2023.11.30~12.12予定 UAEドバイ 12.01~02 首脳級会合。12.08~閣僚級の交渉。
◆COP28をめぐる情勢
「地球沸騰」の時代 23年は観測史上最も暑い年となる。南極の氷の面積は過去最少となり、海面上昇ですでに複数の島が水没した。一方で干ばつや熱波が猛威を振るう。 世界の平均気温はすでに1.1℃上昇し、9月は1.8℃、11月17日には2℃を超えた。各国の対策が進んだとしても、今世紀末には2.5~2.9℃に達する見通しだ。IPCCによると、GHG排出量を35年に19年比で60%減らす必要がある。「この10年の対策が数千年先まで影響する」訴える。
22年のCO2の排出量は前年比1.2%増え、368億トンと過去最高。23年もさらに最多を更新する見通し。気温上昇を1.5℃以内に抑えるパリ協定の目標の達成にはわずか7年後の30年に10年比で45%の削減が必要となる。国連の試算では8.8%増える。国連環境計画(UNEP)は、このままでは今世紀末に産業革命からの気温上昇が2.9℃に達する恐れがあると警告。米シンクタンク世界資源研究所などのチームの報告書:このままでは1.5℃に抑えるという「パリ協定」の目標実現が困難。1.5℃目標の実現には、25年までにGHGを減少に転じさせ、CO2は30年に19年比43%、35年には60%減らす必要がある。
発電量に占める石炭火力の割合は縮小ベースが遅い:2010年の40%から22年には36%に減ったが、30年には4%まで下げる必要がある。発電1kWhあたりのCO2排出量も低下傾向だが、30年には現状の5分の1以下に大幅に減らさなければならない。
◆課題
世界全体の気候変動対策の進捗を評価し、各国に対策強化を促す「グローバルストックテイク」という取り組みが初めて行われ、その上で、3つの課題が提起されている。
①再エネ容量を30年までに22年の3倍に増やす。エネルギー効率を2倍にする。118カ国が賛同、誓約する(12.02時点)。少なくとも110億kWにする。
原発の容量を、2050年までに3倍化するとの米国の宣言に、日本・韓国・英国など22カ国が賛同。これについて国際的な環境NGOが声明を発表し「原発は不安定で危険な上に、経済合理性にも欠ける電源で、世界のリーダーたちは、近年の原子力産業の失敗に学んでいない。気候危機に立ち向かうには一刻も早い化石燃料の廃止が必要だ」と批判するなど、反発も上がっている。
②化石燃料の段階的に廃止する―この合意が得られるか。
1205付の合意文書草案では、「1.5℃目標にむけ、GHG排出量を2025年までに減少に転じさせ、30年までに19年比43%削減、35年までに60%削減する必要がある」「再エネの設備容量を22年比で3倍の110億kWに増やす」。これにたいし、化石燃料の段階的廃止には産油国が、石炭火力の急速な廃止案にはインドや中国が反対している。
③途上国への資金援助などはどうか。
「損失と被害(Loss & damage)」を支援する基金(昨年のCOP27で設置が決められた)について運用開始が合意された。議長国UAEとドイツが1億ドル(148億円)の拠出を発表、EU(ドイツ含め363億円・2億2500万ユーロ、2億4500万ドル)日本は1000万ドル(15億円)、英国(最大6000万ポンド・約110億円、75億円)、米国(1750万ドル・26億円)も支援の方針を表明した。「損失と被害(Loss & damage)」について、損失は被害のうち賠償や修復が不可能なもの。被害は修復可能なもの。
再エネ拡大などを支援する件 未定。必要な資金は30年代初頭に年4.5兆ドルと現状の2倍を超す。国連環境計画(UNEP)は、適応策に必要な資金は、途上国だけで最大で年3660億ドル(約55兆円)
不足しているとの報告書を公表、先進国は09年のCOP15(コペンハーゲン)で、途上国での排出削減や適応策のために20年までに1000億ドル拠出することを約束したが、期限を過ぎても達成できなかった。この1000億ドルとは、被害支援のための基金とは別のもの。
脱石油・天然ガス廃止をめざす有志国の連合体「ビヨンド石油・ガス同盟(BOGA)は、石油ガスからの脱却のための第1弾の支援として、ケニアとコロンビアに100万ドル(約1億5千万円)を拠出する。
重大な問題点:世界各国の化石燃料への補助金は22年だけで、減税などの間接のコストも含めるとおよそ7~10兆ドル(約1000~1430兆円)と過去最高。ウクライナ危機前の20年比で1.4倍増えた。日本は6兆円を予算措置したガソリン補助金などもその代表例だ。グテレス国連事務総長は「化石燃料への補助金をクリーンエネルギーや雇用対策に回すべきだ」。再エネの普及に加え、化石燃料の利用拡大を大胆に減らさなければ排出の大幅減は実現できない。
◆日本政府の対応の問題点
G7で石炭火力の廃止を表明しない唯一の国。
日本の授賞(4年連続)理由について、「気候行動ネットワーク(CAN)」は、岸田首相が「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」の枠組みの下で世界の脱炭素化を進めていると発言したことに対し、「『グリーンウオッシュ』(見せかけの環境配慮)に他ならない」と指摘。アンモニアや水素は単独で燃やせばCO2は出ないが、日本はそれらを化石燃料と一緒に燃やす技術をAZECの下で、東南アジアで普及させることを想定しており、「化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を遅らせる」と批判した。
米国については、歴史的に最大の温室効果ガス排出国なのに、気候変動による「損失と被害」を支援する基金への拠出が1750万ドル(約26億円 1㌦148円)で、イスラエルやウクライナへの軍事支援の比べてわずかだとして「偽善の極みだ」と批判した。ニュージーランドについては、新政権が先住民の意向を無視して海域での石油やガスの探査再開の計画を発表したことを批判。
伊藤信太郎環境相は「(再エネを30年までに)世界で3倍であり、各国に3倍を求めているわけではない。日本では3倍にできる容量があるとは考えていない」と述べ、必ずしも日本が再エネを3倍に増やす必要はないとの認識を示した。現行のエネルギー基本計画では、30年の再エネ発電容量は21年の1.7倍程度にとどまる。それすら実現は危ういとみられ、導入加速へ国際的な圧力が強まる可能性がある。IPCCの報告書作りにも携わった日本の専門家は「1.5℃の目標は降ろすべきではないが、最終的に2℃以下なら合格点ではないか」と本音を漏らす。
日本の石炭火力継続に、国際的に批判が強まっている。米国やフランスが主導して立ち上げた脱石炭の有志国連合にG7で唯一参加しない国となっている。アンモニアだけを燃やす商用化は2040年代、50%混焼ではガス火力発電よりもGHGを多く排出する。
◆日本の電力の発電分野別割合
日本は、21年10月閣議決定した現行のエネルギー基本計画で、30年度に再エネ比率を36~38%に引き上げた。(22年度21.7%)、それまでは、22~24%の目標であった。