つぶりのつぶやき
つぶりのつぶやき
※りとむ発行人+編集人+編集委員+HP管理人が、かわるがわる様々に呟きます。
五十音順にふたりずつ呟きます。( き こ さ た て ひ ま や わ )
NHK学園のXに「きょうの言の葉」という一首評コーナーがあり、この度、『現代万葉集』(日本歌人クラブによるアンソロジー)とコラボすることとなった。
私の担当は「教育・スポーツ」で、そこから一首を選び批評を行った。
選ぶ際に最後まで迷ったもう一首をここで紹介したい。
本屋での今日の驚き学校に校歌があるのは日本だけとか 松田愼也
作者の驚きが軽い筆致で素直に表出されているが、その内容にぼくも驚いた。校歌が日本独自のものだったとは。これはもう文化といっていい。
留学経験のある方にも話を聞いてみたい。(わ)
「突きぬけよ」さうねヒルティさうおもふ 夏にやられた人がほほゑむ 黒沢忍『幼年区』
黒沢さんの旧仮名を快く読む。ヒルティの理想主義をやんわりとかわしているようだ。旧仮名で好きなのは「ゑ」だ。「ほほゑむ」とあれば「ゑ」が控え目に笑うようだし、「こゑ」なら「声」にも「こえ」にもない振動が伝わる。わたし自身は新仮名遣いで、この先も旧仮名を遣うことはない。
小学生の頃こっそり仏壇を探っていて、引き出しに父の書いた葉書を見つけた。病弱養護学校にいたわたしの姉に宛てたもので、昭和38年頃書かれたと思う。それがみんな旧仮名だった。「元気でくらしてゐるでせうか」。現実の父からは想像もできない古いことばが仏壇の引き出しにあって、怖いものに見えた。隠れて悪いことをしていたからなおさらだ。
旧仮名はひとの作品から味わって愉しむ。自分が旧仮名を遣って恐ろしいものが出てきたら大変、と思っている。(き)
2025.11