【オンラインセミナー】2月8日(土)午後8時~9時(EST) 終了しました。
「フェイクニュース」が社会問題となって久しいですが、我々が危惧すべきことは、それだけではありません。誰もが日々目にするニュースは、政府企業の発表や、事故事件、著名人の動向などに限定されがちで、たとえ重要でも、世の中の大半の事象はニュースにならず、伝えられないことは存在しないと同然になってしまいます。
それを打ち破るのが「調査報道」というジャンルで、一般ニュースでは取り上げない、水面下で進行する事象に光をあて、徹底検証で社会変革を目指すものです。近年のニューヨークタイムズのセクハラ報道や、ボストングローブのカトリック教会の性虐待報道はその一例です。他にも食品偽表示、医療事故、水質汚染、偽装耐震、病院の偽請求など、数ヶ月から数年の検証で、政策や企業慣行を変えるなど大きな成果を出しています。最近では、アルゴリズム、クラウドコンピューティング、ネット上にある画像や動画を検証し、直接取材なしで飛行機事故墜落原因を解明するなど手法も日々進化しています。
このトークでは、メディアやニュースの特性を理解した上で、調査報道の豊富な事例を通してその特性や意義を考えます。また米国では新聞業界が低迷する中、寄附で成り立つ非営利調査報道が主な担い手にシフトしつつありますが、メディア環境が激変する中、市民に恩恵をもたらす報道を支えるために、我々が出来ることを提案できればと思います。
菅谷明子(すがやあきこ)
ジャーナリスト。ハーバード大学ニーマンジャーナリズム財団理事。
米ニュース雑誌『Newsweek』日本版スタッフ、経済産業研究所(RIETI)研究員などを経て独立。2011年ハーバード大学ニーマンフェロー(特別研究員)に選出され、デジタルジャーナリズム、創作文芸の新たな可能性をテーマに研究活動を行う。コロンビア大学大学院修士課程修了、東京大学大学院博士課程満期退学。
著書の英米加のメディア教育レポート『メディア・リテラシー』は、メディアと市民の関係を斬新な視点から提示。また日本の中高の教科書に抜粋が掲載され、出版から25年の今も読み継がれている。さらに、ニューヨーク公共図書館を活写したルポ『未来をつくる図書館』は、日本各地の図書館サービスを問い直し、新たな展開を啓発することに貢献した。(ともに岩波新書、韓国語にて翻訳出版)。2025年には、デジタル時代の調査報道をテーマとした新刊が出版予定。
Twitter: https://x.com/akikosugaya/