何も考えず短い話が書きたいと思って出会いの話を書こうと思ったら出会う前に場面が終了しました。
なのでとくに中身はありませんが、続きを書く予定がないのでとりあえず置いておきます。
続きは思いついたら書きます。
入学して早々、盗賊の襲撃を受けたという話はディミトリから聞いていたし、修道院中の話の種にもなっていた。外界から遮断され、たまに商人の出入りがある以外には滅多な娯楽もない修道院での生活だ。修道士を初めとして、学生を含めた人々は、物珍しい話に目がない。
士官学校は、将来士官となるべき若者を教育し、その立場に相応しい指導力と戦闘の技術を身につけさせる場だ。とくにガルグ=マク修道院に併設されたこの士官学校では、入学に当たり多額の寄付金や魔導学院の推薦、相応の教養等が必要とされるためか、貴族の出身者も多い。さらに、フォドラで広く信仰されているセイロス教の総本山であり、フォドラを統べる三国にも劣らないと言われるほど精強なセイロス騎士団が常駐しており、生徒の身の安全も保証されている。ゆえに、三国を治める血筋の者たちの多くもまた、ガルグ=マクで学ぶことがいつからか通例となっていた。
元々ガルグ=マクの士官学校は、三国が争うことなく平等に教育を受けられるよう、また三国の出身者が交流を持つことでフォドラの平和が保たれることを願って併設されたものだという。そのため、三国それぞれの出身者が分かれて所属している三学級の級長は、入学後、正式に授業が始まる前に交流の場として課外活動が課せられている。ディミトリが襲撃を受けたというのも、この課外活動の際のことだ。
課外活動とはいえ、内容は級長に向けた簡単なレクリエーションのようなものだったらしい。しかし、今年は三国を統べる血筋の後継者たちが揃い踏みだということで目をつけられでもしたのか、盗賊の乱入により計らずして実戦訓練となってしまったわけだ。
セイロス騎士が、このような出来事は前代未聞だと言っているのを耳にした。
自分にとってみれば、精鋭と謳われるセイロス騎士の警備もこの程度のものか、といささか落胆したものだが、同時に、その程度の敵をいなせる実力がなければ民衆の上に立つこともできないだろうとも思う。そこらの盗賊に襲われたとて、あの猪には赤子も同然だろうとも。
問題は、その猪が手放しに褒め称え、各学級どころか国までも束ねることを宿命づけられ育てられてきた級長たちを見事に統率してみせたという傭兵の方だ。
貴族出身者が多く、学級も出身地ごとにまとめられているとなると、必然的に生徒同士、そして級長とも顔見知りである場合が多くなる。各学級の生徒たちも、級長の無事は当然のこととして、やはり傭兵を気にかけているようだった。
噂によればまだ自分たちともそう変わらない年齢の若い傭兵らしい。しかしあの”壊刃”ジェラルトの子供なのだそうだ。大司教自らセイロス騎士団に勧誘しているのだという話もある。
真偽のほどはどうあれ、相当腕が立つというのは本当のようだ。もしガルグ=マクに留まるようなら、一度手合わせがしてみたい、と思う。
手練れの剣士と剣を交え、より己の剣を磨く。それでこそ、ガルグ=マクへ来た甲斐があるというものだ。
「殿下を守る騎士として」などと父はのたまうが、俺にとってはただ「強くなる」こと。それだけが剣を振るう理由だ。