AMT (Air Motion Transformer) 方式
AMT (Air Motion Transformer) 方式
■AMT(Air Motion Transformer)方式について
AMTは1960年代に Oskar Heil によって提案されたトゥイーター方式で、 アコーディオン状(蛇腹状)に 折り畳まれた振動膜が開閉し、空気を「絞り出す」ように空気を押し出す構造が特徴です。
【 長 所 】
折り畳み構造により実効振動面積は見かけの面積より大きくなります。この構造により生じるAMTの特徴の一つが空気速度の増幅です。折り畳み膜が1mm動くと空気は数mm移動するため、高い空気加速度が得られ、高効率が得られます。
また、振動膜は数µm程度の非常に薄いフィルムに導体パターンを形成した構造であるため有効質量が小さく、立ち上がりが速い、トランジェント特性が良い、Impulse Response が速いと評価されることが多くなっています。
音響特性の傾向としては解像度が高い、音場が広いと評され、さらに振動面積の大きさと効率の高さにより低歪、高出力(高効率)、高入力耐性、広帯域といった特長を持っています。
【 短 所 】
①折り畳み振動膜構造
折り畳み振動膜では、折り部の折り振動(bending)、振動膜上を伝搬する振動による局所振動(共振)、折り内部空間の空気共振など複数の振動モードが発生する可能性があります。
また各折り面および各開口が小さな音源として働くため完全な単一モード振動にはなりにくく、各位置から放射された音が数十µs程度の時間差(微小な遅延成分)を伴うようになります。
Impulse Response では最初のピークは鋭いが、その後に小さな波打ち(リップル)が続く、つまり、立ち上がりは速いが完全にはすぐに収束しないことがあります。ETC では初期減衰は速いが−30dB付近から減衰が緩やかになる場合があります。また複数の放射源が時間差で音を出している状態は ETC 上で小さな段差状の減衰として観測されます。周波数特性ではこれらが細かな干渉となって小さなピークやディップが生じやすくなります。
②背面放射音
AMTの振動膜は非常に薄いフィルムであり、また多くのAMTトゥイーターは背面にバックチャンバー(狭い吸音空間)を持っています。そのため背面放射音は、次のような過程で複雑な振動の原因になります。
[チャンバー壁に到達] ⇒ [反射を繰り返す] ⇒ [振動膜を再励振する] ⇒ [膜を通過して放射される]、または、[膜を伝搬する] ⇒ [再放射される]。
この影響は、Impulse の尾や ETC の減衰遅れとなって現れてきます。
③指向性の非対称
AMTトゥイーターは振動膜が縦長形状で縦方向が長くなる場合が多いため、垂直方向の指向性が狭くなる傾向があります。
これは、振動板の有効寸法が大きくなると振動板各点からの音波の位相差による干渉が強くなるためです。
そのため、クロスオーバー設計や設置条件によっては音場特性に影響を及ぼす可能性が出てきます。
■特性を測定するトゥイーターユニット
REWを用いた測定結果に基づき、AMT方式の特徴を示すとともに、VCD方式との違いについて説明します。
まず、対象機種について紹介します。
本測定で使用するトゥイーターユニットは、Mundorf AMT21CM2.1-C および Dayton Audio AMT2-4 です。
■Mundorf AMT21CM2.1-C
Mundorf AMT21CM2.1-C は、AMTトゥイーターの中でも高性能な代表的モデルの一つとして広く知られています。
ETC では初期減衰が良好であり、Impulse Response では主ピークは鋭いものの、その前後にわずかなエネルギーが残る傾向が見られます。
また、Rise Time は優秀ですが、Fall Time は比較的長く、制動はやや穏やかな傾向を示します。
このような特性から、AMTトゥイーターの中では初期応答の良さと過渡特性のバランスに優れた代表的な高性能モデルの一つと評価されています。
■Dayton Audio_AMT2-4
AMT2-4 は、米国のスピーカーパーツメーカー Dayton Audio が製造する AMT 方式のトゥイーターです。
大きな振動膜面積を持つため、比較的低いクロスオーバー周波数での使用が可能で中高域の広い帯域をカバーでき、また、広い放射面積による低歪と高出力という特徴を持っています。
振動膜はポリイミド系フィルムに導体パターンを形成した構造で、軽量でありながら十分な耐入力を持っています。
音響的に広い再生帯域と低歪、高出力を特徴としているため、ハイファイスピーカーやDIYスピーカー設計において広く使用されているAMTツイーターの代表的なモデルの一つです。
■Impulse Response
Impulse Response は、入力された瞬間的な信号に対して、スピーカーがどのように応答するかを時間軸上で示す特性です。
理想的な応答は、鋭い単一のピークを示し、その後の振動は速やかに収束します。
後続する振動が大きい場合は、システム内に不要な反射や共振が存在することを示しています。これらは直接音に対して遅れて現れる成分(遅れた音)として観測され、その量が増えるほど音像のにじみや音場の不明瞭さの原因となります。
【測定条件】
●音響測定ソフト:REW(Room EQ Wizard)
●解析項目:Impulse Response
●測定距離:10 cm
●帯域条件:3 kHz ~ 96 kHz(Butterworth HPF 2次 ×2、LPFなし)
●サンプリング周波数:192 kHz
●正規化条件:ピーク正規化
Mundorf AMT21CM2.1-C、Dayton Audio AMT2-4、および VCD方式の VCD-DT63 の3種類のトゥイーターについて、Impulse Response を重ねて表示し、それぞれの特徴について以下に記述します。 Mundorf AMT21CM2.1-C の製品に添付されている Impulse Response を図1に示し、比較のため VCD-DT63 の特性を図1と同一スケールで図2に示しています。
■主ピーク(Impulse 1st Peak)
最初の立ち上がりの鋭さは、初期トランジェントの再現性を直接示す重要な指標です。
ピーク高さ(エネルギー集中度)は、VCD-DT63 が最も高く、エネルギーがより短時間に集中して放出されていることを示しています。
また、 立ち上がりの鋭さはピークに至るまでの時間的傾き(dA/dt)で評価され、VCD-DT63 が最も急峻です。これに対し、AMT21CM2.1-C および AMT2-4 はいずれもわずかに時間的広がりが見られます。さらに、AMT2-4はピーク直後の再上昇および振動成分が大きく、結果としてエネルギーが時間方向に分散する傾向がより顕著に現れています。
AMT方式の特徴:蛇腹構造に起因する複数の振動モードや面内速度分布の不均一などの影響により、エネルギーが一度に集中せず時間方向に分散するためと考えられます。
■1st Valley直後の強い再上昇(約80~150 µs)
各方式の差が明確に現れています。
AMT21CM2.1-C では、谷の後に2~3周期程度の残留振動が確認され、AMT2-4 ではこれがさらに大きく、かつ振動の周期が長く、各ピーク間の時間間隔が広い傾向が見られます 。
一方、VCD-DT63 は谷後の再上昇が小さく、その後の収束も非常に速く、最も制動が良好な特性を示しています。
AMT方式の特徴:AMT21CM2.1-C および AMT2-4 では、1st Valley 後に比較的大きな正のピークが再び現れる傾向が確認されます。これは、蛇腹構造に起因する振動モードや空気負荷との相互作用により、エネルギーが一度で収束せず時間方向に再分配・再放出されるためと考えられます。
■100–500 µs 領域(残留振動)
100~300µs 領域(初期残留)はトゥイーターの性能差が最も顕著に現れる重要な領域であり、高性能なトゥイーターほど残留振動は低く抑えられます。
AMT21CM2.1-C は、100~300 µsにおいて VCD-DT63 より明らかに大きな残留が確認され、さらに 500~600 µs付近にも山が残る傾向が見られます。ただし、100~300 µsの聴感上重要な初期領域においては、AMT2-4 よりも良好な特性を示しています。
AMT2-4 は初期の山谷が最も大きく、150~300 µsにおける波打ちも最大ですが、後半の長い尾は AMT21CM2.1-C よりやや短い傾向が見られます。
一方、VCD-DT63 は約230 µsで主要成分が概ね収束しており、最も速い減衰特性を示しています。
AMT方式の特徴:周期的な山谷が複数継続して現れる傾向が確認されます。これは、蛇腹構造に起因する複数の振動モードにより、各部が完全に同時停止せず、エネルギーが時間方向に分散して放出されるためと考えられます。その結果、Impulseのエネルギーは一点に集中せず、複数周期に分散して現れます。
また、200~300 µs付近に見られる小さな山谷は、バックチャンバー内で反射した音が振動膜に再度作用し、前面に放射される成分の一部である可能性が考えられます。300~500µs付近に見られる小さな山谷は、バックチャンバー内での反射や振動体の複数振動モードなどの影響が重なり、振動膜に再作用したエネルギーが前面に再放射されている可能性が考えられます。
■500 µs 以降(後期残留)
500 µs以降の領域では、各方式の後期残留の違いが明確に現れています。
AMT21CM2.1-C では、500~600 µs付近に明確な再上昇のピークが確認され、後半まで残留エネルギーが継続しています。一方、AMT2-4 は初期残留が最も大きいものの、500 µs以降の尾の現れ方は AMT21CM2.1-C とは異なり、比較的なだらかに減衰する傾向が見られます。
これに対し、VCD-DT63は谷後の収束が非常に速く、500 µs以降には顕著な残留成分はほとんど見られず、最も制動が良好な特性を示しています。
AMT方式の特徴:500 µs以降にもエネルギーが残留する傾向が確認されます。AMT21CM2.1-C では 500~600 µs付近に明確なピーク、AMT2-4 では400~500 µs付近に残留エネルギーが見られます。これらは、蛇腹構造に起因する複数の振動モードや空気負荷との相互作用により、エネルギーが遅れて放出されるためと考えられます。一般的なピストン型トゥイーターでは、この時間領域のエネルギーは比較的小さく抑えられる傾向があります。
また、AMT21CM2.1-C の 500~600 µs付近に見られる明確なピークは、単一の振動モードでは説明しにくい遅延成分であり、バックチャンバー内で反射した音が複数回の反射を経て振動膜に再作用し、前面に放射された成分を含んでいる可能性が考えられます。
■Impulse 収束速度(視覚推定)
各方式の収束挙動には明確な差が確認されます。
AMT21CM2.1-C は、500~600 µs以降にも再上昇を伴う残留成分が確認され、比較的長時間にわたりエネルギーが持続しています。
AMT2-4 は初期残留が大きく、全体として500 µs付近まで残留が続く傾向が見られますが、その後は比較的なだらかに減衰します。
一方、VCD-DT63 は約200~250 µsの範囲で主要成分が概ね収束しており、最も速い減衰特性を示しています。
■音響的意味
これらの差は、音像の輪郭の明瞭さ、音場の透明度、および高域成分(シンバル音や子音)の分解能に直接影響すると考えられます。
AMT21CM2.1-C は高い解像度を有しつつも、わずかに時間的広がりを伴うため、相対的に柔らかさを感じさせる傾向があります。
AMT2-4 は初期および中期残留が大きく、エネルギーの時間分散により音像のにじみとして知覚される可能性があります。
これに対し、VCD-DT63 はエネルギーの時間集中度が高く、音像がシャープで空間情報の再現性にも優れる特性を示します。
■総合評価(Impulse Response)
今回の比較では、Mundorf AMT21CM2.1-C よりも VCD-DT63 の方が、Impulse Response の収束速度が明確に速く、エネルギーの時間的集中度が高い特性を示しています。 具体的には、主要エネルギーが約200~250 µsの短時間に集中して放出され、その後の残留成分も小さいことから、時間領域におけるエネルギー分散が大幅に抑制されています。すなわち、 VCD-DT63は、従来型トゥイーターで一般的に見られる複数周期にわたるエネルギーの分散的放出(残留振動・再放射)とは異なり、エネルギーが極めて短時間に集中して放出される特性を示しており、時間領域性能において新たな水準に達している可能性が示唆されます。
AMT方式の特徴:AMT21CM2.1-C および AMT2-4 に共通して、主ピーク後に急激にゼロへ収束するのではなく、複数の山谷を経て徐々に減衰する傾向が確認されます。これは、蛇腹構造に起因する複数の振動モードや面内速度分布の不均一性により、振動エネルギーが一度に放出されず、時間方向に分散して現れるためと考えられます。
その結果、Impulseエネルギーは単一ピークに集中せず、複数の周期に分散して観測される特性を示します。
■ETC(Energy Time Curve)
ETC は、Impulse Response から算出される指標で、出力された音のエネルギーが時間方向にどのように分布・減衰していくかを示します。
不要なエネルギーが早く収束するほど、音像のにじみが少なく、定位や空間表現が明瞭になります。
音質および音場再現の差は、直接音に対して遅れて到達する成分(遅れた音)の量によって決まります。ETC では、直接音の後に現れるエネルギー成分が、遅れて到達する音(遅れた音)として観測されます。
【測定条件】
●音響測定ソフト:REW(Room EQ Wizard)
●解析項目:Impulse Response / ETC (Energy Time Curve)
●測定距離:10 cm
●帯域条件:3 kHz ~ 96 kHz(Butterworth HPF 2次 ×2、LPFなし)
●サンプリング周波数:192 kHz
●正規化条件:ピーク正規化
同様に、Mundorf AMT21CM2.1-C、Dayton Audio AMT2-4、および VCD方式の VCD-DT63 の3種類のトゥイーターについて、ETC(Energy Time Curve)を重ねて表示し、それぞれの特徴について以下に記述します。
■初期減衰(0~200µs)
各方式の初期減衰特性の差は明確に確認されます。
まとまりの観点では、AMT21CM2.1-C の方が AMT2-4 よりも良好であり、AMT2-4は 初期エネルギーの残存時間がやや長く、時間方向への分散が大きい傾向が見られます。
一方、VCD-DT63はピーク後の減衰が最も急峻であり、約200 µs付近で既に−30 dB近くまで低下しており、エネルギーの時間集中度の高さが確認されます。
■約100~400µsに現れる周期的な山谷
AMT方式の特徴:複数の周期的な山谷が継続して観測され、エネルギーが時間方向に分散している様子が確認されます。
このような周期的な山谷は、蛇腹構造に起因する複数の振動モードの存在により、各折り部が完全に同時に停止せず、エネルギーが時間的に分散して放出されるためと考えられます。その結果、Impulseエネルギーは単一のピークに集中せず、複数の時間成分として現れる傾向を示します。
■中期減衰(200~500µs)
Impulse Response、ETC、STEP Response の中でも特に重要な領域であり、この領域の減衰特性は ETC の −40 dB 到達時間として表れ、空間の透明感や広がり、音場の見通しに大きく影響します。
AMT21CM2.1-C および AMT2-4 では残留エネルギーが明確に現れており、複数の山谷が継続して観測されます。
一方、VCD-DT63 はこの領域でも減衰が速く、約380 µsで−40 dBに到達し、その後も比較的滑らかに減衰を続けています。
AMT方式の特徴:AMT方式では複数の山谷が継続して観測されます。これは、蛇腹構造に起因する複数の振動モードや内部反射の影響により、エネルギーが断続的に再放出されているためと考えられます。
■約300~800µsの断続的なエネルギー再上昇
AMT方式の特徴:AMT21CM2.1-C および AMT2-4 では、減衰途中に複数の再上昇ピークが継続して観測され、エネルギーが断続的に再放出されている様子が確認されます。これは、蛇腹構造に起因する面内振動と複数の振動モードに加え、バックチャンバー内の音圧変動や反射成分が振動膜に再作用することにより、エネルギーが時間的に分散して放射されるためと考えられます。
■後半領域(0.7〜2.2ms)
AMT方式の特徴:AMT21CM2.1-C では約1.5~1.8 ms付近まで比較的大きな山が継続し、AMT2-4 では約2.0 ms付近まで周期的な残留成分が続く傾向が見られます。これらは、振動体の内部振動およびバックチャンバー内での反射音が時間的に遅れて振動膜へ再作用し、前面へ再放射されることにより、エネルギーの減衰が長時間にわたって持続する現象と考えられます。
■総合評価
直接音ピークのレベル自体は3者で大きな差は見られませんが、その後のエネルギー収束挙動には明確な違いが確認されます。
AMT21CM2.1-C は初期減衰は比較的良好であるものの、約1.5~1.8 ms付近まで残留ピークが継続しています。
AMT2-4 は初期減衰が最も遅く、周期的な残留が約2.0 ms付近まで続く傾向が見られます。
これに対し、VCD-DT63 はエネルギーの時間的集中度が最も高く、最も短時間で減衰・収束する特性を示しています。
AMT方式の特徴:AMT方式では減衰過程において周期的な山谷が連続して現れる傾向が確認されます。これは、蛇腹構造に起因する複数の振動モードおよび内部反射の影響により、エネルギーが時間方向に分散して放出されるためと考えられます。
■STEP Response
STEP Response は、入力信号が瞬間的に立ち上がり、その状態が維持されたときに、出力が時間方向にどのように変化するかを示す特性です。
理想的な応答は速やかに立ち上がり、その後は振動することなく安定した状態へ収束します。
しかし、システム内に不要な反射や遅れが存在すると、出力には振動や揺れが生じます。これらは直接音に対して遅れて現れる成分(遅れた音)の影響として観測されます。
【測定条件】
●音響測定ソフト:REW(Room EQ Wizard)
●解析項目:Impulse Response / Step Response
●測定距離:10 cm
●帯域条件:3 kHz ~ 96 kHz(Butterworth HPF 2次 ×2、LPFなし)
●サンプリング周波数:192 kHz
●正規化条件:ピーク正規化
さらに、Mundorf AMT21CM2.1-C、Dayton Audio AMT2-4、および VCD方式の VCD-DT63 の3種類のトゥイーターについて、STEP Response を重ねて表示し、それぞれの特徴について以下に記述します。なお参考として、Mundorf AMT21CM2.1-C の製品に添付されている STEP Response を図3に示し、比較のため VCD-DT63 の特性を横軸は図3と同一スケール、縦軸は最大値に合わせて図4に示しています。
■立ち上がり(0~50µs)
立ち上がり初期においては、VCD-DT63 と AMT21CM2.1-C が比較的大きなピークを示しており、エネルギーが短時間に集中している傾向が確認されます。
一方、AMT2-4 はピークがやや低く、立ち上がりのエネルギー集中度は相対的に小さい傾向が見られます。
■1st Valleyの深さ(最初の谷)
AMT21CM2.1-C および AMT2-4 は −100%近くまで大きく落ち込んでおり、過渡応答において振動的な挙動が強く現れていることを示しています。
これに対し、VCD-DT63 は谷の深さが相対的に浅く、過渡振動が抑制された応答を示しています。
AMT方式の特徴: AMT方式では 1st Valleyが深く現れる傾向が確認されます。これは、蛇腹構造の振動体が空気を押し出した後、空気負荷および振動体の弾性によって強い逆方向の速度成分が発生するためと考えられます。その結果、振動系において振動的な過渡応答が顕著に現れる特性を示します。
■100~300µsの初期残留振動
STEP Responseにおけるこの領域は、ETCの−40 dB到達時間と同様に、各応答の中でも特に重要な領域です。オーバーシュート後の減衰の速さは、音場の明瞭度や静寂感に直接影響します。
AMT2-4 は比較的大きな周期振動が継続しており、AMT21CM2.1-C もそれに比べると抑えられているものの、明確な振動成分が残っています。
一方、VCD-DT63 は振幅が小さく、振動周期も短く、より速い減衰傾向を示しています。
AMT方式の特徴:複数の山谷が連続して観測されます。これは、蛇腹構造に起因する複数の振動モードにより、各折り部が完全に同時停止せず、時間的にずれて減衰するためと考えられます。その結果、STEP Responseにおいて周期的な振動成分として現れます。
■300~800µsの収束過程
AMT21CM2.1-C および AMT2-4 は、この領域においても複数の振動周期が継続して観測されます。特に AMT21CM2.1-C は約600 µs付近に比較的大きな再上昇が確認され、エネルギーの遅延的な再放出が示唆されます。
AMT2-4 も400~700 µsの範囲で周期的な振動が継続しています。
一方、VCD-DT63 はこの領域では振幅が大きく低下しており、収束が速い特性を示しています。
AMT方式の特徴:この領域に見られる再上昇成分は、振動体の面内振動およびバックチャンバー内の音圧変動や反射成分が振動膜に再作用することにより、エネルギーが時間的に遅れて放射されるためと考えられます。
■800µs以降の残留
AMT21CM2.1-C および AMT2-4 では約1 ms以降においても周期的な振動成分が継続して観測されます。
一方、VCD-DT63 はこの領域ではほぼゼロ付近に収束しており、残留成分は極めて小さい状態となっています。
AMT方式の特徴:これらの残留成分は、蛇腹構造に起因する複数の振動モードと内部空間での反射成分が重畳することにより、エネルギーが時間方向に分散して放出されるためと考えられます。
■総合評価
AMT21CM2.1-C は初期領域では比較的整った応答を示すものの、約600 µs付近に再上昇成分が残る傾向が確認されます。AMT2-4 は初期振動が最も大きく、その後の収束も比較的遅い傾向を示しています。
STEP Responseの観点では、VCD-DT63 は立ち上がりエネルギーの集中度が最も高く、その後の振動成分も最も小さく、短時間で収束する特性を示しています。AMT方式の特徴:AMT方式では、振動エネルギーが単一の時間点で消失するのではなく、複数の時間成分に分散して放出される傾向があり、この挙動が STEP Responseにおいても明確に現れています。