ウニの成熟制御に関する研究 

ウニの可食部は生殖巣(雌では卵巣、雄では精巣)です。ウニは,卵形成や精子形成に必要な栄養を生殖巣内の栄養細胞にあらかじめ蓄えておき、産卵期が近づくとこの栄養を利用しながら成熟します。栄養細胞に十分な栄養を蓄積して肥大した成熟前の生殖巣が食品として好まれ、成熟が進むと生殖巣から卵や精子が溢れ出す「身溶け」や味の劣化によって品質が損なわれます。養殖を行う場合、成熟を抑制すれば品質低下を回避して出荷期間を延ばすことが可能です。ウニの成熟は光周期(昼夜の明暗周期)の影響を受けることが明らかにされており、光周期を適切に調節しながら飼育すれば、成熟を抑制して長期間にわたって品質を維持できることがわかってきました。現在は、光条件がウニの成熟に及ぼす影響を詳細に調べ、より効率的に成熟を抑制できる条件を見出し、低コストで実用性の高い養殖手法を開発することを目指しています。 

北日本の重要種であるキタムラサキウニ
(A) 殻を割る前。(B) 殻の内側に貼りつく5房の生殖巣。未成熟で品質の良い生殖巣。(C) 外観からは雌雄は不明。(D) 顕微鏡で観察すると,生殖巣の内部には栄養細胞が充満。縁辺部に卵母細胞が散在するので雌。成熟し,品質が低下した生殖巣。(E, F) 卵巣からは卵(E),精巣からは精子(F)が溢れ出す「身溶け」が起こり,味も劣化。(G, H) 栄養細胞は蓄えていた栄養を失って縁辺部に小さく残るのみ。中央部には卵(G)や精子(H)が充満。