世界観

ギルヴァスィリアル

それは獣たちの楽園であり、狼たちの楽園であり、ニンゲン界とは少し離れた世界である。

〈神〉として産まれ、〈龍〉として生き、〈狼〉として全てを見守る者たちによって秩序が保たれているこの世界で〈獣〉たちはその生命(いのち)という芸術の華を咲かせ、朽ち果て行く――。

生命という芸術の華の輪を繰り返す、様々な狼・獣が住まう自然豊かな楽園。

かつて、獣たちはニンゲンと共に生活をしていた。

神と呼ばれる者と、その使者により安寧を齎(もたら)されたその世界で。

獣たちとニンゲンたちは、神とその使者によって安寧が齎されていることを知っていた。

その感謝を表すために、獣たちとニンゲンたちは祈りを捧げる塔を長い年月をかけて建て、神々に感謝の意を表し、神々はそれらに応えるようになっていった。

大地を豊かにし、海を美しく輝かせ、火を与え、水を齎し、風を吹かせ、華々を芽吹かせ――。

神々の力の源となるのは、神々への祈りと感謝、そして、穢れのない自然。

神々は受けたその源を、獣たちやニンゲンたちが見える〈神からの恩恵〉というカタチに変えていた。

より豊かな世界へと移り変わり、やがて長い年月が経つにつれて、獣たちとニンゲンたちの間には、いつしか、歪が生まれてゆくようになった。

獣たちは神々に感謝をし続け、自然を畏れ尊い、共に生き、ニンゲンたちは次第に神を忘れ、自然を穢し、獣たちを支配し、ニンゲンが住みやすい世界を造り上げていった。

ただ唯一、ある一族のニンゲンは、純白の毛を持つ『森ノ守護神』と共に過ごす生活を続けていた。

穢されつつある自然を、神聖なるものに戻すために……。

すれ違う獣たちとニンゲンたちに、神々は次第に安寧を与えはしなくなっていった。それどころか、神々の力は衰え始めていた。

神々の力が弱まっていった時、ニンゲンたちはついに神々をも支配しようと欲を出した。

――それが、災いの始まりであり、全ての終焉であり、そして、全ての始まり。

自然を穢し、獣たちを支配し、神々にも手を出した愚かなるニンゲンたちに、神々は怒り狂った。

そんな神々の姿を「見た」ニンゲンは嘲笑(わら)った。ニンゲンにしてみれば、神々の姿はもう、ただの「ケモノ」だったから。それ故に、ニンゲンたちの欲は悪化してしまった。

与えたものを奪うかのように、容赦なく狂う神々と、穢れた欲に塗れたニンゲン。

世界の全てを巻き込んだその争いは、ニンゲンたちが優勢だった。

ニンゲンたちは、神々の力の源となっていた自然を穢し尽し、獣たちも奪っていったのだから。

残った力の少ない神々は、ニンゲンたちの魔の手から逃れた、その生命(いのち)を手放そうとしていた、たった1頭の白狼――かの『森ノ守護神』――にその全ての力を授け――神の魂をも、文字通りの「全て」を与え、もう1つの世界を創り、姿を、消した。

全ての力を授かった白狼は、ほぼ全てのニンゲンをその手で殺め、白狼を護り、生き残ったかの一族の〈人〉を、創られた世界へと送り、元の世界を獣たちの楽園として、創り変えた。

その白狼は今もどこかで生き、その白狼と共に生活をし護った〈人〉は、その子孫たちは、今もどこかで白狼を――狼という獣を探し続けている……。