「第68回全国俳句山寺大会」令和7年7月13日(日)山寺芭蕉記念館
大会は気温30度を越える猛暑の中、山寺芭蕉記念館に中央選者高野ムツオ先生をお招きして開催されました。高野先生が「みちのくと俳句」という演題で講演を行いました。
事前投句の中央選者は他に、土肥あき子先生、村上鞆彦先生でした。
事前投句入選句
一般の部
【高野ムツオ選】
特選 二つ三つ舞込む落花老日和 宮城県 大江洋太郎
秀逸 梵鐘の中の静寂や蟬しぐれ 岩手県 佐々木清志
秀逸 野の声となりし雪解の最上川 東根市 庄司玲子
秀逸 子の数の大きおむすびあつめ汁 米沢市 猪俣洋子
【土肥あき子選】
特選 山寺の石切り唄や雲の峰 山形市 さとうみちこ
秀逸 鯉幟風の源まで泳ぐ 大石田町 糸尾 樫
秀逸 航跡を繕ひ直し花筏 茨城県 藤井忠重
秀逸 どこまでも逆さ鳥海大代田 山形市 森谷留美子
【村上鞆彦選】
特選 草餅をいま搗き上げし香なりけり 山形市 折原廣子
秀逸 参詣の汗に翁の汗のこと 愛知県 稲葉京閑
秀逸 跳ね出でて替はりし祭太鼓かな 大阪府 今井文雄
秀逸 椅子ふたつ出して一人や夏の月 新潟県 佐藤さき子
【鈴木正子選】
特選 ひとすぢの滝の煌めく最上川 鶴岡市 渡部道子
秀逸 跳ね出でて替はりし祭太鼓かな 大阪府 今井文雄
秀逸 見てまはる明日解禁の鮎の川 栃木県 平野暢行
秀逸 野遊びや竹笛削る肥後守 東京都 林田敏幸
【伊藤 寛選】
特選 ふる里の風のにほひや青葉潮 山形市 木嶋玲子
秀逸 谷若葉細き川筋見え隠れ 奈良県 堀ノ内和夫
秀逸 山寺へ汽笛高らか木の芽風 東根市 阿部美和子
秀逸 こぶし咲く発電風車はごんごんと 酒田市 菅原俊子
【大類つとむ選】
特選 空梅雨や流れ分け合ふ石一つ 上山市 石井浩吉
秀逸 鯉幟風の源まで泳ぐ 大石田町 糸生 樫
秀逸 魚河岸に水の溢るる立夏かな 東京都 野上 卓
秀逸 裏返る靴や憲法記念の日 宮城県 八島 敏
【牧 静選】
特選 野遊びや竹笛削る肥後守 東京都 林田敏幸
秀逸 うららかや威厳の足りぬ山羊のひげ 東京都 野上 卓
秀逸 椅子ふたつ出して一人や夏の月 新潟県 佐藤さき子
秀逸 散る桜ここは戊辰の激戦地 鶴岡市 日向長子
【伊藤ふみ選】
特選 五大堂身を乗り出して夏来る 山形市 奈良崎純子
秀逸 裏返る靴や憲法記念の日 宮城県 八島 敏
秀逸 穴あきもそのまま父の夏帽子 遊佐町 斎藤ふさ子
秀逸 ふるさとと言へど日帰り春祭り 米沢市 小島緑泉
小学生の部
【高野ムツオ特選】
新入生抱える不安おれに言え 天童市立成生小学校 押野一翔
【土肥あき子特選】
青空が泳ぎ手伝うこいのぼり 天童市立長岡小学校 深瀬 葵
【村上鞆彦特選】
チューリップ白だといいな大きくなれ 山形市立山寺小学校 はらだいしん
中学生の部
【高野ムツオ特選】
見えずともたしかな春を待つ莟 山形市立山寺中学校 土居融和
【土肥あき子特選】
一瞬に思い出巡る花吹雪 山形市立山寺中学校 加藤ひなた
【村上鞆彦特選】
春しぐれ呼ぶ声一つにじみけり 山形市立山寺中学校 後藤柊
高校生の部
特選は該当なし
入選句(伊藤寛選)
1 春うらら夕暮れの道風踊る 山形県立谷地高等学校 日塔晴香
2 青春の始まり告げる学校歌 山形県立谷地高等学校 横尾日和
3 友と見た打ち上げ花火思い出に 山形県立谷地高等学校 布施叶愛
4 楓の芽うちの担任よく笑う 山形県立谷地高等学校 小野修靖
5 裏庭にこっそり顔出す蕗の薹 山形県立谷地高等学校 伊藤美凪
6 花曇り私の心もどんよりと 山形県立谷地高等学校 渡井千怜
7 黒光り夕日が照らす春の川 山形県立谷地高等学校 野川愛未
8 春の雨肩ぬらす君時よ止まれ 山形県立谷地高等学校 丹野心羽
9 春の夜や野良猫歩く帰り道 山形県立谷地高等学校 佐藤寧音
10 燕の巣朝一番に「おはよう」と 山形県立谷地高等学校 木嶋紅羽
11 風光る心も躍るギターソロ 山形県立谷地高等学校 工藤あずさ
12 甲虫無邪気に追う子膝に傷 山形県立谷地高等学校 齋藤 樹
13 春うらら新人部員つかまえた 山形県立谷地高等学校 渡邉さくら
14 弟の見つめる先に燕の巣 山形県立谷地高等学校 斎藤夏帆
15 春一番体幹力を試される 山形県立谷地高等学校 松沢祥汰
16 残雪がきらり輝く月の山 山形県立谷地高等学校 松田和琉
17 野を駆けて転んだ先に土筆坊 山形県立谷地高等学校 若木陽介
18 朧月ひとりで歩く帰り道 山形県立谷地高等学校 渋谷結衣
19 朧月一人で悩む進学路 山形県立谷地高等学校 後藤凪彩
20 赤色の鯉が乱すよ花筏 山形県立谷地高等学校 細矢徠実
21 春の虹白球光るホームラン 山形県立谷地高等学校 奥山陽菜
22 気まぐれな猫の姿に春惜しむ 山形県立谷地高等学校 橋本琉花
23 夏近し手がじんわりと湿っぽい 山形県立谷地高等学校 多田小町
24 人生の岐路に彷徨う春の夜 山形県立谷地高等学校 渡邉咲奈
25 通学路探してしまう燕の巣 山形県立谷地高等学校 安孫子沙弥
26 遠くから電車に手を降る立石寺 山形県立谷地高等学校 押野花乃音
27 登る時汗がひんやり立石寺 山形県立谷地高等学校 押野花乃音
28 風吹けや赤川の花君と駆ける 鶴岡東高等学校 伊藤陽向
29 風光る勝利を胸に声合わせ 鶴岡東高等学校 佐藤新志
30 桜舞う卒業すれば見れぬ空 鶴岡東高等学校 蛸井悠月
31 更衣ああ忙しき夏の日々 鶴岡東高等学校 春日龍之介
32 若葉風伝えられずに頬染める 鶴岡東高等学校 高橋りのあ
33 花火舞う闇に溶けゆく恋ごころ 鶴岡東高等学校 高橋りのあ
34 鳴り響く広がる田んぼに蝉の声 鶴岡東高等学校 こんのひろと
35 手を添えて母の紫陽花咲きにけり 鶴岡東高等学校 よしずみれいな
36 躑躅咲くそばに土器色の祖母 山形県立山形東高等学校 東海林あや
37 そばかすが君とお揃い躑躅かな 山形県立山形東高等学校 菅野桃花
38 帰り道あくびの先に春の星 山形県立山形南高等学校 鈴木健太
39 か細いが威勢いい子や山躑躅 山形県立山形南高等学校 大宮慧太
40 警官の唇細し山躑躅 山形県立山形東高等学校 たけだこはる
41 自転車のライトを消して春の星 山形県立山形南高等学校 柏倉 丈
42 仄暗い終着駅やねばつつじ 山形県立山形東高等学校 五十嵐美緒
43 遠足の子の奪いたるホイッスル 山形県立山形南高等学校 工藤羚央
44 いつまでも通っていたい桜みち 鶴岡東高等学校 佐藤秀成
嘱目当日句
【高野ムツオ選】
特選 天狗岩仰ぎ大盛りかき氷 長谷川陽子
秀逸 万緑の山寺見ゆる一番線 五十嵐恒子
秀逸 夏燕飛ぶを見下ろす五大堂 鈴木 実
秀逸 夏川を越す君の背に淡き翅 金谷ゆかり
秀逸 堂涼し那由多の風の集まれり 金谷ゆかり
秀逸 立石寺仰ぎ玉解く芭蕉かな 阿部美和子
秀逸 玉こん食べいざ五大堂雲の峰 森谷留美子
秀逸 蕉翁の歩きし道か紅の花 堀野カヅ子
秀逸 山百合の香も乗れガタゴト仙山線 高橋俊子
秀逸 うつつでは逢へぬ誰彼ねむの花 武田菜美
秀逸 合歓の花円仁様の休み石 長谷川陽子
佳作 絵馬の文字薄れ消えゆく炎暑かな 青山君代
佳作 街道は川筋に沿ひ合歓の花 猪俣洋子
佳作 山滴る奇巖を寺の礎に 武田菜美
佳作 一山の迫る霊気や木下闇 小林恭一
佳作 蕉翁の御座しますれば松の花 伊東悠人
【鈴木正子選】
特選 白南風や崖に彫らるる観世音 大森アキ
秀逸 万緑の山寺見ゆる一番線 五十嵐恒子
秀逸 四寸道へ皆を誘ふ梅雨の蝶 後藤美代
秀逸 蕉翁の歩きし道か紅の花 堀野カヅ子
佳作 姥堂の奪衣婆に謝し汲む清水 後藤美代
佳作 涼風や空気のうまき法の山 柏倉ヤス子
佳作 一山の迫る霊気や木下闇 小林恭一
佳作 山寺は割箸二本ところてん 今野紀美子
佳作 天狗岩仰ぎ大盛りかき氷 長谷川陽子
【伊藤 寛選】
特選 夏川を越す君の背に淡き翅 金谷ゆかり
秀逸 玉こん食べいざ五大堂雲の峰 森谷留美子
秀逸 絵馬の文字薄れ消えゆく炎暑かな 青山君代
秀逸 青胡桃登りはきつい俳句道 小関恵子
佳作 参道を賑やかにして夏帽子 鈴木 実
佳作 千段を汗と力で登りけり 後藤松渓
佳作 閑かさの三百三十年の蟬 今井文雄
佳作 薄物の袖に風入れ地蔵講 松田ヤエ子
佳作 うつつでは逢へぬ誰彼ねむの花 武田菜美
【大類つとむ選】
特選 山滴る奇巖を寺の礎に 武田菜美
秀逸 夏霧や百丈岩の湿りたる 志鎌惠美子
秀逸 蝉を聴く翁の像は口むすぶ 増田信雄
秀逸 よき会釈くれし少年朝涼し 折原廣子
佳作 夏燕飛ぶを見下ろす五大堂 鈴木 実
佳作 万緑の山寺見ゆる一番線 五十嵐恒子
佳作 杣山の老夫のほまち夏わらび 庄司玲子
佳作 蟬の声返す百丈岩仰ぐ 今井文雄
佳作 郭公の声みどりなる立石寺 大森アキ
【牧 静選】
特選 フラッシュのきらり炎暑の五大堂 布川百合香
秀逸 杣山の老夫のほまち夏わらび 庄司玲子
秀逸 鎌に代へ草刈機買ふ八十路かな 名和輝男
秀逸 蝉塚までの膝の塩梅磴涼し 橋間 涼
佳作 参道を賑やかにして夏帽子 鈴木 実
佳作 夏川を越す君の背に淡き翅 金谷ゆかり
佳作 五大堂見上ぐ童のサングラス 小山好仁
佳作 仙山線汽笛の揺らす青胡桃 菊地みさ子
佳作 山百合の香も乗れガタゴト仙山線 高橋俊子
【伊藤ふみ選】
特選 よき会釈くれし少年朝涼し 折原廣子
秀逸 千段を汗と力で登りけり 後藤松渓
秀逸 仙山線汽笛の揺らす青胡桃 菊地みさ子
秀逸 蝉塚までの膝の塩梅磴涼し 橋間 涼
佳作 蝉塚の裏側にゐて汗ひきぬ 増田信雄
佳作 落とし文拾えば濡るる旅心 折原廣子
佳作 郭公の声みどりなる立石寺 大森アキ
佳作 白南風や崖に彫らるる観世音 大森アキ
佳作 五大堂吹くまつさらな夏の風 遠藤健二
「第67回全国俳句山寺大会」 令和6年7月7日(日)山寺芭蕉記念館
本大会には、中央選者に上田日差子先生をお招きして講演がありました。演題は「上田五千石と山形」。俳句の師であり父でもある上田五千石との思い出や、山形で詠まれた俳句の数々、封人の家に建てられている句碑のお話などをされました。
お弟子さんを連れて来場された日差子先生は、大会直前に、山寺奥の院まで登られたそうで、その健脚に地元選者も驚かされました。
大会では、「小学生の部」「中学生の部」の表彰も行われました。ご父兄の方々も揃って参列され、賑やかな表彰式となりました。
結果発表:事前投句一般の部
結果発表:小学生の部・中学生の部
結果発表:当日句