林家文書解読ボランティアの会

今回は、「林家文書解読ボランティアの会」の代表、松本文さんにご登場いただきました。旧姓小杉さんの松本さんは余市高校18期、当会(東京余市会)の毛利会長と同級生でした。

「林家文書 解読と研究 6号」表紙(PDF)


このボランティアの会はどんな活動をしている会ですか?

松本さん

皆さんは、余市の運上家をご存じですか?正確には「旧下ヨイチ運上家」と呼ばれるもので、文政8年(1825年)に松前藩から交易を請負った竹が嘉永6年(1853年)に建替えたものです。その竹屋林長左衛門家に代々残された交易の記録や日記が「林家文書」と呼ばれるもので、これを読み解き後世に伝えていくというのが我々の会の目的です。

その「林家文書」はどんな状態で保管されていて、どんな内容が書かれているのでしょうか?

松本さん

この「林家文書」は、私の母の従弟にあたる林睦郎さん(余市中学13期)がお父様の林孫蔵氏の名で余市町に寄贈されたもので、その後は余市水産博物館にマイクロフィルムで保管されています。林家は江戸時代には松前城下に本店を持つ商家でしたから、お城に上がってお仕事をした内容や、その当時の余市の人々の暮らしや漁業、交易の様子などが細かく書き残されています。

マイクロフィルムは全45巻あり、1巻にだいたい600コマ入っています。既に9巻が読み込まれて「余市町史」として発刊されていましたが、このまま残りの36巻が読まれずに埋もれてしまうのは惜しいという思いから駒木根恵蔵さんにご相談したところご理解をいただき、2005年にこの「解読ボランティアの会」を立ち上げていただきました。

そもそも古文書の解読は、とても難しく、時間がかかると思いますが、松本さんがそれに興味を持ち、積極的に参加されるようになった理由は何ですか?

松本さん

先の林睦郎さんから「林家文書解読会」への参加のお誘いをいただいたのが始まりですが、当時の私は平凡な主婦で、2児の母親でした。余市図書館でのこの講座で、昔から見知っていた台所と便所が共同の大きなアパートが、「旧下ヨイチ運上家」であることを知り驚きました。そしてこの講座に参加した10名前後の人たちで勉強会をつくることになったので、早速参加しました。講師の林睦郎さんや元余市高校の教師だった川端義平さんも参加され、そうした先生方の指導の下、辞書や辞典とにらめっこする毎日でした。夫が出張がちで時間があったことも幸いしましたね。

「林家文書 解読と研究 6号」(2021年11月発行)が私の手元にあります。115ページの大変立派な研究報告ですが、ここまでに至る経緯を教えてください。

松本さん

2005年以来、6冊を発刊しておりますが、当初は1年に1冊を目指しましたが、文書の分量が多いため、当時の方言や言い回しを紐解くにも大変苦労しました。10年目に第4号を発刊した際には、「北海道文化財保護功労賞」を受賞いたしました。こうしてマイクロフィルムで3巻分を読み解いてきましたが、まだ33巻(約18,000枚)が残されています。

これからの活動についてお聞かせください。

松本さん

会員の高齢化が進む中で、駒木根会長も体調を崩され引退され、現在は代表を務める私を含め会員は4名になってしまいました。それでも、江戸から明治にかけての余市の歴史の一片をもう少し明らかにしたいという思いから、毎月1回余市町中央公民館で例会を開いております。今回、これをご覧なった皆さんの中に古文書に興味を持たれてご一緒に活動していただける方が一人でもいらっしゃれば幸いです。連絡先は、電話番号090-623-5423(松本)です。

松本さん、ありがとうございました。今から4,5年前、お客様を案内して、久しぶりに運上家に出かけました。その時、入場券売り場の小窓から「やあ、元気?」と声をかけてくれたのが文さんでした。彼女は、ここ運上家や近くの福原漁場でボランティア活動をされています。きっと東京余市会の会員の中にも、彼女の案内や解説で、見聞を広めた方がいらっしゃるかもしれませんね。ご活躍をお祈りいたします。(加我)