丘陵の複雑な地形は、豊富な水、生い茂る木々、粘土など数多くの資源をたたえていました。
多摩丘陵はそうした「恵」を求めて人々がやってくる場所でもあったのです。
人々は丘陵の恵みを活かした生業を営み、鉄、土器、木器など、さまざまなモノを作り出しました。
多摩丘陵の3つ目の顔に、光を当ててみましょう。
多摩丘陵では、古墳時代以降、鍛冶関連の遺跡が見つかるようになります。
鉄の原材料こそ採れないものの、炭の材料となる木々、谷を流れる川、炉を作るための粘土など、多摩丘陵には製鉄・鍛冶を行うにあたり好適な資源が揃っていました。
大型羽口
この大きな円錐形の土製品は、「羽口」と呼ばれる炉の通風管です。
どうしてこんなに大きいのか、その理由は未だ解明されていませんが、この羽口と共に出土している鉄滓や鉄塊の分析から、この遺跡では鋼を生産するための精錬(大鍛冶)が行われていたと考えられています。
鍛冶に関係する鉄滓
鉄滓 3点
鉄滓(鉄のカス)は、鉄をつくる際に生まれたものです。
Aは羽口先端に付くものが多いことから炉の底に溜まったもの、Bは片面に土壁から剥がれたような跡があるため炉壁に薄く付いたものであると考えられます。
CはAやBより鉄分を多く含んでいることから、銑鉄塊である可能性もあります。
羽口
多摩丘陵では、製品を作る鍛造や鉄製品の修繕といった小規模な鍛冶が各地で行われていました。
ここに掲載した羽口は、鍛冶関連遺構の見つかっている遺跡で出土したもので、羽口としては一般的なサイズのものです。
鍛冶に関係する鉄塊
A・B 鉄塊
C 鉄鏃