偽りの世界と天龍狼

The False World and 

The Heavenly Dragon Wolf

※天龍狼:てんりゅうろう

静寂に包まれた、灰色の世界。

それは朽ちた世界だが、しかし幻想的な美で構築されている。

1羽の〈鳥〉が飛び立つと、パラパラ……と小さな石の粒たちが音を立てて地へと落ちていった。天から差し込む光が、反射する細かな塵を輝かせて、灰色の世界に佇む、大きく反り返る2本の角を持った1頭の白狼を、静かに照らしていた――。


3年という期限付きで世界を放浪していたヴァルザックは、古の国・詠竜国にある〈竜水晶〉に住まう〈竜族〉の元へと、その期限日から1週間後に、衰弱しきった『黒いハーフウルフ』の劉牙(りゅうが)を連れて帰館した。

そんな中、国のあちこちでは原因不明の〈異常状態〉が発生しており、不思議な力を持つとされる〈竜族〉の元にその報告と助けを求める者がひっきりなしに訪れていた。各地を放浪しているヴァルザックはその〈異常状態〉が何を意味しているのかを、理解していた。

突然見知らぬ土地に来てしまった劉牙は、右も左もわからないまま〈竜族〉へと招き入れられ、ヴァルザックと共に行動することを余儀なくされる。言動が読めない謎多きヴァルザックと、様々な場所から突然現れる無口で毒舌家のヴィラディアと共に生活するうちに、自らの〈使命〉を理解しるようになり――。

相棒の元へと帰る方法を探そうとする劉牙と、〈龍の死〉を探すヴァルザックの旅(ものがたり)が始まる。

※仮粗筋。