誓約;婚約」、affinity「姻戚関係」「親近感」「類縁(性)」、affirm「断言する;肯定する」、†affy「信頼する」「†婚約させる」といった語では、借用元の古フランス語では <f> が1つの語形なのに対し、中英語の語形は <f> が2つの綴字で示されている。もちろん古フランス語、中英語のそれぞれで <f> の数に揺れがあった可能性はあるが、af- に関する語源的綴字は初期近代英語期よりも早くから定着していたのかもしれない。
参考文献
「Affront, V. & N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Affront, V.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/affront_v?tab=forms#9028643. Accessed 26 July 2025.
キーワード:[etymological spelling] [French] [Latin] [ad-] [assimilation]