現在は容積率によって建物のボリュームが規制されていますが、1970年に建築基準法が改正されるまでは絶対高さによる制限が行われていました。
そのため、1970年以前に建てられていた建物を建て替えようとすると、既存の建物よりも床面積が小さいものしか建たないケースがあります。
一例を挙げると、市街地の中心部で元々31mの絶対高さ制限が敷かれていたエリアで高さ制限目一杯の10階建てくらいの建物を建てていたものの、その後に例えば容積率が600%に指定されたために建て替えると6階建てくらいの建物になってしまうケースです。テナントビルであれば、単純化すると貸床面積が6割に減少してしまうわけで、収益に直結するので困りますよね。
そもそも1970年以前に建てられた建物ですので、築年数が50年以上経ち、建物の耐震性はもとよりプランの使い勝手や老朽化した設備など数々の問題を抱え、周辺の最新ビルと比べて低い賃料単価を余儀なくされている訳ですが、改修を行って建物の床面積を減少させることなく高単価で貸すことができればいいですよね。
ただし、問題を更に悪化させるケースとして、この既存建物が「検査済証」を取得していない場合があります。この場合、新たな確認申請手続きを必要とする「大規模修繕」や「大規模模様替え」を行うことができません。また、今今のテナント需要に合う様に建物の用途を変更しようにも新たな確認申請手続きを必要とする規模の用途変更を行うことができません。
そこで登場するのが「ガイドライン調査」になります(ガイドライン調査については以前の記事「ガイドライン調査とは?」をお読みください)。ガイドライン調査を行い既存建物の遵法性を確認し、是正すべき項目があればそれを是正することによって新たな確認申請・完了検査手続きに進むことができ、改修工事を行えばマーケットが求める水準の使い勝手や設備を備える建物に生まれ変わらせることが可能です。
下記のエリアでは、古い建物が多く、絶対高さ制限の時代に建てられた建物が多く残っており、現在の基準で建て替えると床面積が減少するケースがしばしば問題となっています。都市計画情報を調べて容積率が600%以下に設定されている商業地域の1970年以前に竣工した建物に目を付けて検討を行うと、とんだ掘り出し物物件を見つけられるかもしれません。
・日本橋エリア(東京)
・神田エリア(東京)
・中区エリア(横浜)
・栄エリア(名古屋)
・心斎橋エリア(大阪)
・天神エリア(福岡市)
・博多エリア(福岡市)
【豆知識:絶対高さ制限】
絶対高さによる制限は、1919年に制定された市街地建築物法(建築基準法の前身)で定められたもので、住居地域では約20m、住居地域以外の用途地域では約31mに高さが制限されていました。
高さ制限を設けたのは、市街地の採光、通風の確保、人口過密の防止、火災、震災等の災害防止、道路等の交通容量のコントロールなどを目的としたものと言われています。
1970年の建築基準法改正で容積率による制限が全面導入され、建物のボリュームは主に容積率によってコントロールされるようになりました。