第11回 TMU進化生態セミナー

2019年 10月 25日 16:30- 首都大学東京 南大沢キャンパス 12号館102室 (map#25)

アリから学ぶ社会性行動を制御する分子基盤の解明

古藤日子 (産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 生物共生進化機構研究グループ)

昆虫は地球上のあらゆる環境下においても生息し、現存の陸生生物としてその数と種類から最も繁栄する生物の一つである。その中でも社会性昆虫であるアリ類は冷帯や高緯度地域を除くほとんどの生態系に生息し昆虫、植物、微生物といった多様な生物と相互作用をもつ。アリ類は女王、雄、及び労働アリからなる生殖カーストや、労働アリにおける労働分化カーストを備えた社会性構造を持ち、また興味深いことに我々ヒトを含む他の社会性生物にも共通する高度な社会性行動を示すことが知られている。その生物学的特性から、アリの生来もつ社会性行動や環境適応の生存戦略は他の生物にも共通する行動や環境適応応答の進化・起源を探る上でも非常に興味深く、私は分子生物学的アプローチによりその制御基盤の解明に取り組んでいる。本セミナーでは個体識別バーコードを用いた行動アッセイシステムを利用し、アリ類において他個体との社会的コミュニケーションが健康維持や生存にどのような生理的意味をもつのか、また昆虫においても進化的に保存されたオキシトシンバソプレシンファミリーに属するペプチドホルモンの生理機能に着目した社会性行動制御や環境適応の分子メカニズムについて紹介したい。


参考文献

Oxytocin/vasopressin-like peptide inotocin regulates cuticular hydrocarbon synthesis and water balancing in ants. PNAS 116, 5597-5606, 2019. doi: 10.1073/pnas.1817788116

2019年10月25日 16:30開始

南大沢キャンパス 12号館 102室