発達障害とは何でしょう?という問いには、いろいろな角度から答えることができますが、ここは日本ですので発達障害者支援法の定義を見てみると、その第二条に定義が記されてます。
(定義)
第二条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
この定義では、発達障害について三つの下位分類が示されております。その中に発達性協調運動障害が明記されていません。これは、「その他これに類する脳の機能障害」に入るでしょう。また、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害」とありますが、これはDCM-Ⅳ-TRの分類であり、2013年改定のアメリカ精神医学会出版DCM-5(精神疾患の分類との手引き )では、神経発達症の下位分類「自閉スぺクラム症」とされました。発達障害者支援法は、医学の世界では一世代前の定義、分類を採用していると言っていいでしょう。また、下位分類の障害についての定義に説明はされていません。
まとめると発達障害者支援法による定義は、大きく3つの主要なカテゴリに分類されます。
広汎性発達障害(DCM-Ⅳ-TR)
・自閉症
・アスペルガー症候群
・その他、これに類するもの
(DSM-5では「自閉スペクトラム症」に統合)
学習障害(LD) 特定の能力(聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する)の習得・使用に著しい困難
・聞く、話すことの障害(DSM-5では「言語症(Language Disorder」)
・読む、書く、計算する、推論することの障害(DSM-5では「限局性学習症(Specific Learning Disorder)」)
読むことの障害(ディスレクシア)
書くことの障害(ディスグラフィア)
計算すること・推論することの障害(ディスカリキュア)
注意欠陥多動性障害(ADHD)
▪衝動多動型
・不注意型
・混合型
「読み書き」支援まなびらぼでは、学習障害、特に「読み書き」に困難を持つ人たちへの教育的支援が目標であるので、医学分野の定義より、日本の文部科学省の定義を紹介します。(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/mext_00808.html)
学習障害とは、基本的には、全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち、特定のものの習得と、使用に著しい困難を示す、様々な状態を示すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や環境的な要因が直接的な原因となるものではない。
このうち、医学的定義では、読むことの障害(ディスレクシア)、書くことの障害(ディスグラフィア)、計算すること推論することの障害(ディスカリキュア)の三つが学習障害(DCM-5では、限局性学習症、SLD)に当てはまり、聞くこと、話すことの障害は、DCM-5では、同じ神経発達症の下位分類「コミュニケーション症群または言語症」に分類されています。(前述のまとめ参照)
発達障害のそれぞれの障害は、独立して症状を見せるものと思われる方も多いと思いますが、実は、二つ以上の障害が合併していることが多く、特に学習障害と注意欠陥多動性障害の合併率が高いというデータをよく見ます。以前の療育では、障害についてカテゴリカルな評価の仕方、ステレオタイプの対応が多かったと思いますが、最近では、ボーダーが曖昧で、スペクトラム(連続体)とかグレイゾーンとかいう概念が強くなりました。この障害だからどう対応するかではなく、障害名にとらわれれず、個々の特性を見て、その背景まで考慮した一人一人への個別の支援のプログラムを考えることが重要になってきています。