昆虫のからだの中

    昆虫のからだは、外骨格に覆われています。外骨格というのは、固い殻のことです。そのため、ヒトのような骨が無くても姿を保つことができます。昆虫のからだの特徴としては、外骨格に覆われているというかだけでなく、血管がなく体液(血液)で満たされています。このような循環器系を開放血管系と呼ばれています。

    からだの中には、神経系や末梢組織があります。神経系は、はしご状神経系と呼ばれるように、いくつかの神経節がつながってはしご状になっています。頭部から、脳、食道下神経節(しょくどうかしんけいせつ)、胸部神経節、腹部神経節とつながった神経系を持っています。末梢組織としては、腸管、脂肪体(脂肪組織)、マルピーギ管、筋肉などがあります。

     昆虫の場合、脳が中枢ではないとされています。はしご状神経系全体が中枢という人もいます。ただ、機能としては、様々な調節をする中心的な部位であることは間違いありません。面白いことに、脳を除去してもしばらくの間は昆虫は生き続けられます。

    随分マニアックな話ですが、昆虫の脳は基本的に眼と眼の間に位置しています。眼にはOptic lobeという視神経を中枢に伝達する役割を持つものがあり、その間に脳が位置しているからです。このことからも、視覚の情報が昆虫には非常に重要であることが分かります。


中枢神経系

   昆虫の中枢神経はやはり脳が一番中枢と思います。ただ、脳を除去してもしばらく生きられるということは、完全な中枢というわけではないようです。その構造からわかるように、はしご状神経系が中枢神経系とも言えます。ただ、哺乳類などの中枢と少々異なります。英語だとCentral nervous systemと書きます。なので、中央神経系と区別して言うひともいます。


脂肪体

    昆虫では、脂肪組織に相当する脂肪体という組織があります。この脂肪体の機能としては、エネルギーの貯蔵に使われます。貯蔵しているエネルギーとしては、脂肪(脂質)やグリコーゲンがあります。過剰な栄養分を摂取すると、可能な限り貯蔵しようとします。ただ、不必要なものは排泄します。


体液

     昆虫では血液はありません。ただ、血液に相当するものと組織液に相当するものが、混ざった体液というものがあります。昆虫は開放血管系なので、体内は体液で満たされていることになります。体液中には、アミノ酸、脂質、タンパク質などが豊富に含まれています。もちろん、血球もあります。体液という言葉がピンとこないひともいるので、血液というひとも多くなってきています。それは、昆虫をヒトのモデル生物として研究する研究者もいるためだと思います。

   ちなみに、昆虫の体液は他の動物の血液と同じように循環しています。循環のためにポンプが備わっています。

マルピーギ管

    昆虫の腸管の後半に付属している器官で、体内の老廃物や代謝物を排出するための気管であり、ヒトの腎臓にあたります。特に、窒素代謝物はこのマルピーギ管から積極的に排出されることが分かっています。マルピーギ管は腸管のうちの後腸に付属しています。後腸の蠕動運動とともに、窒素代謝物が尿酸などに変換され糞とともに体外に排泄されます。ちなみに、マルピーギは人の名前です。

筋肉

     昆虫の筋肉は、哺乳類とほぼ同様のメカニズムで機能します。飛ぶための筋肉を特に飛翔筋と呼び、体内で特に発達している筋肉です。バッタなどでは、飛翔するためのエネルギーを筋肉にためています。

腸管

 昆虫の腸は、主に3つの部位に分かれています。前腸、中腸、後腸です。種によって、形状が全くことなります。

(前腸)前腸はヒトの胃に相当するという人もいますが、ちょっと違います。昆虫の種によって前腸の長さが違います。前腸が長い昆虫は、前腸で食べたものを一時保管しておく場合があります。バッタなどの直翅目(バッタ目)昆虫では、前腸にCrop(素嚢)という少し膨らんだ部位があります。そこに一旦食べ物をためて、少しずつすり潰しながら中腸に運びます。前腸では消化する役目はありません。

(中腸)中腸は、ヒトの小腸に相当する部位と考えられています。消化酵素で食べ物を消化するのもここの器官の役割です。消化後の栄養分を吸収するところもここです。栄養分などを認識する部位でもあります。なので、腸管から出るホルモンはほとんどが中腸から分泌されます。

(後腸)マルピーギ管とつながっており、排泄物の最終的な形状にするための器官です。蠕動運動で、糞を出させますが、そのための神経系が張り巡らされています。

(その他)ちなみに、イモムシ系の昆虫では、腸管に食べ物が満たされないと、体型が維持できずにフニャフニャになります。骨がないので、体型維持のためにも、食べ物で腸管を満たしておくことが重要のようです。実際に、餌を除いて絶食させた場合には、腸に水のようなものが溜まったように見えます。それは、栄養分だけ体内に吸収し、水分を腸管に残しているからです。

他に面白いこととしては、中腸は内胚葉由来、前腸・後腸は外胚葉由来で、発生の起源が異なっています。

昆虫の外骨格

 昆虫の体は外骨格に覆われている。表皮細胞の外には外骨格となるクチクラ層がある。クチクラ層にはEpicuticle、Endocuticle、Exocuticleがある。EndocuticleとExocuticleはキチンによるLayerが作られている。その外側にはWaxで覆われている。