大学院

大学院進学希望の皆さんへ(基本方針)

多田の基本的な方針は、「とりあえず研究をやってみる」というものです。理論系の場合、一般的には研究に必要な勉強量が多くなりがちで、分野によっては修士2年間ずっと勉強だけということもありえます。一方で、「走りながら学ぶ」ということも十分可能であり、「アウトプットを明確化する方がインプットも捗る」という効用もあります。

大学院の教育は、アウトプット(研究)に主眼が置かれています。しばしば論文出版*はアウトプットの最終形であると同時に、そこに至るまでに多くのこと(どうやってアウトプットを完成させるか)を学ぶことができます。多田は、学生が修士卒業までに論文出版にこぎつけられるようにサポートしたいと思っています。

*ここで論文出版とは、学位論文ではなく、査読つき英語論文の学術雑誌掲載のことです。)

以上は全体的なメッセージですが、以下でいくつかの場合ごとに説明を追加します。


学部学生の皆さんへ

学部の勉強は基本的に、スタートからゴールまで準備された中で「物理学の視点から自然を理解する」ことを追体験するという点に重点が置かれていたと思います。卒研を練習試合とするならば、これからいよいよ公式試合に突入します。大学院では道はあまり整備されていませんから、自分から積極的に物理学の視点や手法を使って、さまよいつつかき分けながら進んでいくことが求められます。そうしているうちに、自然と物理学の作法が身についてくるはずです。せっかく物理学に本気で取り組むのですから、是非、研究を楽しんでもらいたいと思っています。そのボーナスとして、「現状を分析する力」とか「分かりやすく伝える力」などのいわゆる「社会で役立つ力」も身に着くことも多いようです(当社調べ)。


大学院生の皆さんへ

既にどこかの大学院に所属しているけれど、「なんか違うなぁ、別のことやりたいなぁ」という方もウェルカムです。実際、僕はこれまで何人かそういう学生を目撃してきましたが、皆さん、それぞれ移った先で楽しくやっていました。中には、1000km近い民族大移動(九州→関東)をしてきた健脚さんもいましたし、実験研究室から理論研究室に移った愉快な学生もいました。別に我々の研究室を目指さなくても、今の自分の所属にミスマッチを感じている方は、研究室変更という選択肢を考えてもよいと思います。


社会人の皆さんへ

物理系では珍しいのですが、社会人の方に来てもらえたら面白いだろうなぁ、と感じています。例えば、僕の高校(公立)時代の政治経済の先生は、(たぶん文部科学省の大学院修了休業制度 を使って)大学院に行っていました。学校教員統計調査 によると、大学院修了の教員割合が増加傾向にあるようです。また、インターネット上では、「仕事を休職して大学院に通っています」という方々を見かけます(すごいね)。工学系などでは、仕事をしながら大学院に通う強者もおられるようです(すごすぎ)。あるいは、僕の身近にも、育児・家事をしながら大学院へ行かれた方もいらっしゃいます。実際上は色々と難しい問題はあるだろうと推察しますが、大学院がもっと身近な存在になればうれしいな、と思っています。


博士過程を目指す皆さんへ

博士過程に進学した場合、より一層、(周囲の協力を得ながらも)自分の力で研究を進めていくことが求められます。博士過程を修了する頃には、「この分野・問題についてはお任せくださいませ」という状態になっていることでしょう。しかし研究活動自体は楽しい一方、博士過程への進学には大きな決断が必要だと思います。我々の研究室に限らず、博士過程への進学を考えていらっしゃる方は、例えば以下のサイトなどを参考にしてみて下さい。

他にもたくさんのサイトがありますし、友達や先輩の話を聞いてみることも大切でしょう。奨学金をゲットして海外へ行くという選択肢もあると思いますし、海外では博士号に対する社会の認識も異なります。

進学における最も重要なことの一つが金銭的問題ですが、大学毎の支援体制や公的支援制度もあります。ちなみに、広島大学は「広島大学創発的次世代研究者育成・支援プログラム」などを通して博士学生を支援しています。

博士過程を修了した後のキャリアパスは、心配するほど狭くないと思います*。僕のまわりにも、博士号をとった後に民間で働いている人は結構いますし、ポスドクをやった後に産業界へ行った人とかもいます。個人的には、研究を深めたい人が博士過程へ進学し、その後色々な方向へ元気に羽ばたいていくといいなと思っています。

*個人的感覚です。博士号取得者のキャリアパスは社会的な課題であり、様々な調査や支援策があります。広島大学では、「グローバルキャリアデザインセンター若手研究人材養成 」という取り組みをしています。

また、そもそも博士号取得のコストパフォーマンスはいかほどか、という問題に答えるのは難しく、しばしば議論の的になっています。私的収益についての統計的なデータとしては、内閣府経済社会総合研究所「大学と大学院の専攻の賃金プレミアム」Chem-Station「博士の学位はただの飾りか?」などがあります。(教育機関としては公的収益や社会的収益についても考えるべきでしょうけれど、そこまで含めた議論はどうなっているのでしょうかね?)


過去の学位論文