日時:2025年5月17日(土)14:00~15:30
会場:オンライン開催(Zoom)
報告者:粟田 武斗(九州大学大学院地球社会統合科学府修士課程修了)
報告題名:「働きに見合った待遇の要求は不平等を拡大させるのか――分配的正義論におけるデザート主義の擁護」
討論者:田中 将人(岡山商科大学)
参考文献:
[1]田中将人(2025)『平等とは何か――運、格差、能力主義を問いなおす』中央公論新社(特に第3章)。
[2]大澤津(2025)『仕事の正義』弘文堂(特に第1,2章)。
[3]Miller, David (1999) Principles of Social Justice, Oxford University Press(特に第4,9章).
[4]Mulligan, Thomas (2018) Justice and the Meritocratic State, Routledge(特に第6章).
日時:2025年2月15日(土)14:00~17:00
会場:オンライン開催(Zoom)
開催趣旨:
10年余り「一強多弱」の構図が続いてきた日本政治は、2024年の衆院選によって少数与党政権が生じたことで大きく変化し、国会は久しくなかった緊張感と不透明感に包まれている。こうした状況下で議会政治のあるべき姿を再考するにあたり、岡﨑晴輝氏の新著『新しい政治改革へ――国会を市民の手に取り戻す』(法政大学出版局、2024年)は、きわめて重要な参照点となりうる。同書は、過去の選挙制度改革を詳細に検証・批判し、民意反映と政権選択を両立させる「多数派優遇式比例代表制」を主張する。さらに、参議院の「抽選制市民院」への移行や、「抽選官僚制」の構想なども提唱しており、分野横断的な議論を喚起する意欲作である。そこで本合評会では、政治思想・現代日本政治を専門とする大井赤亥氏、民主主義理論を専門とする酒井萌絵氏、憲法学・選挙制度論を専門とする小林宇宙氏の3名を評者に迎え、著者とともに多角的な観点から議論を深めたい。
日時:2025年1月25日(土)14:00~15:30
会場:オンライン開催(Zoom)
報告者:小野 藍(九州大学大学院地球社会統合科学府博士後期課程)
報告題名:「特定の土地に対する占有権は集団的権利か個人的権利か――アンナ・スティルツの規範的領土論の批判的検討を通じて」
討論者:福原 正人(高崎経済大学・フェリス女学院大学)
参考文献:
1)Stilz, A. (2024) “Territory and Self-Determination,” Annual Review of Political Science, 27, 337-354.
2)Moore, M. (2020) “Territorial Rights and Territorial Justice,” The Stanford Encyclopedia of Philosophy (Summer 2020 Edition), Edward N. Z. (ed.), https://plato.stanford.edu/archives/sum2020/entries/territorial-rights/
3)小野藍(2024)「愛着に基づく領土権の正当化理論序説――特定の土地への権利を擁護できる領土論の構築に向けて」『政治研究』(71)、1-33.
4)Stilz, A. (2019) Territorial Sovereignty: A Philosophical Exploration. Oxford: Oxford University Press.
日時:2023年3月9日(木)14:00~15:30(*終了後に懇親の時間を設けます)
会場:オンライン開催(Zoom)
報告者:安中 進(弘前大学)
報告題名:「無意識データ民主主義の検討――智者政・熟議の観点から」
討論者:田村 哲樹(名古屋大学)
報告概要:成田悠輔『22世紀の民主主義』が大きな反響を呼んでいるが、この書物の内容を22世紀の空想のように捉えるのではなく、21世紀の学術的水準から先行研究の中に位置付け、その可能性と問題点を探る。その際に、無意識データ民主主義と同様に現代の民主主義の置かれた状況に対する処方箋として存在する智者政や熟議と比較しながら検討する。本報告の結論は、人間が現代のような姿として存在している限り、政治的意思決定が仮に自動化されたとしても、最終的に人間による民主的な(熟議的な)システムを中心とする監視の必要性が避けられないという無難なものである。
参考文献:
1)成田悠輔『22世紀の民主主義――選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』SBクリエイティブ、2022年
2)東浩紀『一般意志2.0――ルソー、フロイト、グーグル』講談社、2011年
3)ジェイソン・ブレナン『アゲインスト・デモクラシー』井上彰ほか訳、勁草書房、2022年
4)谷口将紀/宍戸常寿『デジタル・デモクラシーがやってくる! ――AIが私たちの社会を変えるんだったら、政治もそのままってわけにはいかないんじゃない?』中央公論新社、2020年
5)ロブ・ライヒ/メラン・サハミ/ジェレミー・M. ワインスタイン『システム・エラー社会――「最適化」至上主義の罠』小坂恵理訳、NHK出版、2022年
6)Lucy Bernholz, Hélène Landemore, and Rob Reich eds., Digital Technology and Democratic Theory, University of Chicago Press, 2020
7)Jason Brennan and Hélène Landemore, Debating Democracy: Do We Need More or Less? Oxford University Press, 2021
日時:2021年12月22日(水)19:00~20:30
会場:オンライン開催(Zoom)
報告者:藤原 拓広(九州大学大学院地球社会統合科学府博士後期課程)
報告題名:「リベラル・ナショナリズムに基づくグローバルな正義論の問題点――デイヴィッド・ミラーの「正義をめぐるズレ」論の批判的検討」
参考文献:
[1] Miller, D. (1995) On Nationality, Oxford: Clarendon Press. 〔富沢克・長谷川一年・施光恒・竹島博之訳『ナショナリティについて』、風行社、2007年〕
[2] Miller, D. (2007) National Responsibility and Global Justice, Oxford: Oxford University Press. 〔富沢克・伊藤恭彦・長谷川一年・施光恒・竹島博之訳『国際正義とは何か――グローバル化とネーションとしての責任』、風行社、2011年〕
[3] Miller, D. (2013) “Social Justice versus Global Justice?” in his Justice for Earthlings: Essays in Political Philosophy, Cambridge: Cambridge University Press, pp. 165-182.
日時:2021年9月2日(木)15:00~16:30 (*終了後に懇親の時間を設けます)
会場:オンライン開催(Zoom)
報告者:發田 颯虎(東京大学大学院法学政治学研究科)
報告題名:「可能世界を参照する自由論」
報告概要:非支配としての自由や独立としての自由と呼ばれる構想は、行為への実際の干渉actual interferenceだけではなく可能な干渉possible interferenceをも不自由の源泉としてカウントする「頑健性テーゼ」によって特徴づけられる。本報告では頑健性テーゼに向けられてきた、①不可能性批判②道徳化批判③代替案による批判という3種類の批判への応答を通じて、頑健性テーゼの中でも批判を回避できる最善の構想を明らかにすることを目指す。
参考文献(報告内容の背景知識を補完するのに役立つものをいくつか列挙しています):
[1] List, Christian & Valentini, Laura (2016). Freedom as Independence. Ethics 126 (4):1043–1074.
[2] Carter, Ian & Shnayderman, Ronen (2019). The Impossibility of “Freedom as Independence.” Political Studies Review 17 (2): 136–146.
[3] Ingham, Sean & Lovett, Frank (2019). Republican Freedom, Popular Control, and Collective Action. American Journal of Political Science, 63 (4): 774-787.
[4] Schmidt, Andreas T. (2018). Domination without Inequality? Mutual Domination, Republicanism, and Gun Control. Philosophy and Public Affairs 46 (2):175-206.
[5] 大森秀臣 (2013). 「優しき巨人は自由侵害の夢を見るか?―共和主義対消極的自由論の新展開」平野仁彦・亀本洋・川濱昇編『現代法の変容』有斐閣. pp. 505-39.
日時:2020年12月17日(木)19:00~21:00
会場:オンライン開催(Zoom)
日時:2020年11月17日(火)20:00~21:30
会場:オンライン開催(Zoom)
報告者:豊田 紳(アジア経済研究所)
報告題名:「選挙の弊害を矯正する公職者選抜制度としての『選挙くじ引き制』の提案ーメキシコの事例を交えて」
参考文献:
1)Manin, Bernard. 1997. The Principles of Representative Government, Cambridge University Press.
2)Dowlen, Oliver. 2008. The Political Potential of Sortition: A Study on the Random Selection of Citizens for Public Office. Exeter, UK: Imprint Academic.
3)山口晃人. 2020. 「ロトクラシー: 籤に基づく代表制民主主義の検討」『政治思想研究』 20: 359 – 392.
4)Wilkinson, Steven I. 2004. Votes and Violence: Electoral Competition and Ethnic Riots in India, Cambridge University Press.
日時:2020年9月10日(木)15:00~18:00
会場:オンライン開催(Zoom)
〈第1報告〉
報告者:鈴木 知花(一橋大学・院)
報告題名:「福祉の理念としてのケアの倫理を社会政策へと架橋する——日本の障害者政策を例として」
参考文献:
岡野八代(2012)『フェミニズムの政治学——ケアの倫理をグローバル社会へ』みすず書房
Kittay, E. F. (1999) Love’s Labor: Essays on Women, Equality, and Dependency, Routledge.(=岡野八代・牟田和恵訳(2010)『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』白澤社)
Nussbaum, M. (2006) Frontiers of Justice: Disability, Nationality, Species Membership, Belknap Press(=神島裕子訳(2012)『正義のフロンティア——障碍者・外国人・動物という境界を越えて』法政大学出版局)
〈第2報告〉
報告者:川鍋 健(早稲田大学)
報告題名:「アメリカ憲法学における人民主権論」
参考文献:
川鍋健「人民の、人民による、人民のための憲法:アキル・リード・アマールの憲法論から」、一橋法学17巻2号、2018年、435頁以下。
川鍋健「新たな憲法解釈の誕生:チャールズ・L・ブラックの議論から」、一橋法学19巻2号、2020年7月公刊予定、189頁以下
川鍋健『人民主権と違憲審査:イェール学派の憲法学から』、一橋大学、博士号取得論文、2019年。
日時:2020年3月15日(日)14:00~18:10 16:00
会場:法政大学大学院棟 3階 303教室
〈第1報告〉
報告者:小川 亮(東京大学・院)
報告題名:「民主主義という他律」
参考文献:
1 Christoph Moellers, “Separation of Powers”, in The Cambridge Companion to Comparative Constitutional Law, Roger Masterman and Robert Schuetze (eds.), Cambridge University Press, 2019.
2 ブルース・ブエノ・デ・メスキータ、アラスター・スミス(四本健二・浅野宣之訳)『独裁者のためのハンドブック』(亜紀書房、2013)。
〈第2報告〉※報告者高熱のため第2報告は中止となりました
報告者:福家 佑亮(京都大学)
報告題名:「支配なき統治」
参考文献:
1) Kramer, Matthew [2009] “Liberty and Domination,” in Laborde, Cécile, and John Maynor, eds. Republicanism and political theory, 31-57.
2) Carter, Ian [2009] “How are Power and Unfreedom Related?,” in Laborde, Cécile, and John Maynor, eds. Republicanism and political theory, 58-82.
3) Pettit, Philip [2009] “Republican Freedom: Three Axioms, Four Theorems, ” in Laborde, Cécile, and John Maynor, eds. Republicanism and political theory, 102-130.
4) Simpson, Thomas [2017] “The impossibility of republican freedom.” Philosophy and Public Affairs 45, 27-53.
5) Lovett, Frank, and Philip Pettit [2018] “Preserving republican freedom: a reply to Simpson.” Philosophy & Public Affairs 46, 363-383.
6) Simpson, Thomas [2019]”Freedom and Trust: A Rejoinder to Lovett and Pettit.” Philosophy & Public Affairs.
日時:2019年9月11日(水)15:00~19:00
会場:法政大学大学院棟 6階 602教室
〈第1部:読書会〉
対象文献:『思想』2019年7月号の特集「政治思想史の新しい手法」(※対象文献を通読の上でご参加ください)
〈第2部:研究報告〉
報告者:大久保 歩(大阪大学)
報告題名:「フリードリヒ・ニーチェにおける「政治的なもの」再考」
参考文献(コメントは報告者より):
1. 森政稔「「ニーチェの政治学」 は存在するか」、『〈政治的なもの〉の遍歴と帰結―新自由主義以後の「政治理論」のために―』、青土社、2014年(初出1998年)、225-259頁。
本論文は、英語圏を中心に営まれてきたニーチェの政治思想研究を、大きな歴史的文脈に位置づけているだけでなく、ニーチェ自身の思想も政治思想の観点から簡潔に分析しています。
ニーチェの政治思想研究の導入としては、日本語で読める最良の文献だと思います。
2. Oliver Marchart, Die politische Differenz: zum Denken des Politischen bei Nancy, Lefort, Badiou, Laclau und Agamben, Berlin: Suhrkamp, 2010.
本書は以下の英語版の増補版です。
Post-Foundational Political Thought: Political Difference in Nancy, Lefort, Badiou and Laclau, Edinburgh: Edinburgh University Press, 2007.
本発表では、「政治的なもの」の概念について、主にオリヴァー・マーヒャートのここでの議論にもとづいて検討しています。
マーヒャートの標榜する「ポスト基礎づけ主義」の観点から、ニーチェにおける「政治的なもの」を再考することが、今回の発表の目的のひとつです。
3. 玉手慎太郎/田畑真⼀「ポスト基礎付け主義の問題関心」、田畑真⼀/玉手慎太郎/山本圭編『政治において正しいとはどういうことか―ポスト基礎付け主義と規範の行方―』、勁草書房、2019年、1-22頁。
ポスト基礎づけ主義の簡潔な導入として、本論文を挙げておきます。
4. エルネスト・ラクラウ『現代革命の新たな考察』、山本圭訳、法政大学出版局、2014年。
マーヒャートはラクラウの弟子筋にあたる人で、彼の「政治的なもの」の概念はラクラウのそれにかなり依拠しています。
本書の、特に第一章(「現代革命の新たな考察」)だけでも読んでいただければ、当日の議論がわかりやすくなると思います。
日時:2019年6月26日(水)17:00~19:00
会場:法政大学大学院棟 4階 402B教室
報告題名:「群衆の表象から群衆のネットワークへ:2011年以降の直接抗議行動と暴動の解釈」
報告概要:
2011年に世界中で起きた抗議行動や革命は、リーダー不在の、水平的で、組織のない、脱中心的運動であることが特徴として論じられた。しかし社会運動の実践における水平性は、1970年代の「新しい社会運動」論において既に指摘されていたことである。その意味で水平性や脱中心性を語るだけでは、もしくはそれを可能にしたインターネット技術について述べるだけでは、2011年以降の社会運動の新奇性を論じ尽くせていない。また2011年直後の抗議行動が花開いた多幸的な時期が過ぎた現在、理論的な関心だけではなく、実践的な観点から、リーダー不在の社会運動を礼賛するだけでは運動の持続性や影響力に限界があるとして、党や組織の重要性を再び主張する議論が現れている。
本報告は、2011年以降の諸運動について真に新しい点を、「ネットワーク」という概念が群集行動の分析に多用されたことにあると考え、特に「複雑ネットワーク」理論が群集行動の解析に活用されている研究状況を概観する(マニュエル・カステルやロドリゴ・ユネス、他)。2011年はスマート・モブやフラッシュ・モブなどの言葉が使われ始めて以来、初めて起きた世界的な社会運動の年だと言える。
その上で、ネットワーク理論による群集行動の分析は、群集の動員・拡大のメカニズムを説明するが、群集が政治経済の文脈で何を意味しているのかに関する群衆の表象については言及しない性質のものであることを指摘する。これを「群集の表象から群集のネットワークへ」と整理する。大衆における伝染、暗示、非合理性の問題として語られた19世紀の社会心理学寄りの群集論に対して、20世紀の群集行動に対する社会科学は、群集を背後にある社会経済的不満を代表して生じる現象と見做した。しかし今や群集は、背後にある社会経済的問題から説明されるのではなく、ネットワークの機序として生成する。
なぜ群集は表象されなくなったのか。報告の最後では、「表象からネットワークへ」の変遷が起きた理由を検討する。第1に抗議行動を観察し論じようとする知識人に見られる直接性(immediacy)に対する賛美、第2に群集自身が表象されることを拒否する身振りを示していることを取り上げる。前者の事例としてはオキュパイ・ウォールストリートをはじめ2011年に起きた社会運動とそれに対する評論を取り上げる。後者の事例としては2011年イングランドの暴動で「暴徒の顔が見えない」ことを取り上げる。しかしこれはイングランド暴動だけに該当することではなく、2000年前後の社会運動のイコンであったサパティスタのマルコス司令官が覆面である(顔が見えないようにしている)ことにも見られる。
参考文献:
本報告は、報告者の現代暴動研究(2011年イングランド暴動や2005年フランス暴動を例とする)のサイドストーリーとして作成中のものであり、以下にあげる参考文献は、本報告で直接扱えないが、密接に関係する先行研究が含まれている。
Dean, Jodi. 2016. Crowds and Party. London and New York: Verso.
Srnicek, Nick and Williams Alex. 2016. Inventing The Future: Postcapitalism and A World without Work. [revised and updated edition]. London and NewYork: Verso.
Unes, Rodrigo. 2014. Organisation of the Organisationless: Collective Action After Networks. Mute Books. [online PDF available].
以下、本報告では直接言及できないが重要なものとして。特に畠山(1994)。
畠山弘文(1992)「治安問題の社会的解釈と政治的再浮上―戦後イギリスにおける警察と治安の展開―治安と統治研究① 一九八一年春ロンドン・ブリクストン暴動以前」明治学院大学法学会『法学研究』49号、197-306頁.
――(1993)「イギリス的治安問題の形成過程(一)―反射鏡としてのスカーマン報告とその視座―治安と統治研究② 一九八一年ブリクストン暴動」明治学院大学法学会『法学研究』50号、61‐206頁.
――(1994)「イギリス的治安問題の形成過程(二)―スカーマン報告の理論的検討―治安と統治研究③」明治学院大学法学会『法学研究』55号、59-166頁.
日時:2019年3月6日(水)15:00~19:00
会場:法政大学大学院棟 6階 602教室
〈第1部:公刊論文の検討〉
趣旨:公刊された研究成果を対象に、その内容(あるいは着想、方法、今後の発展可能性など)について、著者をお招きして議論します。論文を読んで生じた疑問などを著者に直接お尋ねできる貴重な機会となりますので、専門分野にかかわらず奮ってご参加ください。
著者:木山 幸輔(日本学術振興会)
対象論文:木山幸輔(2018)「人権の哲学の対立において自然本性的構想を擁護する:チャールズ・ベイツによる批判への応答」井上達夫責任編集『法と哲学』第4号(2018年6月)、信山社、43-94頁。
論文要旨:本稿の目的は,近年英語圏において進展の進む人権の哲学の対立において,政治的構想から自然本性的構想へ向けられた批判に後者が応答しうることを示すことにある。本稿は,自然本性的構想への最も包括的な批判を行なっているC・ベイツによる自然本性的構想の伴う4つの主張の定式化,及びそれらへの批判を確認し,批判のそれぞれへ応答を示す。それらの応答の結論的主張は以下のようなものである。ベイツによる4主張の定式化を受け入れる種類の自然本性的構想であっても,当該の4主張への彼による批判に対して適切に応答しうる。例えば,本稿はそのような応答を可能にする概念的区別として,通時的な抽象的権利と社会的状況に依存する形でそれが表現される具体的権利の区別を導入し,彼の批判に応答しうることを示す。論末において,本稿の検討が人権の哲学の対立においてもつ意味が確認される。
キーワード:人権,人権の哲学,チャールズ・ベイツ,自然本性的構想,政治的構想,抽象的権利,具体的権利,一般的権利,特別的権利,自然権
参加条件:対象論文を通読の上でご参加ください。
〈第2部:研究報告〉
報告者:山口 晃人(東京大学・院)
報告題名:「ロトクラシー:籤に基づく代表制民主主義の検討」
報告概要:ロトクラシー(籤に基づく代表制民主主義)とは、立法府の代表者を選挙によってではなく、一般市民からの無作為抽出によって選ぶ制度構想である。選挙民主主義とロトクラシーの道具的価値を理想的な条件下と非理想的な条件下(現実的な条件下)で比較することを通じて、ロトクラシーの立法システムとしての妥当性を検討する。
参考文献(カッコ内は報告者のコメント):
1)Zakaras, A. (2010) “Lot and Democratic Representation: A Modest Proposal,” Constellations, Vol.17, No.3. pp.455-71.
(ロトクラシー論の主張がコンパクトにまとまった論文です。この論文を読んでおけばロトクラシー論者がどのような理由からロトクラシーを擁護しているかが理解できると思います。)
2)Guerrero, A. A. (2014) “Against Elections: The Lottocratic Alternative,” Philosophy and Public Affairs vol.42, no.2, pp.135-78.
(ロトクラシー関係で引用されることが多い論文です。第1節(pp.135-52)で選挙代表システムが強力な利害関係者によって歪められやすいことを指摘し、第2節以下(p.152-)で選挙代表システムの代替案としてロトクラシーを提案します。本報告との関連では、第2節以下の内容が重要になると思います。
3)Umbers, L. M. (2018) “Against Lottocracy,” European Journal of Political Theory. (pp.16-9の部分)
(タイトルの通り、ロトクラシーを批判する論文です。本報告と関連する箇所はpp.16-19の”Representation by Lottery”の節です。)
4)岡崎晴輝(2018)選挙市民審議会報告「『選挙・政治制度改革に関する答申』の検討──衆議院・参議院の選挙制度改革案を中心に」政治理論フォーラム。 http://politicaltheory.sblo.jp/article/184708041.html
(後半部分で参議院の改革案として抽選制市民院を提案しています。ロトクラシーについて具体的にイメージする上で参考になると思います。)
日時:2018年12月19日(水)17:00~19:00
会場:法政大学大学院棟 6階 602教室
報告者:徳田 太郎(法政大学大学院)
報告題名:「熟議システムと『民意』―国民投票、ミニ・パブリックス、社会運動」
報告概要:「民意」はどのようにして測り得るのか? 「民意」に基づく決定とはどのようなものか? 熟議システム論を手がかりに、またアイルランド「婚姻の平等」法制化過程を事例として、その一つの方向性を考察する。
参考文献:
1) 田村哲樹著 (2017)『熟議民主主義の困難―その乗り越え方の政治理論的考察』ナカニシヤ出版
2) Elkink, Johan A, David M. Farrell, Theresa Reidy and Jane Suiter (2016) “Understanding the 2015 marriage referendum in Ireland: context, campaign, and conservative Ireland,” Irish Political Studies (Online).
3) Farrell, David M., Clodagh Harris and Jane Suiter (2017) “Bringing people into the heart of constitutional design: The Irish Constitutional Convention of 2012–14,” Xenophon Contiades and Alkmene Fotiadou (eds.) Participatory Constitutional Change: The People as Amenders of the Constitution, Routledge.
4) Suiter, Jane, David M. Farrell and Clodagh Harris (2016) “The Irish Constitutional Convention: A Case of ‘High Legitimacy’?,” Min Reuchamps and Jane Suiter (eds.) Constitutional Deliberative Democracy in Europe, ECPR Press.
5) Tamura, Tetsuki (2014) “Rethinking Grassroots Participation in Nested Deliberative Systems,” Japanese Political Science Review (Online), Vol. 2.
日時:2018年6月15日(金)17:00~19:00
会場:法政大学大学院棟 4階 402B教室
報告者:河合 恭平(日本大学)
報告題名:「H・アーレントのソキエタス(societas)概念とアソシエーション論――ロック、モンテスキュー、トクヴィル解釈の検証を通じて」
討論者:上野 大樹(一橋大学)
参考文献:
1)Arendt, Hannah, [1963] 2006, On Revolution, Penguin Books.(=1995,志水速雄訳『革命について』筑摩書房.)特に、第4章、第5章第1節。
2)Arendt, Hannah, 1972, “Civil Disobedience,” in Crises of the Republic, Harcourt Brace & Company.(=2000,山田正行訳「市民的不服従」『暴力について』みすず書房.)特に、第3節以降。
3)Arendt, Hannah, 1959, “Reflects on Little Rock,” in Responsibility and Judgment, Schocken Books.(=2007,中山元訳「リトルロックについて考える」『責任と判断』筑摩書房.)
4)河合恭平,2014,「H・アーレントのアメリカ革命論と黒人差別の認識――「始まり」の恣意性と暴力に関連させて」『社会思想史研究』38: 184-203.
5)河合恭平,2012,「H・アーレントの共通世界と「活動」の暴力をめぐる関係――暴力への「境界」」としての公共性論」『年報社会学論集』25: 25-36.特に、第3節第2項(「約束」の項)
日時:2015年6月20日(土)16:00~18:00
会場:法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナード・タワー 1102教室
報告者:宮川 裕二(法政大学 博士後期課程)
報告題名:「「統治性研究」アプローチによる「新しい公共(空間)」政策言説の研究」
報告概要:
「新しい公共(空間)」政策言説は、1990 年代後半以降、日本の新たな国家・社会の改革・形成指針として採用され、各分野・各レベルに大きな影響を及ぼしてきた。多様性を含み込みながら類同的な概念として語られてきたそれは、さまざまな立場・見地から、賛否あるいは両義的評価がなされてきたが、いずれにせよ国家・政府の限界や権能の縮退を示しているという認識においては、ほぼ一致をみせている。しかし報告者は、それを「国家の空洞化」の現れと捉えるのではなく、新たな統治のあり方へのシフトと関わるものとの仮説を立て、その研究方法として「統治性研究」アプローチをとることとした。
本論の「統治性研究」とは、ミシェル・フーコーの1977-78、78-79年度コレージュ・ド・フランス講義を嚆矢とし、その後アングロ-サクソン諸国の社会学や政治学を中心に展開されてきたものを指す。そこでは統治(government)することとは「他者の行動の可能な領野を構造化すること」(フーコー)であるとされ、そのアプローチは現在を、「間接的テクニックによって個人を指導し統制する新自由主義的な統治形態」を軸とした「国家の統治能力の喪失というよりは、統治のテクノロジーの再編成と再構築」(トーマス・レムケ)に向かっているものと診断するものである。イギリスの政治社会学者ニコラス・ローズは、そのアプローチに基づいて、ブレア政権の「第三の道」の統治性・統治テクノロジーを「アドヴァンスト・リベラル」と特徴づけている。
本論は、まず「統治性研究」の先行研究を渉猟し、そのアプローチの視座に基づいて、「新しい公共(空間)」政策言説をめぐるポジションについて、①ロールバック新自由主義、②ロールアウト新自由主義、③左派、④参加型市民主義の4つの理念型を提示し、それぞれの代表的な論者の文献を分析して、それらがどのような論点を基軸としてそれに向き合っているのかを整理した。さらに、「新しい公共(空間)」政策言説の推進側に立っていたのは主に①②であり、対立局面はあっても相互補完的な両者間で主調が入れ替わりながら推進されてきたことが、その言説に揺らぎをもたらした主因であるとみなし、1997年から現在に至る、すなわち行政改革会議「最終報告」の「公共性の空間」から、民主党政権下の「新しい公共」と第二次安倍政権の「共助社会づくり」までの政府関係文書の分析を行った。そしてそのような検討を通じて以下のような結論を得た。
すなわち、「新しい公共(空間)」とは、アドヴァンスト・リベラル段階の自由主義統治性のもと、従前のケインズ主義的統治性下の政府と諸アクターとの関係設定を再編し、統治者としての政府が、被治者である諸アクターにより展開される様々な活動及びその効果を管理しようと意欲する、統治実践の領域であるとする。多様なアクターが、多様な戦略や政策ツールを用いながら、それぞれの利害関心―それは利己的とされることも利他的とされることもありうるし、また制度構築あるいはキャンペーンにより働きかけられたものであることもありうる―の実現を図ろうと自律的に行為し合う空間である(政府もこのレベルでは一アクターとなることがある)とともに、その活動と効果が人口の全体・国家に危険を及ぼすことを避け、その維持・増強に資するものとなるよう、政府により、主には間接的介入によって舵取りされるガバナンス空間、ということである。そして、そのような領域を形成するために、諸アクターの自由を生産し消費するような仕組みを整えるよう促したり、諸アクターが各種領域で活動できるような制度改革に向けて方向づけを行なったり、さらにこれが新たな日本社会・国家全体の指針であると国民の意識を涵養し活動へと促す機能を果たしたりするものが、「新しい公共(空間)」政策言説である、と。
参加にあたっての参考文献(*読了は参加の要件ではありません):
1)宇野重規 [2012] 「なぜ「ガバナンス」が問題なのか? ――政治思想史の観点から」東京大学社会科学研究所全所的プロジェクト研究「ガバナンスを問い直す」ディスカッション・ペーパー・シリーズNo. 22.
2)仁平典宏 [2011] 「ボランティアと政治をつなぎ直すために――ネオリベラリズム以降の市民社会と敵対性の位置」『ボランタリズム研究』1: 13-24.
3)高島拓哉 [2013] 「新しい公共(空間)」で公共サービスを劣化させないために」『大分大学経済論集』65(2): 27-54.
日時:2013年11月27日(水)17:00~19:00
会場:法政大学大学院棟 804教室
報告者:今橋 大輝 (法政大学)
報告題名:「政治的な生のスケッチ」
報告概要(予定): ヨーロッパの思想史において,法は,宗教や伝統的な慣習,自然法則といった,生きている人間には変更不可能なものではなくなり,逆に,生きている人間が自らの意志によって打ち立て,変えてゆくことができるものとなった.このような主張を軸に,本発表は,法,意志,そして現代の私たちの政治における「議論しえないもの(生命)」について論じることを試みる.政治と思想をどのように生きるのかについてのひとつの試論.
討論者:大久保 歩 (東京大学)
法政大学大学院政治学専攻委員会と共催
日時:2013年11月16日(土)17:00~19:00
会場:法政大学大学院棟 501教室
報告者:何 鵬挙 (法政大学 博士後期課程)
報告題名:「自民党政権時代における立法過程についての再検討――中日比較という視点から」
報告概要(予定):本報告では,自民党政権時代(一党優位期から連立期まで)の立法過程を法案の起草,与党審議,議事運営,審議過程の四つのサブ過程に分け,新制度論の観点から中国の立法過程との比較分析を行うことによって,立法過程が持った政治的意味を明らかにする.政権党が政権の維持・強化のために公式なルールの改正や非公式な慣行の形成を主導するとの仮説が正しいとすれば,政党システムが競合的であるか非競合的であるかにかかわらず,制度構築に影響力を保持する政権党の地位が長期にわたって維持された場合,構築される制度は似通ったものとなるであろう.報告ではこの仮説を検証し,制度の違いが存在するならば,それはどのような要因から説明できるかを検討する.さらに,その検証結果を踏まえて,自民党の政権陥落の背景についても考察を加えたい.
討論者:山口 希望(法政大学 博士後期課程)
法政大学大学院政治学専攻委員会と共催
日時:2013年7月27日(土)15時開始
会場:法政大学 大学院棟 801教室
テーマ:「社会的なもの」をめぐって
テキスト:市野川容孝/宇城輝人 (編) [2013] 『社会的なもののために』ナカニシヤ出版.
サブテキスト(併読推奨文献):
ロザンヴァロン, ピエール [1995=2006] 『連帯の新たなる哲学――福祉国家再考』北垣徹 (訳), 勁草書房.
カステル, ロベール [1995=2012] 『社会問題の変容――賃金労働の年代記』前川真行 (訳), ナカニシヤ出版.
ドンズロ, ジャック [2006=2012] 『都市が壊れるとき――郊外の危機に対応できるのはどのような政治か』宇城輝人 (訳), 人文書院.
市野川容孝 [2008] 『社会』岩波書店(思考のフロンティア).
山森亮 [2009] 『ベーシック・インカム入門――無条件給付の基本所得を考える』光文社(光文社新書).
濱口桂一郎 [2009] 『新しい労働社会――雇用システムの再構築へ』岩波書店(岩波新書).
市野川容孝 [2012] 『社会学』岩波書店(ヒューマニティーズ).
前川真行 [2012] 「洪水のあと――3・11以後のアナーキズムと社会国家」『社会思想史研究』(36): 27-49.
日時:2013年7月3日(水)17:00~19:00
会場:法政大学大学院棟 603教室
報告者:源島 穣 (筑波大学 博士後期課程)
報告題名:「『第三の道』の敷衍可能性」(仮)
報告概要(予定):イギリス労働党はなぜ「第三の道」路線を採択したのか.その要因はグローバル化の影響を抜きに語ることができない.グローバル化に対応しようとする政治アクターはしかし,各国において歴史的に形成された福祉国家の諸制度によっても規定される.本報告では,こうした複合的文脈に位置するヨーロッパ各国の左派政党を比較する観点から,1990年代以降のイギリス政治に接近する.理論的にはポスト・マルクス主義による社会民主主義批判や,多元的民主主義論などを踏まえ,具体的には分権改革などの事例に目を配りながら,現代における「第三の道」路線のポテンシャルを測定する.
討論者:佐藤 圭一 (一橋大学 博士課程)
法政大学大学院政治学専攻委員会と共催
日時:2013年5月8日(水)17時開始
会場:法政大学 大学院棟 201教室
報告者:松尾 隆佑 (法政大学 博士後期課程)
報告題名:「マルチレベル・ガバナンスの民主化と公私再定義――ステークホルダー対話を通じたデモクラシーの越境可能性」
報告要旨:
民主的正統性は常に不全である。第一に、政治的決定に正統性を与えるべき集団(デモス)の範囲自体は民主的に決められたものではありえないという原初的欠損が、第二に、決定が将来にわたって影響を及ぼしうる無際限な範囲(ステークホルダー)のすべてを決定過程に参与させることは望みようがないという遂行上の困難が、デモクラシーの可能性を本来的に枠付けている。そして、現代におけるグローバルな相互依存の深まりは、この可能性の幅をますます狭まつつあるように思える。
核兵器の脅威や金融危機、原子力発電所事故、地球温暖化、感染症など、国境や世代を超越して広範な波及性を持つ多くの問題を、私たちは知っている。国民主権やシティズンシップといった概念に象徴されるように、民主的決定は必ず何らかの境界線を前提とするデモスに依拠して行われるが、このデモスの構成が当該決定のステークホルダーと乖離すればするほど、民主的正統性は欠損の度を増す。決定の影響が本来予定されている境界線を越えて波及する場合、その民主的正統性はどのように確保されうるか。こうした古典的問いの重要性は失われるどころか、加速度的に高まっている。
とりわけ1990年代半ば以降のグローバル・ガバナンス論は、主権国家が単独では対処困難な地球的課題の解決のため、地域統合の促進や国際機構の発展に期待を寄せてきた(この点はデイヴィッド・ヘルドの「コスモポリタン・デモクラシー」論も例外ではない)。確かに地域機構・国際機構の成長はグローバルな公共的利益に少なくない貢献を為してきたが、近年のEU加盟諸国における反EU感情の発露に象徴されるように、トランスナショナルなガバナンスが実現すればするほど、民主的正統性の欠如が顕在化することになる(民主主義の赤字)。かつてロバート・ダールが指摘したように、越境的な問題への実効的・効率的な対処が可能な単位・主体と、その民主的正統性との間には、ジレンマが存在する。
他方、多国籍企業や国際NGOなど、公式の政治過程における正統化手続きを経ずに事実上の権力を行使する非政府主体の民主的統制も、喫緊の課題となっている。このような非政府主体の台頭は、社会のガバナビリティ(統治可能性)を低下させるもの――主権への挑戦――であると同時に、政府と協働して公共的課題の解決を担いうる主体の登場という意味で、ガバナビリティ(統治能力)の補完可能性を拓くものでもある。もっとも官民協働によるガバナンスに対しては、公私の区分を失わせかねないとの批判も寄せられ、理論的回答が俟たれている。
本報告では、ダールが提起したジレンマを解く手がかりを、「ステークホルダー共同体」に基づく多元主義たる「グローバル・ステークホルダー・デモクラシー」を提唱するテリー・ マクドナルドの議論に求め、批判的検討を施す。また、国連グローバル・コンパクト運動を例に、国家機能の拡大によらずにステークホルダー間の合意形成に基づこうとする討議的アプローチが、民間主体の事業過程そのものを政治化・民主化するとともに、公私の再定義をもたらす可能性を探究する。これらの作業により、デモクラシーを枠付けている境界線を――消し去るのではなく――越える方途を示すことが、本報告の目的である。
討論者:小林 昭菜 (法政大学 博士後期課程)
法政大学大学院政治学専攻委員会と共催
日時:2013年1月20日
日時:2012年11月24日(土)17時開始
会場:法政大学大学院棟 501教室
テーマ:政権交代後、震災後の政治をめぐって
開催趣旨:政権交代から3年以上,震災から1年半以上が経過した時点から,日本の政治と社会の現状を振り返ります.政権交代は失敗だったのか.震災や原発は,歴史的・思想的にどういう意味を持つのか.デモは社会を変えることができるか.小熊英二『社会を変えるには』を共通テクストに,自由な議論を行いたいと思います.幅広い方のご参加をお待ちしております.
共通文献:小熊英二『社会を変えるには』(講談社現代新書、2012年)
参考文献(参加の要件ではありません):
山口二郎『政権交代とは何だったのか』(岩波新書、2012年)
五野井郁夫『「デモ」とは何か――変貌する直接民主主義』(NHK出版、2012年)
湯浅誠『ヒーローを待っていても世界は変わらない』(朝日新聞出版、2012年)
日時:2012年9月29日(土)17時開始
会場:法政大学 大学院棟 501教室
報告者:松尾 隆佑 (法政大学 博士後期課程)
報告題名:「ステークホルダーの政治主体性――ステークホルダー・デモクラシーの理論化へ向けて」
日時:2012年8月25日(土)17:00開始
会場:法政大学 新見附校舎3F会議室1
テーマ:政権交代は何を残したのか
開催趣旨:
2009年の夏に実現した政権交代から、丸3年が立とうとしています。この間、経済危機や大震災が人々を襲う一方で、2人の首相が退陣し、マニフェストは撤回され、政権与党は分裂しました。「事業仕分け」のように国民の注目を浴びた試みもありましたが、「政治主導」や「子ども手当」など民主党が掲げていた構想や政策の多くは挫折・譲歩を余儀なくされ、震災・原発事故後の対応も多くの批判にさらされています。「友愛」や「最小不幸社会」などの理念が次々と忘れ去られていくなか、「国民の生活が第一」というもう一つの「忘れられた」理念にすがる勢力は、税と社会保障の一体改革で自民党・公明党との接近を図る野田政権に反発して、民主党を離れました。
混迷を続ける政治状況を見通すことはもとより困難ですが、これまでの歩みを振り返ることがその出発点になることは疑うべくもありません。良くも悪くも、歴史的な政権交代は政治環境に不可逆の変化を加えたはずであり、以後、私たちはそれが残したものと付き合っていく必要があります。政権交代の無残を嘆くばかりにとどまらず、ポスト政権交代の時代に残された正負の遺産を見極めることに努力し、どうしてこうなったのかの反省と、今後どうすべきなのかという展望に役立てたいと思います。
以上の趣旨に最適なテキストとして、本研究会では山口二郎氏の『政権交代とは何だったのか』を選びました。民主党伸長の立役者の一人でもあった同氏が政権交代以後を振り返った同書は、どのような立場の人にあっても、理念・制度・政策のいずれについても、活発な思考を触発してくれるはずです。同書を共通の叩き台としながら、参加者各位の多様な意見を自由にたたかわせることを希望します。
テキスト:山口二郎『政権交代とは何だったのか』岩波新書、2012年
サブテキスト(参加の要件ではありません):
新藤宗幸『政治主導――官僚制を問いなおす』(ちくま書店、2012年)
御厨貴編『「政治主導」の教訓――政権交代は何をもたらしたのか』(勁草書房、2012年)
樋渡展洋/斉藤淳編『政党政治の混迷と政権交代』(東京大学出版会、2011年)
大山礼子『日本の国会――審議する立法府へ』(岩波新書、2011年)
上神貴佳/堤英敬編『民主党の組織と政策――結党から政権交代まで』(東洋経済新報社、2011年)
菅原琢『世論の曲解――なぜ自民党は大敗したのか』(光文社新書、2009年)
吉田徹『ポピュリズムを考える――民主主義への再入門』(NHKブックス、2011年)
辻元清美『いま、「政治の質」を変える』(岩波書店、2012年)
湯浅誠「社会運動と政権」『世界』2010年6月号(805号)、33-40頁。
湯浅誠「社会運動の立ち位置──議会制民主主義の危機において」『世界』2012年3月号(828号)、41-51頁。
湯浅誠「内閣府参与辞任について」 『湯浅誠からのお知らせ』2012年3月7日。
森政稔「独裁の誘惑――戦後政治学とポピュリズムのあいだ」『現代思想』2012年5月号(40巻6号)、76-89頁。
日時:2012年7月28日(土)17:00開始
会場:法政大学大学院棟 603教室
報告者:坂井 晃介 (東京大学 博士課程)
報告題名:「ニクラス・ルーマンの政治理論――システム論とゼマンティク論の関係から」
日時:2012年6月16日(土)17:00開始
会場:法政大学大学院棟 603教室
報告者:源島 穣 (法政大学 修士課程)
報告題名:「国外要因の影響を受けてのイギリス政治の変化――第三の道の導入過程」
日時:2012年5月26日(土)18:30開始
会場:法政大学大学院棟 603教室
報告者:西村 理 (法政大学 博士後期課程)
報告題名:「ローザ・ルクセンブルクの議会主義批判と組織論」
日時:2012年4月21日(土)17:00開始
会場:法政大学大学院棟
報告者:松尾 隆佑 (法政大学 博士後期課程)
報告題名:「政治/理論――政治的なものについて語ること」
報告次第:
はじめに
1. 政治理論への疑い――棟梁失脚後の政治学の中で
2. 政治的なものの所在――政治の社会化と社会の政治化
3. 政治の理論化――ヴィジョンとしての政治理論
おわりに
報告要旨:
政治学はしばしば,独立したディシプリンとして固有のアプローチを持たないと評されてきた.本来であればディシプリンの存在証明を果たす原論的地位を占めるべき「政治理論」は,専門分化が進む政治学の中で,規範的な「政治哲学」と互換可能なサブ・ディシプリンとしての役割に落ち着いている(「現代」政治理論).
政治学が自己完結性を欠くことは,社会の象徴的統合・正統性具備を担う「政治(的なるもの)」が持つ「作為」としての性格に由来するものであり,政治(学)が社会に対する一種「棟梁的な」仕方は,この宿命的な性格と引き換えに認められてきた.だが,川崎修がクリアに示したように,そうした政治(学)像はミクロからマクロまでの政治を貫く単一の原理・構造が存在するとの幻想に基づくものであり,その陰にあって様々な生活の局面で生起する小さな〈政治〉が政治学の外に置き去りにされてきた事実は,先の性格規定を毀損するに十分である.
社会の中に横溢する政治(的なるもの)を社会学その他が扱うに任せてきた現代の政治学は,専門分化の昂進により,社会のサブシステムとしての政治システム(マクロな政治)に特化して自己完結性を強める方向への歩みを速めているように見える.それは大嶽秀夫が危惧したところの「トピック主義」の追認であるが,これに際して政治学に反省を迫るべき政治理論は存在が疑われている.
すなわち,「政治的なるもの」について語る一般理論など,そもそも存在しうるのか.本報告では「ビジョン構想」(松下圭一)としての政治理論観を手掛かりにしながら,棟梁的に社会の全体性を見渡す仕方ではない政治理論の可能性を問う.
〈開催案内〉
【対象文献】
最近数年間に刊行された、日本語の政治思想関連書籍(翻訳を含む)
扱う書籍は、参加予定者から希望を募り、協議の上で決定する
【進行形式】
各回で扱う文献1冊を通読した上で参加し、文献全体を対象範囲として議論する
レジュメ担当者は特に設けず、最初から参加者全員による議論を行う
各参加者が自発的にレジュメやメモ、関連資料等を作成・配布することは妨げない
【開催日程】
隔週の水曜19:00~20:30
2018年5月~7月(前期)および10~12月(後期)に、それぞれ5~6回の実施を予定
具体的な日程は参加予定者と相談の上、決定する
単発ないし部分的な参加も可能。ただし、日程は継続的参加者の都合を優先して定める
【会場】
法政大学市ヶ谷キャンパス大学院棟(東京都新宿区市谷田町)の教室を使用予定
【対象文献候補】
金慧『カントの政治哲学――自律・言論・移行』(勁草書房、2017年)
永見瑞木『コンドルセと〈光〉の世紀――科学から政治へ』(白水社、2018年)
河野有理『偽史の政治学――新日本政治思想史』(白水社、2016年)
大竹弘二『公開性の根源――秘密政治の系譜学』(太田出版、2018年)
小山裕『市民的自由主義の復権――シュミットからルーマンへ』(勁草書房、2015年)
趙星銀『「大衆」と「市民」の戦後思想――藤田省三と松下圭一』(岩波書店、2017年)
田中将人『ロールズの政治哲学――差異の神義論=正義論』(風行社、2017年)
井上彰『正義・平等・責任――平等主義的正義論の新たなる展開』(岩波書店、2017年)
福原明雄『リバタリアニズムを問い直す――右派/左派対立の先へ』(ナカニシヤ出版、2017年)
若松良樹『自由放任主義の乗り越え方――自由と合理性を問い直す』(勁草書房、2016年)
上原賢司『グローバルな正義――国境を越えた分配的正義』(風行社、2017年)
伊藤恭彦『タックス・ジャスティス――税の政治哲学』(風行社、2017年)
衛藤幹子『政治学の批判的構想――ジェンダーからの接近』(法政大学出版局、2017年)
有賀誠『臨界点の政治学』(晃洋書房、2018年)
マーク・リラ『難破する精神――世界はなぜ反動化するのか』(会田弘継監訳、NTT出版、2017年)
イリヤ・ソミン『民主主義と政治的無知――小さな政府の方が賢い理由』(森村進訳、信山社、2016年)
ウェンディ・ブラウン『いかにして民主主義は失われていくのか――新自由主義の見えざる攻撃』(中井亜佐子訳、みすず書房、2017年)
ピエール・ロザンヴァロン『カウンター・デモクラシー――不信の時代の政治』(嶋崎正樹訳、岩波書店、2017年)
ハンナ・ピトキン『代表の概念』(早川誠訳、名古屋大学出版会、2017年)
ジョセフ・カレンズ『不法移民はいつ〈不法〉でなくなるのか――滞在時間から滞在権へ』(横濱竜也訳、白水社、2017年)
ジョナサン・ウルフ『「正しい政策」がないならどうすべきか――政策のための哲学』(大澤津/原田健二朗訳)、勁草書房、2016年)
以上は、あくまで参加予定者の希望を募る際の参考としてリストアップしたものであり、ここに挙げた以外の文献も、希望があれば取り扱うことがある。なお、過年度に扱った文献は挙げていない。
〈開催記録〉
11/28 佐藤卓己『ファシスト的公共性―総力戦体制のメディア学』(岩波書店、2018年)
11/14 福原明雄『リバタリアニズムを問い直す――右派/左派対立の先へ』(ナカニシヤ出版、2017年)
10/31 井上彰『正義・平等・責任――平等主義的正義論の新たなる展開』(岩波書店、2017年)
10/17 ピエール・ロザンヴァロン『カウンター・デモクラシー――不信の時代の政治』(嶋崎正樹訳、岩波書店、2017年)
10/3 ジョナサン・ウルフ『「正しい政策」がないならどうすべきか――政策のための哲学』(大澤津/原田健二朗訳、勁草書房、2016年)
7/18 小山裕『市民的自由主義の復権――シュミットからルーマンへ』(勁草書房、2015年)
7/4 若松良樹『自由放任主義の乗り越え方――自由と合理性を問い直す』(勁草書房、2016年)
6/20 大竹弘二『公開性の根源――秘密政治の系譜学』(太田出版、2018年)
6/6 ウェンディ・ブラウン『いかにして民主主義は失われていくのか――新自由主義の見えざる攻撃』(中井亜佐子訳、みすず書房、2017年)
5/23 趙星銀『「大衆」と「市民」の戦後思想――藤田省三と松下圭一』(岩波書店、2017年)
5/9 ジュディス・バトラー『アセンブリ――行為遂行性・複数性・政治』(佐藤嘉幸/清水知子訳、青土社、2018年)
12/13 ヤン=ヴェルナー・ミュラー『憲法パトリオティズム』(斎藤一久ほか監訳、法政大学出版局、2017年)
11/14 サミュエル・ボウルズ『モラル・エコノミー――インセンティブか善き市民か』(植村博恭ほか訳、NTT出版、2017年)
10/27 木下『ポピュリズムと「民意」の政治学』第2部
10/20 木下ちがや『ポピュリズムと「民意」の政治学――3・11以後の民主主義』(大月書店、2017年)第1部
10/13 田村『熟議民主主義の困難』後半
10/6 田村哲樹『熟議民主主義の困難――その乗り越え方の政治理論的考察』(ナカニシヤ出版、2017年)前半
7/4 稲葉『政治の理論』後半
6/27 稲葉振一郎『政治の理論』(中央公論新社、2017年)前半
6/20 セイラー/サンスティーン『実践行動経済学』後半
6/6 リチャード・セイラー/キャス・サンスティーン『実践行動経済学』(遠藤真美訳、日経BP社、2009年)前半
5/30 ハイト『社会はなぜ左と右にわかれるのか』第3部
5/16 ハイト『社会はなぜ左と右にわかれるのか』第2部
5/9 ジョナサン・ハイト『社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学』(高橋洋訳、紀伊國屋書店、2014年)第1部
12/18 鵜飼『人民主権について』4章~終章
12/11 鵜飼健史『人民主権について』(法政大学出版局、2013年)序章~3章
12/4 白川俊介『ナショナリズムの力――多文化共生世界の構想』(勁草書房、2012年)
11/13 鶴見『ロシア・シオニズムの想像力』3章~終章
11/6 鶴見太郎『ロシア・シオニズムの想像力――ユダヤ人・帝国・パレスチナ』(東京大学出版会、2012年)序章~2章
10/30 篠田『「国家主権」という思想』4章~終章
10/23 篠田英朗『「国家主権」という思想――国際立憲主義への軌跡』(勁草書房、2012年)序章~3章
10/9 山崎『来たるべきデモクラシー』5章~終章
10/2 山崎望『来たるべきデモクラシー――暴力と排除に抗して』(有信堂高文社、2012年)序~4章
7/17 フランツ・カフカ「掟の前で」丘沢静也編訳『変身/掟の前で 他2篇』(光文社、2007年)、ヴァルター・ベンヤミン「フランツ・カフカ」野村修編訳『ボードレール 他五篇――ベンヤミンの仕事2』(岩波書店、1994年)、ハンナ・アーレント「フランツ・カフカ 再評価――没後二十周年に」ジョローム・コーン編『アーレント政治思想集成1 組織的な罪と普遍的な責任』(齋藤純一ほか訳、みすず書房、2002年)、森川輝一「途方に暮れる――アーレントのカフカをめぐって」 『理想』690号(2013年)
7/10 大竹『正戦と内戦』6章、結語
6/26 大竹『正戦と内戦』5章
6/19 大竹『正戦と内戦』4章
6/12 大竹『正戦と内戦』3章
5/29 大竹『正戦と内戦』1~2章(確認)
5/22 大竹『正戦と内戦』2章
5/15 大竹『正戦と内戦』1章
4/24 大竹弘二『正戦と内戦――カール・シュミットの国際秩序思想』(以文社、2009年)序論
4/17 大竹弘二「公開性の根源」1-2、『atプラス』11~12号(2012年)
11/7 鈴木一人「構成主義的政策決定過程分析としての「政策論理」――日本の宇宙政策を例として」小野編『構成主義的政治理論と比較政治』7章
10/31 森正「選挙制度改革の政治過程――構成主義的政治理論による再解釈」小野編『構成主義的政治理論と比較政治』6章
10/24 近藤康史「構成主義的政治理論の三層モデル――イギリス労働党のEU政策を事例とした試論」小野編『構成主義的政治理論と比較政治』5章
10/17 加藤雅俊「制度変化におけるアイデアの二つの役割――再編期の福祉国家分析を手がかりに」小野編『構成主義的政治理論と比較政治』4章
10/10 田村哲樹「熟議による構成,熟議の構成――ミニ・パブリックス論を中心に」小野編『構成主義的政治理論と比較政治』3章
10/3 ヴィヴィアン・シュミット「アイデアおよび言説を真摯に受け止める――第四の「新制度論」としての言説的制度論」小野編『構成主義的政治理論と比較政治』2章
9/26 マーク・ブライス「構成主義理論と政治経済学について――レバレッジド・バイアウトの理由とアプローチ」小野編『構成主義的政治理論と比較政治』1章
9/19 小野耕二「「構成主義的政治理論」の意義――決定論からの離脱」小野耕二編『構成主義的政治理論と比較政治』(ミネルヴァ書房、2009年)序章
7/27 ベネディクト・アンダーソン『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る』(梅森直之編訳、光文社、2007年)
7/14 ハーシュマン『国力と外国貿易の構造』5~7章
7/7 ハーシュマン『国力と外国貿易の構造』3~4章
6/2 ハーシュマン『国力と外国貿易の構造』2章
5/19 アルバート・ハーシュマン『国力と外国貿易の構造』(飯田敬輔監訳、勁草書房、2011年)1章
4/28 野口旭『グローバル経済を学ぶ』(筑摩書房、2007年)
12/3 上神貴佳/堤英敬編『民主党の組織と政策』(東洋経済新報社、2011年)
10/29 斉藤淳『自民党長期政権の政治経済学――利益誘導政治の自己矛盾』(勁草書房、2010年)、菅原琢『世論の曲解――なぜ自民党は大敗したのか』(光文社、2009年)