第10回 TMU進化生態セミナー

2019年 9月 22日 16:30- 首都大学東京 南大沢キャンパス 8号館306室 (map#23)

新規な求愛行動の獲得をもたらす神経メカニズム –プレゼントをあげるショウジョウバエを用いた研究–

田中 良弥 (名古屋大学大学院 理学研究科 生命理学専攻)

新規な行動様式の獲得は、新たなニッチの開拓や生殖隔離を介して動物の種多様性の維持に寄与している。しかし、行動を制御する仕組みの複雑さから、その進化的獲得に関わる神経メカニズムの理解は進んでいない。私たちは、モデル種であるキイロショウジョウバエと同属で且つユニークな求愛行動を示すショウジョウバエ種(Drosophila subobscura)に着目することでこの問題にアプローチしている。Drosophila subobscuraのオスは交尾に至るまでに吐き戻した消化管の内容物をメスに与える婚姻贈呈を示す。こうした婚姻贈呈は同属他種では観察されていないことから、本種において新規に獲得された求愛行動様式であると考えられている。

私たちはゲノム編集法によって神経回路を可視化・操作する技術をD. subobscuraに適用し、キイロショウジョウバエの知見と比較することができれば、新規な行動様式の獲得をもたらす神経機構を明らかにできるのではないかと考えた。本発表では、婚姻贈呈の獲得をもたらす仕組みについて紹介するとともに神経生物学が進化生態学に与え得る影響について議論したい。


2019年9月22日 16:30開始

南大沢キャンパス 89号館 306室