~今までの 10年間を糧にこれからの 10 年間を見据えて~
(3年次研究)
北海道中札内高等養護学校幕別分校は、地域の産業動向や近年の生徒の進路動向を踏まえ、職業学科「産業総合学科」を設置し、生徒の自立や就労を目指しています。開校から10年目を迎える節目にあたり(令和4年度)、開校時の思いや理念を引き継ぎつつ、新学習指導要領の施行という機会、また、幕別高校の閉校、コース制の解体、入学生募集に対する応募の状況などを鑑み、幕別分校がこれから先、10年間をどのように歩んでいくのか指針となる研究テーマを設定しました。北海道中札内高等養護学校幕別分校のアイデンティティとは何か、地域の実情を踏まえ、「幕別分校の特色」、「幕別分校の魅力」を再構築することを研究として三カ年計画で行うものとして全教職員で取り組んできました。
(1)月別学習内容表の作成
<題材はいつでも貼り替えられるようマグネットに>
新学習指導要領に伴い、旧カリキュラムから新カリキュラムへ移行する令和4年度において学習内容を再検討をしました。そのために月毎の各授業の単元を付箋等で示したもの(月別指導内容表)を職員室廊下に掲示し、まとめとすることができました。グループに分かれて、教科同士の関連性や月毎の行事との指導の整合性について話合いました。適切な指導時期や指導内容について意見が出され、教科横断的な学びを実現できるように学習内容を整備することができました。
こうした視覚的な仕掛けをすることで指導者側としても、教科横断的な学びを意識するきっかけになりました。さらには、生徒達も自分達の学習に対する見通しを持たせやすくなり、学習への意欲付けにもなりました。
学習内容の配列は毎年見直しすることとし、いつでも貼り替えられるようにマグネット形式にしました。
(2)幕別分校の授業で大切にしたいこと
公開授業を設定し主体的、対話的で深い学びを実現するためにできること、工夫、生徒自身が成長を実感できるような方策など、授業公開週間を軸に、交流を行い、各授業で行ったことから「幕別分校の授業で大切にしたいこと」を作成しました。
①教材・教具・環境調整、②生徒の活動の工夫、③教師の教え方の工夫、この3点について、各授業で意識できるように話し合ってきたことをまとめました。以下に各項目について列記します。
<教材・教具、環境調整>
一、対話的な学習を取り入れる(単元の中で1回でもいれるようにする)
一、授業、題材、単元の見通しを伝えていく。(板書や口頭で授業の流れを伝える。)
一、ワークシートをプリント、データで準備し、生徒が選べるようにする。
一、できるだけ具体物、本物を取り扱っていく。
一、ICTを活用した情報活用能力の育成を図る。
<生徒の活動の工夫>
一、授業ではワークシートなどを活用し、授業の振り返りができるようにする。
一、作品等を提示し、生徒同士が授業の様子を知れるような場面設定をつくる。(1組・2組授業が別なので)作品を通じて生徒同士が交流できるとよい。
一、調べる力(読み書き読解力)にも個人差があるので配慮(個別支援、ペアワーク)
一、個別に調べて、発表する機会をもつ。
一、教師が生徒の意見をとりまとめて、結論づけを導く。
一、表出が苦手な生徒には選択肢を選ぶところから
<教師の教え方の工夫>
一、卒業後の生活を意識させるためにも、社会生活を見据えた具体的な指導をする。(日常生活に般化できるような具体的教材設定や働きかけ等)
一、情報を伝えるときには注意を向けさせる。手を止める、視線を確認する。
一、言葉のセレクト、教材を生徒のレディネスに合わせた形で作っていく。
一、情報やヒントを与えたうえで、生徒自身が答えを探すしかけを設定する。【ティーチング(一方的に教える)から→コーチングへ(学び方を教える)】
一、自己肯定感を高める指導(肯定的な言葉がけ、適切な場面で称賛する、その子の増やしたい行動を認める、小さなことでも褒める等)
一、どんな回答もまずは肯定、答えたことを評価する、褒める。
一、答えだけでなく、考えた道筋も言語化させる。
一、学年会で教科、科目の進捗や様子を共有する。
北海道中札内高等養護学校幕別分校の魅力をどのように発信していくかについて研究しました。はじめに本校の特色として『特色ある授業』『産業総合学科』『学校行事』『進路指導』の4つに大別できるのではないかと定義付けしました。その後、それぞれの特色についてどのように発信したら良いかなど、魅力発信シートを作成しながら議論を重ねました。各グループからは、「地域の方や小中学校の児童や保護者に向けて発信すること」「新たな分校ポスターを作成すること」「SNSを活用して積極的に発信すること」「分校の授業内容について動画やHPで発信すること」など様々なアイデアが出され、各チームが魅力を発信するための具体的な実践をすることができました。各チームの研究結果は次のタブから御覧いただくことができます。
各チームが研究を通して、幕別分校の魅力について共通認識を図り、職員が一丸となって学校の魅力の発信に取り組めたことは大きな成果だと言えます。また、各チームの結果から共通して考えられることは、幕別分校の魅力をどのように『つたえる』のかということです。近年の情報技術発達に伴い、学校の情報を得る方法もインターネットなどを通じて手軽に入手できるようになりました。学校ホームページや学校公式YouTube、X(旧Twitter)などで情報を継続的に発信する重要性を確認することができました。また、デジタル媒体による発信に限らず、学校紹介ポスターを掲示したり、新聞等の広告へ情報提供したりするなど、従来どおりのアナログベースによる発信方法を取り入れながら、幕別分校の魅力について継続的に発信し続ける必要性があると意見が多くありました。今後も、北海道中札内高等養護学校幕別分校の魅力が伝わるために、あらゆる媒体を活用しながら発信し続けていきたいと思います。
ア 主体的・対話的で深い学びの視点での授業の見直し
主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を通して、基礎的、基本的な知識及び技能の確実な習得、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力、表現力等の育成、主体的に学習に取り組む態度を涵養できるよう、授業改善の3つの視点を取り入れながら単元をデザインすることに取り組みました。また、各グループで授業内容を共有しながら単元全体として3つの視点を取り入れた学習指導案を作成しました。
生徒への事前アンケート結果から、3つの視点の中でも主体的な学びへの意識が最も低い傾向があることが分かりました。また、対話的な学びや深い学びについても、日頃意識している生徒は多くはなく、全体的に指導を通じての授業の見直しが必要であることが分かりました。
イ 主体的・対話的で深い学びの視点を取り入れた単元計画の作成
従来の指導方法や授業方法を見直し、「主体的・対話的で深い学びの視点」を各授業に積極的に取り入れるよう、単元計画、指導略案を作成しました。3つの視点を計画に取り入れるために各項目のピクトグラムを配置し、授業の計画全体を俯瞰しながら単元をデザインするよう進めました。
主体的な学びを実現している生徒の姿として、「興味や関心を高める」「自分と結び付ける」「見通しをもつ」などの5つの項目を設定しました。対話的な学びを実現している生徒の姿として、「互いの考えを比較する」「多様な手段で説明する」「共に考えを創り上げる」などの7項目を設定しました。深い学びを実現している生徒の姿として、「思考して問い続ける」「知識・技能を活用する」「自分の思いや考えと結び付ける」などの7項目を設定しました。
単元計画にピクトグラムを配置することで、授業全体を俯瞰して3つの学びの視点を取り入れながら授業改善を図ることができました。
ウ 主体的・対話的で深い学びの視点での授業改善の成果
(1)主体的な学びによる授業改善の成果
生徒の主体的な学びを促すために、従来の教育の特徴であった教授型の授業としての一方向的な授業形態から、教師及び生徒同士の対話を通じての双方向による授業改善が見られました。こうしたことから、生徒の主体的な学びに対する自己評価も5.57点から6.39点へと向上しました。
生徒の主体性を促すためのポイントとして、授業の導入時にも「本時の目標やねらい」「学習の流れ」「学習単元計画」などの学習への見通しをもたせる工夫をすべての授業で意識して取り組んでいました。その結果として、生徒は学習の先を見通した学びができるようになり、主体的な態度が育成されたと考えられます。また、授業のまとめの場面では、授業の振り返り(ワークシート等)を毎回の授業で実施することで学習に対する意欲付けを図ることができるようになったと言えます。そうした繰り返しの学習は学びの定着を図り、生徒の主体性を育むことにつながると考えられます。
視覚的支援としてTVに授業スライドをミラーリングしたり、学習資料等をGoogleクラスルームにアップロードしてデジタル上のワークシートに記入したりするなど、ICTの効果的な利用も生徒の主体性を引き出していたと言えます。学習をクイズ形式で振り返るためのアプリ(Kahoot!)を活用したり、コマ撮りのアニメーションが作成できるアプリ(Stop Motion)など、生徒の興味関心を高めるためのアプリ活用も見られました。また、生徒自身が学習を振り返ったり、アンケートを実施するためのアプリ(Googleフォーム)を活用したりするなど、各授業においてICTを活用しながら授業展開をすることがスタンダート化されてきました。ICTの活用を目的にするのではなく、生徒が主体的に授業に参加するためのひとつの選択肢(手立て)としてのICT活用という、授業の教材づくりの技量が高まったと言えます。
【興味や関心を高める】
国語:コマ撮りアプリを活用したシナリオ作り
【振り返って次へつなげる】
各教科:Googleフォーム等を活用した振り返り
【自分と結びつける】
保健体育:「ダンス」自分たちの動きをテレビで確認
【見通しを持つ】
作業学習:授業の導入場で学習の意味や内容を説明する
(2)対話的な学びとしての授業改善の成果
授業改善のポイントとして、単元全体を俯瞰して対話的な学びを授業展開に組み込めるよう、「互いの考えを比較する」「共に考えを創り上げる」「協働して課題解決する」など対話的な学びの授業の実現を目指して授業改善に取り組みました。こうしたことから、生徒の対話的な学びに対する自己評価が5.95点から6.39点へと向上しました。
作業学習では、協働して課題解決する学習場面の設定が多く見られました。清掃作業では、役割分担を生徒主体で決めたり、グループごとに清掃計画を立てたりするなど、生徒中心に学習が進められていました。また、作業計画を立てる際には、互いの意見を出し合うためのツールとして、共同編集機能が備わったアプリ(Google Jamboard等)の活用も見られ、意見を発表したり、互いに比較したり、まとめたりする際の効果的なICT活用が見られました。
教科学習等でも、単元の中に対話的な学びを取り入れる題材の工夫が多くされていました。ペアやグループになって、互いの意見を交換し合ったり、協力して問題解決をしたりするなど、知識の積み込みだけではなく、生徒同士の対話を通して、自分の考えを表現したり、相手の考えを受容したりするなど、対話的な学びを通して学習する場面が多く見られました。
【思考を表現に置き換える】
情報:見学旅行のまとめ動画の作成
【協働して課題解決を図る】
行事:クラスの仲間と協力して問題に答える
【多様な手段で説明する】
宿泊研修:報告会でiPadを活用して発表
【共に考えを創り上げる】
作業学習:清掃活動中の話し合いの様子
(3)深い学びとしての授業改善の成果
研究授業の最初に主体的・対話的で深い学びは必ずしも1単位時間の授業の中で実践されるものではないことを確認しました。単元や題材などの全体を通して、深い学びになるように授業改善に取り組みました。こうしたことから、生徒の深い学びに対する自己評価が5.87点から6.66点へと向上しました。
総合的な探究の時間の授業では、生徒の学習意欲を引き出すための工夫として、生活や社会とのつながり、生徒の疑問を基にした授業展開がされるなど、生徒主体の学習が展開されました。生徒自身が抱いた疑問を解決できるよう、これまで学習してきた経験を生かしてアンケートを実施するなど、深い学びへとつなげることができていました。
更に、教科別の学習においても、確かな学力へと結び付くように生徒の生きる力や働く力が養われるように単元計画が立てられていました。防災に関する授業では、これまでの経験や学習をつなげて考えたり、他の授業との関連性だったり、学習内容を整理しながら教科横断的に展開するなど、学習の相互関連付けが苦手な生徒に対して工夫がされていました。
作業学習では、特に卒業後の就労を想起させながら学習の展開を図ることが意識されていました。清掃作業や縫工作業、農作業など様々な作業種においても、自分で仕事を探したり、周囲の状況に合わせて行動したり、協力したりすることが就労場面につながるなど「見方・考え方」を働かせることで、働くことへの意欲付けや生徒の学びの意欲を向上させることができたと考えられます。
学習活動全体を通して、授業で学んでいる内容が将来どのように生かされるのかを丁寧に説明したり、既習内容との知識を相互に関連付けることで、生徒が学びに対する意欲を向上させたり、学びに向かう力を向上させる「深い学び」につながると考えられます。
【自分の思いや考えを形成する】
総合的な探究の時間:生徒の疑問を基にした探究活動
【知識・技能を習得する】
家庭・理科:防災に関する学習を他教科で連携実施
【知識・技能を活用する】
作業学習:清掃活動におけるワックス清掃
【新たなものを創り上げる】
作業学習:幕別小学校へ記念品製作
幕別分校の魅力は複数あり、多くの特色があることを確認することができました。その魅力の中心にはすべて生徒が中心にいます。幕別分校の魅力を充実させるためには、生き生きした主体性ある生徒を育成していくことが幕別分校の魅力につながると考えています。幕別分校の教育目標である「たくましく明るく生きる力を育てる」ために、それぞれのチームで実践してきたことを更に深めていく必要があります。幕別分校の魅力を向上させるためには、地域や外部に向けて継続した発信が重要だと考えます。その役割を担うホームページ等の充実をはじめ、地域資源や地域企業との連携実績等を様々な媒体で伝えていくことも大切だと考えます。
【アナログベースでの情報発信】
【SNS等で情報発信】
ア 主体的で対話的な深い学びの視点を取り入れた授業改善を受けて
主体的で対話的な深い学びの視点に立った授業改善を実施し、生徒の学びの変容や教師自身が授業の在り方を考える機会を設けてきました。生徒によるアンケート結果や教師によるアンケート結果を踏まえて、2年次研究で取り組んだ授業改善研究の課題と今後の方向性についてまとめました。
【教師による授業アンケートでは主体的な学びが最高値に】
【Googleミートやスライドを活用してグループ協議】
グループ研究による考察
【Aグループ】
【Bグループ】
【Cグループ】
【Dグループ】
(ア) 主体的な学びに向けて
主体的な学びに向けて、特別支援障教育における基礎基本として、「学習への見通しを持たせること」や「学習への興味関心を持たせること」、「個に応じた指導」などを意識して実践することで主体的な学びへとつながりました。教師によるアンケート結果からも、平均4.56点(5点満点)と一番高い得点となりました。課題としては、特別支援教育における個別に応じた指導を施しながら、生徒の学習に対する意欲を向上させるための工夫が必要だと考えます。例えば、教材・教具の工夫、ティームティーチング(MT・ST)の役割分担の在り方、学習環境のUD化、授業の導入や展開などの流れの工夫、教師による生徒への適切な言葉掛けの内容やタイミング、能動的な行動を引き出すためのICTの活用など、生徒が主体的に活動できるための工夫を、校内全体で意識して取り組む必要があるのではないかと考えます。
(イ) 対話的な学びに向けて
対話的な学びに向けて、教師による一方向的な授業ではなく、双方向的な「生徒同士が学び合う授業」を実践することで対話的な学びへとつながりました。教師によるアンケート結果からは平均4.46点(5点満点)という結果から、各授業で対話的な学習が単元として設定されていたと言えます。課題としては、障害特性により、対話的な学習に困難性をもち合わせている生徒もいることから、段階的な学びが必要だと考えられます。まずは、話を聞き合える関係性の構築が必要ですし、学年が進むにつれて話し合うための「話す手順」や「話合いの方法」「話す観点」などをスモールステップで指導していく必要があります。また、円滑な対話方法を学ぶためにも2人で話し合う「ペア」から始めて、徐々に「グループ」や「全体」へと発展させるなど、話し合わせる人数などにも工夫が必要です。こうした生徒の対話する能力を育成するためには、各教科のみならず、すべての学習活動で対話的な学習の在り方について検討していく必要があると考えます。そうした、系統的な取り組みや段階的な指導を行うことで、自らの考えを構築しながら、他者と共に考えを創り上げたり、協働して課題解決したりできる生徒を育成できると考えられます。
【ペアでの話し合い】
【協働して課題解決】
【グループでの話し合い】
【販売活動を通してコミュニケーションを学ぶ】
(ウ) 深い学びに向けて
深い学びに向けて、学習の関連性をもたせたり、自らが考えた疑問を調べたり、これまで学習した知識や技能を生かして、より深く考える学習場面の設定を行うなどの授業改善が図られました。一方で教師によるアンケート結果からは平均4.38点という結果となり、3つの視点の中で一番低い得点となりました。この結果は一概に深い学びがあまりできていないというわけではなく、授業単体で見ると深い学びかどうかの判断が難しかったためにこのような評価になったのではないかと、推察されます。
課題としては、各教科の学習を相互に補完し合い、深め合えるような教科横断的な授業の展開が必要だと考えられます。例えば、調理学習などでは、調理で得た知識・技能を生かして、家庭生活で料理を行おうと意識付けさせたり、実習の時に自分でお昼ご飯を準備したり、など様々な場面に関連させられるように働き掛けが行われ、生徒が実際に自分で弁当を作るようになるケースが多々あります。これは調理学習に対する「見方」が変化し、生活にも生かせると生徒自身が学ぶことができた成果だと言えます。
このように、深い学びの育成には、各教科等で学習したことを、家庭生活や社会生活など様々な場面で発揮したり、学習のつながりを持たせたりすることが大切になってきます。こうした各授業における「見方・考え方」を意識させることで、生徒の学びは更に深まっていくと考えられます。
【「調理実習」学びを卒業後の生活へ生かす】
【「清掃作業」学びを卒業後の生活へ生かす】
【生徒にも主・対・深い学びについて説明をすることの重要性】
トレーニング、作業学習(2年)、職業(1年)、外国語(2年)、保健(1年)、総合的な探究の時間(1年)、作業(3年)、社会(1年)家庭(2年)数学(1年)、作業(1年)、理科(2年)、音楽(2年)、保健体育、国語(3年)
1p~2p:トレーニング
3p~5p:作業学習(2年)
6p~7p:職業(1年)
8p~10p:外国語(2年)
11p:保健(1年)
12p~13p:総合的な探究の時間(1年)
14p~15p:作業(3年)
16p~17p:社会(1年)
18p~20p:家庭(2年)
21p~22p:数学(1年)
23p~25p:作業(1年)
26p~27p:理科(2年)
28p~30p:音楽(2年)
31p~33p:保健体育
34p~35p:国語(3年)
(1)学習内容表の構築・発信
3年目の研究では、学習内容表の構築・発信を軸に教科横断的な学びの整理を研究テーマとして実施してきました。1年目の研究で整理してきた各学年の学習内容をGoogleサイトに再構築し、幕別分校の魅力ある学習を発信することにしました。幕別分校を受験する予定の中学生や保護者のみならず、地域に向けて学校をアピールする機会とし、更には在校生にとっても活用できるサイトを構築することを意識しました。
研究方法は、毎月の研究日にランダムに編成されたグループで学習内容表を互いに交流し合い、他教科の先生方の意見も取り入れながらサイトを作成しました。各グループのサイトの作成状況がわかるように、スプレッドシートで進捗状況を把握してきました。こうすることで、全員の進み具合を把握したり、先の見通しを持って作成したりすることに役立てることができました。
Googleサイトの使い方については、初めて使う先生が大半だったので1回目の研究日に全体説明をして作成方法を先生方にレクチャーしました。その後はグループごとで作成の仕方を教え合うなどして各先生方がサイトの作り方について理解を深めていきました。幕別分校の学習が理解しやすいサイトになるように「見やすく」「わかりやすく」「親しみやすく」をキーワードにイラストや写真、授業のスライドを載せるなどの工夫がされました。毎月の研究を重ねるにつれ、教科ごとに視覚的にわかりやすいサイトを完成させることができました。
完成した学習内容サイトは、幕別分校のホームページから見ることができ、幕別分校に直接来校することができない場合でも詳しい学習内容について知ることができるようになりました。また、この学習内容サイトは在校生の学習の見通しを持たせるための教材としても活用が期待されます。
< 学習内容サイト >
学習内容サイトは各教科にオリジナルのアイコンを作成し、見た目にもわかりやすい印象になりました。幕別分校の16教科の学習をこちらのサイトから閲覧することができるようにしました。さらに、3学年ごとの月別学習内容表も整備し、3年間の学習の流れが視覚的にわかりやすくなるようにしました。
幕別分校の公式ホームページに「学習内容サイト」を掲載することにしました。ホームページからいつでも、どこでも見ることが可能となります。
【TOPページ】
各教科をイラストで表現し親しみやすさを意識しました。
【月別学習内容表】
3学年の学習の流れを確認することができます。
(2)教科横断的な学び
3年間の学習の流れとして学習内容表に示されている単元内容表をもとに、各教科のつながりを確認し教科横断的な学びを整理する研究を行ないました。
研究方法として、各学年団で自学年の単元配列が、各教科や行事とどのように関連しているかなどを話合いました。教科横断的な視点に立った資質・能力の育成においては生徒の発達の段階を考慮し、言語能力、情報活用能力、問題発見・開発能力等の学習の基盤となる資質・能力を育成していくことができるよう、各教科等の特質を生かし、教科横断的な視点から見直しを行ないました。出された意見やアイデアは次年度の年間指導計画の作成の参考になるようにしていきます。
<1学年の学習内容表の各教科のつながり>
<1学年段階での指針>
●幕別町の地理・文化的な学び
社会(幕別町の地理、十勝の地理、十勝の産業)
保体(パークゴルフ)など
●宿泊的学習に向けて
家庭(食の学習)
数学(時刻表と運賃、小遣いとレシート、時刻と時間など)
美術(名画鑑賞)など
●現場実習に向けて
職業(ビジネスマナー)
家庭(身だしなみ、健康管理、洗濯)
国語(手紙)
理科(天気図、気象災害)など
<2学年の学習内容表の各教科のつながり>
<2学年段階での指針>
●学校祭に向けて
国語(言葉遣い、敬語)
情報(学校祭ポスター)、美術(色彩)など
●見学旅行に向けて
家庭(消費生活、整理整頓)、社会(我が国の地理、歴史)
外国語(旅行の思い出)
情報(データの集計、動画編集)
数学(小遣い帳、支払い方法)など
●現場実習に向けて
職業(施設職場見学)
家庭(身だしなみ、調理、健康な食生活)
国語(言葉遣い、敬語)
作業(働く基本)、トレーニング(体力向上)など
<3学年の学習内容表の各教科のつながり>
<3学年段階での指針>
●前提実習に向けて
職業(履歴書、就労の形、求職登録)
家庭(社会人に向けて、TPO)
国語(社交辞令)、保体(ストレス管理、食事・運動・睡眠)
数学(時刻と時間、重さ、長さ)
作業(働く技能)、トレーニング(体力向上)など
●卒業後に向けて
社会(成人、選挙、医療保険、年金、会社のルール)
外国語(3年間の思い出プレゼン)
保体(睡眠・運動・食事、たばこ)
音楽(卒業ソング)
数学(1ヶ月の暮らし)など
●余暇に向けて
音楽(器楽演奏)、美術(卒業制作)、保体(全般)
外国語(海外旅行、ハロウィン、行ってみたい国)
情報(全般)
トレーニング(全般)
3年間に渡って「幕別分校の魅力再構築~今までの10年間を糧にこれからの10年間を見据えて」を研究主題として取り組んできました。
幕別分校が開校してから、学校を取り巻く環境は大きく変化してきました。研究主題の設定理由として挙げましたが、新学習指導要領の施行、幕別高校の閉校、コース制の解体、入学生募集に対する応募の状況など、あらゆる変化や困難がありました。この研究を通して、改めて幕別分校の「幕別分校の特色」、「幕別分校の魅力」は何かを追求してきました。研究を進めていく中で、幕別分校の特色が明確になり、魅力について考える機会を多く持つことができました。
学校教育目標には「たくましく、明るく生きる力を育てる」と掲げられています。その目標に向けて、生徒達がどのように学習に取り組むか、どのような学習環境、教育課程を編成するか、どのような手段を講じることで目標は達成されるのか、研究を通じて全職員で考えることができたことは大きな成果だと感じています。
幕別分校の魅力再構築として、生徒が学びを深められる教育課程の見直し、授業力の向上に向けた研究授業、ICTを活用した学習環境の整備、開かれた教育課程に向けての情報発信など、様々な試みをする中で幕別分校の魅力向上につなげることができました。今後も幕別分校が魅力ある学校として、多くの方から選ばれる学校になるよう今後も教育活動を進めていきたいと思います。