地域に生きる里山伏

里山伏とは

里山伏とは、山伏の一形態であり、里に定着し、祈祷・呪術等により地域住民の現世利益の期待に応えるなど、地域の人の信仰の対象になった修験道の実践者です。修験道は特定の宗派というよりも、山岳での厳しい修行などによる力(験力)の獲得を目指す「道」ともいえる性格を持っています。こうした修行で得られた力をもとに、住民に身近な宗教者として地域に貢献しています。【写真提供:大崎院】

八海山麓地域に生きる里山伏の今―とある修験寺院の法印様の語り―

地域に生きる里山伏の一つの姿として、修験寺院の法印様という生き方があります。

修験者でもある地域の法印様は、地域住民との密接な関係性を築き、日常生活の中での祈祷やお祓いの場などを通した「対話」により、住民の生活課題や悩みに寄り添って来ました。地域の中で「人」を支援し、いわば「人づくり」をしてきました。

古い時代のことと思われそうですが、コロナ禍の先にある「新しい日常」においても多くの示唆を与えてくれる関係性ではないでしょうか。家族や親類、友人とも異なる「斜めの関係性」の中での新たなつながりや、修験者・宗教者との対話の意義や可能性を示しているようにも思われます。【写真協力:三寶院】

里山伏と地域社会との関わり

科学技術の進歩、宗教心の薄れ、コロナ禍等により、地域の人が集まり、家族やマキを囲んでの対話の場が激減しました。

特に新型コロナウィルスの影響により人が集まれず、祭礼・行事も中止が相次ぎ、里山伏らが担ってきた伝統文化の維持継承にも大きな影響 を与えています。

さらに、集落の里山伏である法印様が逝去され、里山伏が途絶えた集落もあります。里山伏は地域独自の伝統行事や風習等を先頭に立って引っ張ってきた存在でもあります。

彼らが途絶えるということは、地域をあげて大切に守られてきた、この地ならではの伝統や風習(例えば、大崎地区にしか残っていない正月の「ものもー」・「どーれぃ」)、八海山信仰に由来する文化などが途絶えることに繋がります。【写真・音声協力:三寶院】

里山伏の残る地域の伝統や文化を改めて考えていくことの意味

山岳信仰に由来する伝統文化が根強く残る地域のなかで、里山伏は生活に密着した宗教者として、対話による人づくり・地域づくりの中核としての役割を担ってきました。里山伏や里山伏が残る地域の伝統や文化を改めて考えていくことは、消えゆく地域の文化や風土を再発見し、次世代に継承していくきっかけづくりに繋がっていくのではないでしょうか。