水産資源化学研究室
〇Laboratory of Marine Food Chemistry and Biochemistry〇
〇Laboratory of Marine Food Chemistry and Biochemistry〇
サンプル処理の様子
MESSAGE
海洋生物資源を食料、化粧品や医薬品など生活関連素材として有効に利用するため、それらに含まれる各種成分の構造や機能の解明およびその応用に関する教育・研究を行っています。
研究室の目標
1)生化学や食品化学の分野において、国際的に通用する基礎・応用研究を行う。
2)地域産魚介類に関連する研究を通じて、地域産業の発展に貢献する。
3)実験を通じて科学的・合理的な判断力と実践力をもつ人材を育成する。
しばしば大発生して漁労の妨げとなるクラゲやヒトデ類など未利用の海洋生物が多くある。それらの無脊椎動物にはレクチンなど、哺乳類や魚類などの脊椎動物とは全く異なる種々の生理活性物質が含まれることがわかってきた。また、食用には向かない海藻類にも抗炎症・抗がん性物質などが含まれている。
本研究では、生化学的・分子生物学的手法を用いて未利用海洋生物より生理活性物質を回収するとともに、その分子構造や基本性状を解明する。さらに、研究用試薬や医薬品などへの利用法を検討する。
コラーゲンは動物の細胞外マトリックス(細胞外に存在する不溶性成分)に広く分布する構造タンパク質の一種です。本研究室では、水圏動物コラーゲンの基礎性状から応用、機能に至るまで幅広くコラーゲンに関する研究を行っています。
【新たなコラーゲン分子種の探索】
コラーゲンには異なる遺伝子でコードされている複数の分子種があり、生体内ではそれぞれ異なる機能を果たしています。様々な水圏動物について未知のコラーゲン分子種を探索し、新たな利用の可能性を拓きます。
【食品の物性発現に対するコラーゲンの役割】
コラーゲンは、主要可食部である筋肉の構造や機械的強度の維持に深く関わっているので、貯蔵や加工により筋肉中のコラーゲンが溶解,変性または分解を受けると肉の物性も大きく影響されます。このような組織の物性変化とコラーゲンの性状変化の関連を明らかにします。
【低利用生物資源からのコラーゲンの回収と有効利用】
水圏に由来する低利用生物資源(魚介類加工残滓、クラゲ類、一部の外来生物など)から低コストで簡便なコラーゲン回収方法を開発し、化粧品、食品や医薬品の原料としてこれらを利用するための基礎を築きます。
福井県ではマナマコの栽培漁業が盛んに行われていますが、漁獲されたマナマコのほとんどは海外へ輸出され、県内での利用率は必ずしも高くはありません。本研究では、真皮(主要可食部)に含まれる有用成分の抽出と性状解析、ならびに真皮部の加工原理を解明することにより、ナマコ類の新しい有効利用法を探索するための基盤づくりを行います。
【真皮に含まれる有用タンパク質の回収と性状解明】
ナマコ類真皮の主要タンパク質としてのコラーゲンに加え、本研究室で見出した新奇タンパク質である「400kDa糖タンパク質」が存在します。これらの簡便な回収方法ならびに生理機能や食品機能を明らかにして化粧品、食品や医薬品の原料としての利用の可能性を検討します。
【マナマコ真皮の加工原理に関する研究】
マナマコ真皮の加工では、まず最初にボイル(一次加熱)を行うことにより安定化を行い、その後干しナマコや塩蔵ナマコへと加工されます。一次加熱の過程では著しい組織の収縮や物性変化が起こります。これらが引き起こされるメカニズムを解明して、マナマコの新しい加工法の開発に結び付けます。
小浜市では、産学官が連携し、マサバ養殖事業が行われており、サバ養殖に関する多面的な研究が実施されています。本研究では、食品化学的観点から養殖マサバの品質向上に取り組んでいます。
【筋肉の死後変化に関する研究】
サバなどの回遊性赤身魚は、死後変化・品質劣化が急速に進みます。一方、養殖マサバの価値を高めるためには、生食用途として出荷することが重要です。本研究では、マサバの死後変化の特性やその遅延方法について研究を進めています。
【餌料成分と養殖魚の品質の関連性に関する研究】
小浜のサバ養殖では、酒粕を配合した試料を与え、「小浜よっぱらいサバ」と称しブランド化する取り組みを行っています。酒粕を摂取することによる肉質、食味の変化や、成長・体成分に与える影響を分析しています。
2020年
2019年