建築基準法では200㎡を超える床面積を劇場や病院、ホテル、共同住宅、百貨店などの「特殊建築物」と呼ばれる用途に変更する場合、確認申請を行う必要があります。逆に言うと、200㎡以下であれば用途変更の確認申請を行う必要がなく、確認検査機関など第三者によるチェックが入らずに自己責任で用途変更を行うことになります。
これを悪用して検査済証がない建物の用途変更を行う例があるようです。検査済証がない建物は小規模な戸建て住宅などを除いてそもそも使用することができません。まして用途変更の確認申請を行うことができない訳ですが、用途変更をする床面積を200㎡以下に抑えることで確認申請手続きを回避し、行政による違法建築の摘発に限界があることをいいことに用途を変更して建物を違法に使用してしまう訳です。
ところが、検査済証がないことが結局問題になるケースがあります。昨今の保育施設の不足やインバウンド客の増加などを背景に既存建物を保育施設や宿泊施設に用途を変更する計画を進められている方が多いかと思います。中には立地や価格などから検査済証がない建物の用途変更を検討されている方も多いでしょう。上述のように用途変更の床面積を200㎡以下に抑えて確認申請を行うことなく用途変更を行ってしまっても、保育施設であれば設置認可を、また宿泊施設であれば旅館業の許可を取る必要があります(※民泊施設については豆知識を一読ください)。実はこれらの許可は検査済証がない建物には下りないのです。
それではどうすれば検査済証がない建物で許可を取ることができるようになるのでしょうか?
そこで登場するのが「ガイドライン調査」になります(ガイドライン調査については以前の記事「ガイドライン調査とは?」をお読みください)。ガイドライン調査を行い既存建物の遵法性を確認し、是正すべき項目があればそれを是正することによって保育施設の設置許可なり、宿泊施設の旅館業許可を取得することが可能になります。
【豆知識:民泊施設】
住宅を民泊新法(住宅宿泊事業法)に基づく民泊施設に変更するには用途変更の確認申請が不要で都道府県知事等への届け出を行うことで民泊事業を始めることができます。ところが、検査済証がない建物の場合、届け出が受理されないのです。
この問題を解決するにはガイドライン調査を行い、是正すべきは是正することで建物の遵法性が確保されたことが確認されたのちに届け出を完了することができます。
弊社では、建物を民泊施設に用途を変更する手続きを進めていたが、検査済証がないために手続きが止まってしまった方から相談を受け、ガイドライン調査を行い民泊施設の届け出が行えるようになった実績が多くあります。