余市町地域おこし協力隊員
實田有希(さねだゆうき)さん  


パートナーの方とともに昨年(2021年)3月に、地域おこし協力隊員として余市に移住してこられた、實田有希さん(38歳)にお話を伺いました。 


余市に来る前の職場で 

余市でこの春 

そもそも余市への移住を決心されたきっかけはなんでしたか? 

實田さん

2020年、コロナによる緊急事態宣言で当時店長を勤めていた東京のワインバーが休業になってしまいました。自宅に籠る日々が続く中でついパートナーとの諍いも多くなりました(笑)。これではいけないと思い、心機一転、「北海道のブドウ畑などでボランティア活動できないものか」と余市の登醸造の小西さんに相談をしてみました。小西さんからは「なんぼでもあるから、遊びにおいでよ」と言葉をかけて頂いたことから余市を訪ねてみようと思いました。

最初から、余市に移住する積りだったのですか 

實田さん

いいえ、まずは身体を動かして農作業をしたかったので、2020年4月に車で余市にきてエコビレッジやゲストハウス余市に泊りながら中長期のボランティア先を探しました。しかし、コロナ禍ということもあり、なかなか見つかりませんでした。

そんな中、小西さんからご紹介頂いた沢町の農業委員の井川さんが「使ってない元の納屋なら光熱費のみで貸してもいいよ」と受け入れて下さったので、まずは住まいを確保することが出来ました。そして仕事先の平川ワイナリーをご紹介いただきました。

實田さんは、ソムリエの免許をお持ちと聞きましたが、ブドウ栽培のお仕事は初めてでしたか 

實田さん

パートナーもワインエキスパートで、そのカッコ良い姿を見て自分もワインの勉強を始めました。神奈川県出身で湘南の海の家で長く働いていたこともあり日本ワインへの興味を持っていました。長野や山梨のワイナリーを毎週のように巡っているうちにどんどんのめり込み、2019年念願のソムリエ資格を取得しました。ただ畑で一から作る体験は余市が初めてです。 

移住を決めるほどの強いインパクトを得たという事ですね 

實田さん

平川ワイナリーで一月ほど貴重な体験をさせて頂きました。1週間ごとに1本頂くワインを地元の食材に合わせて試飲した瞬間、華やかな香り、そして果実味とスッキリとした酸に感動しました。「これは本当に日本で育てたブドウで醸造したワインなのか」と。日本でもこれだけ美味しいワインが作れるなら自分もブドウ作りから始めてみようと思いました。一旦6月に東京に戻りましたが、結局引き寄せられるように一月後の7月には余市に帰って来ていました。 

運命的な出会いがあったのですね(笑)   

實田さん

そこで余市町に地域おこし協力隊という制度があることを知りました。パートナーが経験を生かした広報関係の協力隊員を志望していましたので、ワイン関係の枠があれば自分もお願いしたいと役場の方に相談しました。役場のご担当も相当ご苦労されたと思いますが、2人とも最終面談に受かり、2021年4月揃って余市町の地域おこし協力隊員として着任することが出来ました。


差しさわりが無ければパートナーの方との出会いをお聞かせください 

實田さん

33歳の時、それまで「ノリと勢い」で仕事をしてきた事を振り返り「さて、自分はこれから何が出来るのか」と考えていました。丁度その頃飲食店の立ち上げのプロデュースをしていたパートナーと仕事を通じて知り合いました。「ご当地の食材と日本ワイン」が新しい店舗のコンセプトでした。これをきっかけとして自分もワインを深掘りする道を選び、今に至ったと思います。 


今後の展望や夢をお聞かせください 

實田さん

協力隊の仕事をしながらも、農地を取得してブドウ栽培をしたいと思っています。余市近郊に小さな都市型ワイナリーを作るのが夢です。小さいながらも安く泊まれる宿や余市のワインと食材が楽しめる飲食店も作ってみたいと思っています。  


確実に夢の実現に向かって歩まれていますね。ところで、私(加我)が最初に實田さんにお会いした際、「徳之島が故郷」と聞いておりましたが、そのあたりをお聞かせください  

實田さん

実は私は神奈川県生まれですが、両親は徳之島出身で、父は今も島に帰って生活しています。小学生のころから夏休みはずっと綺麗な海のある徳之島で過ごしていましたし、成人してからも思う事がある時は度々訪れていました。

将来移住するなら徳之島とさえ思っていたのに今は真逆の北海道に移住したのは私自身もビックリです(笑)。

でも海が綺麗で、魚介類や果樹・野菜など食に恵まれた余市でブドウ作りに励み、浜辺で仲間とBBQをしながらワインを飲めるのは何よりも贅沢なことだと思っています。余市に移住して本当に良かったと思っています。

實田さん、ありがとうございました。7月初めのある日、余市駅前のワインバーで、ワイナリー夢の森の大下さんに、そこでお手伝いをしていた實田さんを紹介して頂きました。日焼けで真っ黒になった笑顔を拝見し、つい「どちらのご出身ですか」と尋ねました。多分詳しい経緯を省いたうえで「徳之島です」とお答えになったのでしょうね。これから余市も實田さんの自慢の故郷に加えて頂けると嬉しいですね。ご活躍をお祈りいたします。(加我)