食資源利用学研究室
FOOD TECHNOLOGY LABO
FOOD TECHNOLOGY LABO
教育研究の目標
◆ 水産物を食料資源として持続的に有効利用するために
水産物に含まれる各種の構成成分を食料資源として持続的に有効利用していくことが強く求められています。そのためには、それら構成成分の機能特性を良く理解するこが不可欠です。しかしながら、その理解は、海洋生物が多品種に及ぶこと、またそれらの構成成分に秘める機能特性が多様であることから、未だ満足できるものではありません。加えて、多様化の進む現代の食生活では、既に知られた事実が新たな活用に結び付く可能性もあります。以上の理解の下で、食品工学研究室では、水産物の食の安全・安心の向上を図りながら、その品質制御や加工技術の基盤となる研究および健康機能有用成分の利用に関する教育と研究を進めています。
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21世紀中に予想される世界人口の飛躍的な増加にともなう食糧問題を解決するために、食料資源の生産量の増大やそれらの有効利用と健康増進への寄与などに関するサイエンス(食品科学)を大きく発展させることが強く求められています。このような背景の中で食品工学研究室では海洋生物資源を食料として有効に利用するための技術やその健康性機能の開発についての基礎的な研究を行っています。食品科学は応用的な科学分野ですが、科学的事実に立脚して思考しなければ、その発展は望めません。自然科学全般についての幅広い関心を持ち、チャレンジ精神にあふれた学生の参加を心から期待しています。
私たちは常日頃から、自然界で育まれた多くの水産物を食料資源として利用しています。しかしながら、現状において食料として上手に利用しているように見える魚介類でも、それらの素材的価値をもれることなく利用しているとは必ずしも言えません。これには魚介類の鮮度維持に関わる課題、それらに含まれる各種成分の変質と損失に関わる課題、さらに微生物学的安全性に関わる課題が含まれており、現在においても解決しなければならない多くの技術的課題が残されています。
水産動物筋肉タンパク質は、魚介類の主要な可食部であり、その可食部内に有用成分を保持する機能(保水性)や加熱ゲル形成能および乳化能などの加工機能を担っています。しかしながら、その加工機能は畜肉のそれより劣化しやすく、しかもその劣化の速度と様式は魚介類の種ごとに異なります。そのため、取り扱う魚介類の種類に応じた貯蔵と加工利用の技術が求められます。
また、水産物を食料資源としてより安全に提供するためには、原料由来あるいは貯蔵・加工工程で混入する微生物に対する制御が必要です。これに対応するための技術として、低温流通管理や加熱や乾燥処理、酢漬け、水分活性の制御技術などが既に実践されています。しかしながら、外的要因の変化に対して不安定な水産動物筋肉タンパク質への影響を最小限に抑えた微生物学的制御技術は未だ発展途にあります。
当研究室の特徴として、水産物の貯蔵・加工中に起こる現象を、可能な限り時間の関数として捉え、速度論的に解析することを重要視しています。なぜなら筋肉タンパク質成分の質的・量的変化あるいは微生物の増減は、各種の加工要因にかかわらず常に時間の経過とともに変化する現象であり、同時にこのような視点からの研究アプローチが、食料資源を有効に利用できる時間(消費と賞味期限)にも直結するからです。
▽ ヒトの健康維持に有用な機能性成分の利用に関する研究
近年の長寿高齢化社会において、人々の健康志向の高まりが水産食品の消費拡大を後押しています。水産食品には、ω-3脂肪酸やカロテノイドに代表される抗炎症・抗酸化作用を示す機能性成分が含まれていることは広く認知されていますが、それら以外にも、未だ明らかになっていない多くの機能性成分の存在が期待されます。当研究室では、生活習慣病をはじめとする各種疾患の予防・改善につながる成分を水産食品や未利用水産資源から探索・同定することを通じて、ヒトの健康維持に有用な機能性食品の開発に繋げることを目指しています。
▽ 日本の食文化への強い興味が健康機能性成分発見の鍵となる
世界有数の長寿国である日本は世界に類を見ない水産物の消費国でもあり、その長寿の素因として日本の魚食文化が注目されています。水産物に含まれている健康機能性成分の探索では、各種の生化学・分子生物学的実験、細胞培養実験や動物実験などの多くの実験手技を活用して挑みますが、何よりも日本の食文化への強い興味、加えてそこから知り得た数多くの経験知の具現化に向けた粘り強い探求心が求められます。
食中毒の予防・治療に関わる研究
食品中には様々な微生物が存在しています。微生物の中にはヒトに対して『悪さ』を仕掛け、食中毒を誘発する微生物もます。微生物の病態形成機構や感染機構を明らかにすることで、食中毒の治療法や予防法を考える研究をおこなっております。
食品の機能性に関わる微生物の検索
食品の微生物発酵は、食品の保存性を高めるだけでなく、食品の機能性を高める働きがあります。水産発酵食品を材料に、代謝産物と微生物叢の関連を解析することで、ヒトにとって都合のいい発酵をしてくれる、微生物の検索をおこなっております。
2022年3月卒業式
2020年
2019年
全自動アミノ酸分析装置
オートクレーブ(左)とクリーンベンチ(左)
原子吸光光度計(左)、プレートリーダー
(中央)、画像解析装置(右)
遠心濃縮装置(左)、PCR装置(中央)など
福井名産”小鯛ささ漬”の試作の様子
美味しいささ漬ができたかな?
マイワシを原料に加圧加熱殺菌食品を試作しいる様子