令和7年8月31日(日)第46回山形県俳句大会が山形テルサ大会議室において開催された。中央選者・講師として公益社団法人俳人協会から広渡敬雄先生をお迎えした。
演題は「第一次産業の俳人」。
講演の後、本大会のみに設けられた六賞の授与と、各選者の特選・秀逸・佳作の表彰が行われた。
広渡敬雄先生のプロフィール
広渡敬雄先生は1951年福岡県生まれ。1989年より俳句を始め、1990年「沖」に入会。能村登四郎に師事。
現在「沖」蒼茫集同人、「俳人協会」評議員、「塔の会」幹事。日本文藝家協会会員、日本山岳会会員。
句集に『遠賀川』『ライカ』『間取図』『風紋』
著書に『俳句で巡る日本の樹木50選』『全国俳枕の旅62選』
2012年 角川俳句賞受賞
2024年 『全国俳枕の旅62選』が日本詩歌句協会評論部門優秀賞
2025年 句集『風紋』が第10回千葉県俳句大賞
広渡敬雄先生を囲んで六賞の受賞者と本県選者
結 果
【第46回山形県俳句大会六賞】
山形県知事賞
月山筍負うてばんどり蟹歩き 鶴岡市 木村慶子
山形県芸術文化協会会長賞
水天を蓴の綾を水馴棹 山形市 伊藤厚子
山形市長賞
蒼穹の機影小さくなりて夏至 上山市 北澤和美
山形新聞社長賞
手文庫に眠る手紙や星祭 米沢市 小島緑線
山形放送社長賞
声色で帰る客あり夏芝居 山形市 渡辺幸則
山形県俳人協会会長賞
日曜はおしやれして行くかき氷 天童市 五十嵐恒子
【入選作品】
広渡敬雄選
特選
水天を蓴の綾を水馴棹 山形市 伊藤厚子
月山筍負うてばんどり蟹歩き 鶴岡市 木村慶子
蒼穹の機影小さくなりて夏至 上山市 北澤和美
秀逸
手文庫に眠る手紙や星祭 米沢市 小島緑線
声色で帰る客あり夏芝居 山形市 渡辺幸則
夏の海大きく見せて影鳥海 山形市 和田英光
若き海女潜る姿はマーメード 上山市 清野桑苺子
遠郭公遺品整理のはかどらず 上山市 原田みる
佳作
茅の輪の香五臓にまでも雨上がり 長井市 こせき貴美子
暮れてなほ動く影あり植田かな 河北町 渡辺洋子
花蕎麦の白さに畑の暮れ残り 白鷹町 竹田 秀
一国の梅雨を湛へて最上川 上山市 石井浩吉
朝涼や墨の香仄と写経堂 上山市 石井浩吉
父の日や遺影と交す江戸切子 上山市 木村比紗子
十年を掛けて樹形のさくらんぼ 山形市 横道啓一
飲みながら語るも供養夏座敷 天童市 岡田久一
まくなぎを払ひつ山の薪能 山形市 庄司芳彦
炎天や盲導犬の荒き息 山形市 鈴木 実
鈴木正子選
特選
声色で帰る客あり夏芝居 山形市 渡辺幸則
秀逸
沖遠く爛々として烏賊釣火 山形市 金谷ゆかり
疎開せし単線の駅日輪草 山形市 井上多桂子
日曜はおしやれして行くかき氷 天童市 五十嵐恒子
佳作
蝉しぐれコード探してチューニング 谷地高校 おしのかのん
鰹切る出刃に卒寿の身を重ね 天童市 福田豊志郎
夏の海を大きく見せて影鳥海 山形市 和田英光
商談に苦みの残る麦酒かな 山形市 栗原ただし
若き海女潜る姿はマーメード 上山市 清野桑苺子
縁側で昼寝覚めたら小麦肌 谷地高校 後藤凪彩
労農は寡黙ばかりよ稲の花 上山市 佐藤権一郎
走り梅雨卒寿の脚のまだ達者 山形市 清野佐知子
夏休みすることがなく暇すぎる 谷地高校 石嶋涼介
引越の荷物目高が五匹ほど 庄内町 齋藤八重子
伊藤 寛選
特選
日曜はおしやれして行くかき氷 天童市 五十嵐恒子
秀逸
月山筍負うてばんどり蟹歩き 鶴岡市 木村慶子
ハンカチを小さく使ふ客間かな 東根市 冨樫正義
引越の荷物目高が五匹ほど 庄内町 齋藤八重子
佳作
水口の水に逆らふ水すまし 鶴岡市 齋藤キミ子
民宿の屋号はカッパ烏賊釣火 東根市 結城トミ子
手文庫に眠る手紙や星祭 米沢市 小島緑線
灼熱の岩に張りつく松の影 山形市 武田志摩子
振り向きもせずに別れの白日傘 山形市 栗原ただし
梅雨明けてハサミが笑ふ理髪店 山形市 横山啓一
金剛の滝へ修験の鉄梯子 山形市 伊藤厚子
炎天や盲導犬の荒き息 山形市 鈴木 実
籐椅子や母の記憶の吾はをさな 山形市 鈴木あい
浅漬けは梵天丸と言ふ茄子 山形市 飯沼雅柳
牧 静選
特選
神輿来る氏子二百の波迫る 山形市 伊藤厚子
秀逸
農継ぐや祭囃子の指導役 山形市 栗原ただし
脚光を浴ぶる舞台の裏の汗 東根市 冨樫正義
ライダーのミラーに迫る積乱雲 東根市 菊地みさ子
佳作
外つ国の浴衣に靴の椅子点前 長井市 こせき貴美子
夏帽子カラフルな子の声聞こえ 谷地高校 中野凜桜
風鈴の音とセッション我と友 谷地高校 佐藤琴音
力瘤見せ合ふ親子雲の峰 山形市 宇井千恵子
蝉しぐれコード探してチューニング 谷地高校 おしのかのん
郭公の語尾ビブラート澄みにけり 鶴岡市 帯刀春男
郭公や茂吉訛の太い声 山形市 齋藤真人
大都会夜を彷徨う兜虫 谷地高校 山口時生
病葉の柔き踏み音行者道 山形市 志鎌惠美子
大木を根こそぎ洗ひ梅雨出水 鶴岡市 栗原愛子
後藤貞義選
特選
一村を沈めてダムの夏木立 米沢市 山口雀昭
秀逸
力瘤見せ合ふ親子雲の峰 山形市 宇井千恵子
叱られて子は夕空に草矢打つ 酒田市 菊地秀雄
外つ国の浴衣に靴の椅子点前 長井市 こせき貴美子
佳作
水口の水に逆らふ水すまし 鶴岡市 齋藤キミ子
旅の風旅の土産の団扇かな 河北町 渡辺洋子
生命の力を口に燕の子 酒田市 佐藤喜和子
花蕎麦の白さに畑の暮れ残り 白鷹町 竹田 秀
最後の夏想いを込めたストレート 谷地高校 渡邉瑠愛
着ては脱ぎ明日まで待てぬ更衣 東根市 寺崎秀男
炎昼の目蓋重たき講座かな 山形市 鈴木 実
ライダーのミラーに迫る積乱雲 東根市 菊地みさ子
伽羅蕗や後ろ手に解く割烹着 鶴岡市 秋葉洋子
荒梅雨や川押す川の膨れをり 酒田市 菊地秀雄
伊藤ふみ選
特選
手文庫に眠る手紙や星祭 米沢市 小島緑線
秀逸
何ひとつ置かぬ贅沢夏座敷 山形市 渡辺幸則
農継ぐや祭囃子の指導役 山形市 栗原ただし
さくらんぼ残る五粒をゆづらるる 米沢市 結城芳理
佳作
水口の水に逆らふ水すまし 鶴岡市 齋藤キミ子
あぢさゐや良き雨の降る文殊堂 東根市 結城トミ子
紫陽花や研修先が決まりをり 山形市 田中教仁
分水嶺過ぎしと思ふ山毛欅若葉 山形市 岸 桃魚
自販機の明かりがすみか雨蛙 鶴岡市 木村慶子
一本に一個艶めく初茄子 大石田町 柏倉ヤス子
涼やかや光にかざすガラスペン 山形市 鈴木 実
畦渡る夕風甘し稲の花 東根市 阿部美和子
荒梅雨や川押す川の膨れをり 酒田市 菊地秀雄
大木を根こそぎ洗ひ梅雨出水 鶴岡市 栗原愛子