て ん き り ん
て ん き り ん
今生でもつとも感謝すべきひとが父母と知るまでの八十余年
楠田立身
敗戦翌年の八歳のときに鴨緑江を発って脱北、帰国した楠田の故郷は「うぶすなの益城町字上陣を震撼せしめこの春は逝く」と詠う熊本地震で崩れた熊本市の益城。また斎藤史に学び、「在りし日に斎藤史と来し蕎麦屋石挽きの二八にて六腑を濯ぐ」と慕い続ける。そして齢九十近くなり改めて思うのは父母の恩。ごく自然な感慨だが、こうした振り返りにしか見えない大事がやはりある。父母の、故郷の、歌の縁の大切さを教える『益城』から。 (三枝昻之) 「りとむ」2025年11月号より