水圏資源生態学研究室
Laboratory for Aquatic Ecosystem
Laboratory for Aquatic Ecosystem
当研究室では、水産資源の変動と、その持続的利用に不可欠な生態系の機能と構造に関する基礎的・応用的な研究を行っています。研究内容が多岐にわたるため、研究室内は4つのテーマに大きく分かれていますが、学際的な視点から複合領域研究を一体となって進めています。
1.水産資源の生態や海洋生態系モデルに関連する研究(山本)
2.水圏動物の生態や生物多様性に関連する研究(小路)
3.水圏生態系の物質循環や生物生産に関連する研究(杉本)
4.水圏生物の回遊生態や食物網構造に関連する研究(松林)
水産資源の生態や海洋生態系モデルに関連する研究(山本)
日本海屈指の好漁場である若狭湾・小浜湾では,定置網,底曳網,刺し網などの様々な漁法で,ブリ,サワラ,マサバ,レンコダイ,カレイ類などが多く漁獲されています。本研究室では,これらの海の恵みを持続的に有効利用するため,水産資源の生態や漁場の生産構造を,明らかにしていきます。主なテーマは以下のとおりです。
・水産生物の資源生態:成長,産卵期,食性,Age-length key,年齢組成
・生態系構造の解明:食物網,漁獲物組成,栄養段階,ベントス,
動物プランクトン
・環境と資源の関係:海水温と資源量の長期変動,
環境変化による生活史の変化 など
研究キーワード:資源生態・資源管理・食物網・生態系モデル・温暖化・
漁船調査・水産統計
若狭湾・小浜湾には、リアス海岸に沿って、美しい砂浜、荒々しい磯、藻場などの多様な生態系が混在します。これら多様な環境は、多様な住み場所や餌生物を供給し、水産資源を育んでいると考えられます。主なテーマは以下のとおりです。
・魚類を中心とする水圏生物の生活史、生態、生産機構、群集構造、多様性
・海、川がもたらす自然の恵み(生態系サービス)の定量評価、活用、保全
・生物・文化の多様性、地域比較、海底湧水、地下水、境界領域、文理融合 など
研究キーワード:生物生産・多様性・魚類群集・藻場・河口・地下水湧出域・フィールド調査・リアス海岸・幸福・満足度・懸念・Human well-being
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沿岸海域は、高い生物生産力を有し、豊富な水産資源を育む場所です。私たちは、水と元素の動きから、沿岸海域の豊かさが育まれる仕組みを解き明かすことにチャレンジしています。主な研究テーマは以下のとおりです。
・地下水・海底湧水の研究:湧出域の探査、生物影響評価、巣穴形成動物
・沿岸海域の環境動態研究:栄養塩動態、一次生産、海洋酸性化、ブルーカーボン
・森から海までの連環学:水と物質の動態、人間活動、窒素飽和、農業、景観
研究キーワード:水・栄養塩・炭素・流域・同位体・野外調査・化学分析・森里海連環・環境問題
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多くの海洋生物は、幅広い空間をダイナミックに移動しながら成長します。こうした大規模な移動と食物連鎖によって異なる海域や生態系が有機的に連結されることで、それぞれの生態系が維持されています。しかし、こうした海洋生物の移動や食う―食われるの関係は、直接観察で定量化することが極めて難しい現象です。そこで、同位体分析というツールを用いて、海洋生物の回遊生態や食物網構造を明らかにする研究を進めています。主なテーマは以下の通りです。
・広域を回遊する生物(カツオやサケなど)の回遊生態の解明
・食物連鎖等を介した異なる生態系間をまたぐ物質輸送(例:ヒグマによるサケの捕食)の評価
・博物館等が所蔵しているアーカイブ試料の化学分析による生態学的研究
研究キーワード:同位体・食物網・回遊・化学分析・哺乳類・高度回遊性魚類
2025年
【論文掲載】Nakamura et al. (Journal of Geophysical Research - Biogeosciences) [2025年12月3日] :石垣島のマングローブ林における炭素ダイナミクスに関する論文が公表されました。
【論文掲載】Yoneda et al. (Fisheries Oceanography) [2025年11月18日] :瀬戸内海中央部におけるカタクチイワシの加入量減少が、親魚の栄養状態の悪化、仔魚期の餌不足、捕食圧など複数の要因によって引き起こされていることを明らかにしました。
【論文掲載】田畑ら (日本水産学会誌) [2025年11月15日]:リアス海岸における住民の福利(幸福)と懸念の地域比較に関する研究の成果が、日本水産学会誌に掲載されました。南西日本太平洋岸に比べて、福井県の若狭湾沿岸域のリアス海岸では、生態系サービス(自然の恵み)がもたらす満足度は相対的に高く、津波などの自然災害に対する懸念が低いことも明らかになりました。
研究室に3年生13名が分属しました[2025年10月1日]
【論文掲載】Kobayashi and Yamamoto (Fisheries Science) [2025年10月1日] :近年,漁獲量が減少しているマダコの卵巣の成熟段階を,組織学的な観察や生殖腺指数などに基づき包括的に分類しました。
【論文掲載】杉本 (沿岸海洋研究) [2024年9月1日]:海底湧水研究の総説が公開されました。
【論文掲載】小倉ら (保全生態学研究) [2025年9月1日] :福井県若狭町はす川流域に生息する絶滅危惧IB類ナゴヤダルマガエルの保全策として、下流域の水田を保全対象地とする重要性が示されました。
【論文掲載】髙柳ら (水産海洋研究) [2024年8月25日]:海岸線の形状が異なるものの面積がほぼ等しい2つの湾(小浜湾と高浜湾)のサーフゾーンで1年間調査した結果、閉鎖性が強い小浜湾では高浜湾に比べて冬季に低水温、夏期に高水温で、年間を通じて塩分が低く、栄養塩濃度および基礎生産が高いこと、仔稚魚の分布密度が高いといった特徴が明らかになりました。
【論文掲載】Yamamoto et al. (Fisheries Oceanography) [2025年8月19日] :瀬戸内海で1999-2001年と2019-2021年に漁獲されたマダコを比較したところ,近年の温暖化によって瀬戸内海のマダコの主な産卵期が秋(9月)から春・晩秋にシフトしていることが観察されました。
【論文評価】小路教授が参画した、魚類の資源変動を左右する生活史初期の高成長―高生残パラダイムに関する論文が,国際誌Fish and Fisheriesの2023年 top 10 most-cited papersに選ばれました。論文へのリンク:https://doi.org/10.1111/faf.12774
【論文掲載】Matsubayashi et al. (The Journal of Wildlife Management) [2025年5月30日]:北海道において大規模な家畜被害を及ぼしたヒグマOSO18の食性解析を実施した論文が公開されました。
2024年
研究室に3年生12名が分属しました[2024年10月1日]
【論文掲載】Matsubayashi et al. (Archaeological and Anthropological Sciences) [2024年8月1日]:アイヌの遺跡から出土したヒグマの骨を用いた時系列同位体分析手法により、アイヌに一定期間飼育された個体を識別できることを示しました。
【論文掲載】Shoji et al. (Sustainability Science) [2024年5月16日]:福井県若狭湾を含む国内3ヶ所のリアス海岸において人々が海から享受する福利(幸福:Human well-being)と懸念を比較し、若狭湾では自然から得られる恵みへの満足度が高く、津波に対する懸念が小さいことが明らかになりました。
【論文掲載】Wilson et al. (Limnology and Oceanography Letters) [2024年5月16日]:世界216サイト10,000点以上の実測データから、海底湧水により海洋へ輸送される栄養物質量が、河川水や窒素固定による供給量に匹敵することが明らかになりました。