レポート・答案の書き方

私は文章の達人でも,文章表現演習の講師でもありませんので,レポートのお作法を開陳することはできません。まあ,大学院を出てから多数の報告書,論文,専門書(小説は全く読みません。そんな時間があったら子供と遊びますね)を読み書きし,長年学生のレポート・答案を評価してきましたので,読みやすい報告書,読みやすいレポート・答案の書き方は分かってきました。以下では,私が課したレポート・試験を私が読みやすいように(=高得点(^_^)v)書く方法を記します。

また,ここで記すのは経済学部の学生を対象としていますので,その他の分野の方には役に立たないかもしれません。しかし,私は経済部は文系だと思っていません。文系と理系の分類は文部省が勝手に行ったもので,実社会でも学問的にも経済は理論的に社会現象を分析する学問で,むしろ理系に入れるべきだと思っています。20年ほど前,三菱総合研究所という日本有数のシンクタンクに就職し,驚いたことがあります。経済学の応用分野であるはずの社会開発部でさえ,理工系出身者が主で経済学部出身者は傍流だったんです(今でも同じですが)。しかし,直ぐにその原因が分かりました。理工系出身者は報告書作成能力に長けて居るんですね。大学時代から実験・レポート漬けの日々を送っているので,酒漬け(私だけですかね)が一般的な経済系の学生より即戦力になるんです。社会で必要な文章能力は美文を綴る能力ではなく,簡潔に論理的に相手に物事を説得する能力です。

まあ,とはいっても私自身美文家でも論文の達人ではありませんし,これは私の個人的好みといわれればおしまいですがね。

1.レポートの書き方

(1) 書く技術

あなたは芥川賞作家ではない

レポートを書くときに最初の一語から順番に書き出す人が居ますが,そんなこと出来たら芥川賞作家になれます。地道に,下書きを書いて編集していったほうが書きやすいですし,間違いなくよいレポートが書けます。また,下書きを書く場合でも順に書いていく必要はなく,書きやすいところから書きましょう。何のためにワープロがあるんでしょうか?清書のためではありません。ワープロでキーワードを書いて徐々に肉付けをしていき,並び替えたり追加・削除をして徐々に編集していきましょう。一気にレポートを書き上げるのではなく,複数のレポートを徐々に型づけた方が良いレポートになります。

(2) 構成:序論・本論・結論

レポートは,序論・本論・結論の3つの部分からなるようにしましょう。これは単なる形式の問題ではなく,論理的思考を行うための必要技術です。

序論では,そのレポートのテーマの意義を分かるようにしましょう。特に,現在問題になっている点をマスコミや評論家など他者の意見をまとめるのも手ですし,簡単な統計を使い具体的に論述するのも高得点につながります。ここで,用いられる技術が検索技術です。インターネットで様々な文献や統計を探すことが出来ます。教科書や文献をそのまま転写するのは望ましいことではありませんが,単なる自分の意見よりはましです(この辺の解釈は教師によって違うよ)。

そして,ようやく本文ですが,これは以下の(2)内容を見てください。

最後に結論となりますが,政策的含意とか将来への課題,自分の意見を入れましょう。自分の意見が入っていないレポートってのも評価は低くなります。

さて,もう一つ信じられないことに,最近は小見出しや段落を付けない学生も大勢居ます。むかし,丸谷才一(???)だったかの試験的小説で,「。」が一個だけのものがありましたが,文学の実験ならいざ知らず,レポートではこのページのように段落,小見出しをちゃんと付けましょうね。

(3) 内容:当然経済学です

私は心理学者でも社会学者でもありません

私は経済学者(正確には「経済学者になりたいと思って仕事をしているエコノミストかな」?)です。経済学以外は素人ですので心理学や社会学の専門用語や理論を使ってもらっては評価できません。また,芥川賞選考委員でもありませんので美文を競ってもらっても困ります(微分を競おう?)。

要するに,経済学理論を使って,経済学用語を用いてレポートを作成してください(もう一つ,上智大学を出ましたのでマル経も分かりません)。例えば”費用”という場合,経済学ですから機会費用だなって憶測はつきますが,平均費用を言っているのか限界費用を言っているのか明示しないとね。

受けねらいってのもありますが,よほど理論を分かって,しかも既存の研究を精査しないと何にもなりませんよ。例えば,離婚の経済分析や不良や非行の経済分析ってのはかなり重鎮がおやりになっていますので受けません。

(4) 最後のご注意

あのね,レポートはこのHPのように口語体では絶対に書かないようにね。それと,「僕的には・・」とか「分かんないしー」なんて新語もやめましょう。そんな文体見た瞬間に0点にされるぞ。

それと,レポートと関係ない事も書かないように。よくあるのは「就職の内定を取りました。この単位が無いと卒業できません。」って類ですが,私はこのような文言を見た瞬間に0点にします。まあ,僕的には白紙とこの文言が有れば時間をかけずに採点できて,だらだらと書かれて不可のレポートを読むより良いのですがね。

最後の最後のご注意です。最近はどこかのHPをコピペする学生が非常に多くなっています。無神経な先生はそれでも通ってしまうかもしれませんが,合理的でテクニックを持っている先生ならすぐ見分けることができます。学生レベルでないレポートなら検索する。すぐわかってしまいますよ。以前,某大学のレポートで『私の友人の竹中平蔵氏は,■■』って書いたすごい学生が居ました。某学者のWEBを丸写しでした。馬鹿ですよね。当然落としました。


2.答案の書き方

試験は当然ルールを守ること。カンニングはもってのほかです。一般的には,どの大学でもカンニングには非常に厳しい処置が執られます。当該期間(1年間)の単位没収が多いようです。現在の大学は履修単位上限を決めていますので,1年間の単位が0ってことは留年です。あまりに無謀な賭です。2単位欲しさに1年留年するなんてばかげてます。カンペを作る努力をするくらいなら,書いて覚えよう。隣の人の答案を見るのも馬鹿げてます。隣人が君よりできるって確証はありますか?

(1) やはり経済学の試験ですから

経済学の試験ですから,経済学用語を用いて解答すること。他の科目でも同じでしょうか,習ったことをどの程度わかっているかを調べるのが試験です。全く関係のない分野の解答を書かれても私のような無学な人は採点する能力がありません。

(2) きれいに簡潔に書きましょう

最近はスケジュールがタイトですから,試験から採点まで1週間程度しかありません。先生方も時間がないので(私もね),汚い答案にはイライラしてきてどうしても点が低くなります。まあ,図や数式で解答させるのは合っているか間違っているかですから大丈夫ですが,記述式になると中間点がありますので,できる限りきれいに書きましょう。また,これも文学性を競っているわけではないので簡潔に分かりやすい文章にしてください。文章を簡潔に書くと言っても『代替財価格低下→需要減少→需要曲線の左シフト→■■』という書き方はやめましょう。私は大学時代にこれをやって怒られました。

図を書くときは定規を使ってきれいに書きましょうね。どの線が何を意味しているかをちゃんと書きましょう。まとまるものがあれば表にするのも良いでしょうね。

(3) 時間配分を考えましょう

試験には制限時間があります。まともな先生なら,ちゃんと授業を受けて理解してきた学生が制限時間内に解けるような問題を作っているはずです。長年試験監督をやっていて,中には5分ぐらいで全員が出来て(あるいはあきらめて),ご就寝している試験ってのも見たことがあります。これは問題外です。

ただし,私でも一つの問題に詰まってしまうことは計算に入れていません。出来ない問題は飛ばしてでも,より多くの点を取ることを心がけましょう。経済学の原則は,制約下での最大化問題です。自分の能力の制約の下で,得点を最大にすることに力を注ぎましょう。私の問題には配点が書いてあります。最初に,各問題が出来るかどうか配点がどうなっているかを見てから解答を始めましょうね。これって受験の基本だったはず。

(4) 最後のご注意

レポートと同じですが,「就職の内定を取りました。この単位が無いと卒業できません。」って類ですが,私はこのような文言を見た瞬間に0点にします。

私の講義では毎回簡単な小試験をして,それで評価しますので,最終的には大数の法則で各自の能力に近づきます。一回だけの試験なんて怖くてできません。運不運があってね。

3.参考文献

さて,レポート・論文作成のための参考文献を上げておきます。私達の時代は④がバイブルでしたが,私は③が適していると思います。経済・経営ってのは私の分類(安易なタイポロジーはあかんがね)では理系なんですね。で,理系であるべき経済・経営の作文技術の向上には③が適していると思いますよ。それと,上級者になると①を読んでください。これはGOOD!(両先生面識はありませんが,続々編も期待しています)

①小浜裕久/木村福成『経済論文の作法』日本評論社

②木下是雄『レポートの組み立て方』筑摩書房(ちくま学芸文庫)

③木下是雄『理科系の作文技術』中央公論社(中公新書)

④清水幾多郎『論文の書き方』(岩波新書)

4.参考になるホームページ